集団的自衛権-自衛隊はどこへ送り込まれるのか



官邸前で怒りの大コール続く~「集団的自衛権」行使容認を閣議決定!
閣議決定0701-06
http://www.labornetjp.org/news/2014/0701shasin
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 安倍内閣は集団的自衛権の閣議決定を強行しました。国政選挙でいちども民意を問うたことがない問題を、少人数の閣議で決めてしまったのですから、これほど恐ろしいことはありません。
 ドイツのファシズムはヒトラー総統に全権委任したところから始まりましたが、日本の場合は閣議に一任しました。これもまた日本型ファシズムの始まりとなるのではないかと強い恐怖を感じます。
 その意味で閣議決定が強行された当日は、官邸前その他で大きな抗議行動が起きたのは当然でした。これに抗議して焼身自殺を試みた男性の事件を含め、外国のメディアも、これを大きく報じました。
http://tkajimura.blogspot.jp/2014/06/nhknhkahk.html
http://rt.com/news/169216-japan-self-immolate-protest/(June 29, 2014; 動画あり1分半)

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 しかし考えてみたら閣議決定で簡単に解釈改憲できるのであれば、次の選挙で自民党を追い落として「解釈改憲」で、元の平和憲法に戻せばよいことになります。自民党のなかでも安倍内閣のやりかたに反対しているひとの意見を読んでいたら同じことを言っていました。
 いわく「内閣が替わるたびに憲法がころころ変わるようでは、それは憲法ではない」「集団的自衛権を確固たるものにするためには、きちんとした憲法改正手続きを経たうえでなければならない」
 つまり安倍内閣のファシズム的手法に反対している自民党の古参も、集団的自衛権に反対しているのではなく、自衛隊を海外派兵できる本物の軍隊にするためには「解釈改憲」では駄目だと言っているのです。
 だとすれば、これを逆手にとって、先にも述べたように次の選挙で自民党を追い落として、「解釈改憲」で元の平和憲法に戻せばよいことになります。問題は次の選挙までに安倍氏が次々を新しい法律をつくって私たちの自由を縛ってしまうのではないか、ということです。ヒトラーも同じことをしましたから。

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 ところで、OurPlanet-TVによる抗議行動の録画をみていたら、長野の駒ケ根から早朝のバスで駆けつけたという70代の男性は、「この問題を小学校6年と中学生の孫と話していたら、話している場合じゃない行動するときだと言われて,朝5時半のバスに乗ってここに来た」と話していました。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1801
 また、福島県三春町から駆けつけた武藤類子さんは、「閣議決定だけで決めて命を危険にさらすのは許さない。原発事故の収束を考えなくてはいけないときに、海外に兵隊を出そうとするのは許せない」と訴えていました。これを聞いて、いつもの武藤さんにしては珍しく、鋭さの欠けた発言だと少し残念でした。
 というのは、集団的自衛権というのは、自民党の議員が言うように「友だちの命が危ないときに手をこまねいていて良いのか」ということで相互に助け合うことを前提にしたものだからです。だとすれば武藤さんは次のように主張すべきだったのではないでしょうか。

 「自国民の命すら(たとえば福島の子どもたちすら)助けられないのに、遠方まで出かけていって、どうして他国民を助けることができるのか!?」

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 しかし、ここでもう一つの疑問が浮かんできます。というのは、自民党の議員は「友だちの命が危ないときに手をこまねいていて良いのか」と言っているのですが、ここで「友だち」と言っているのはアメリカのことだからです。
 先日、病院の待合室で新聞を読んでいたら「中国近海でアメリカの戦艦が日本を守るために中国からの攻撃を受けているのに、それを手をこまねいて黙視してよいのか」と発言しているようでした。
 これを読んでいて思わず吹き出してしまいました。アメリカの軍事予算は世界中の国の軍事予算を全て足し合わせてもおつりが来るくらいの膨大な額ですし、その装備もロシアや中国と戦っても負けないくらいの極めて高性能の兵器を装備しています。
 ですから、そのアメリカが通常兵器で中国や北朝鮮と戦って負けるはずがないのです。ウクライナの政権転覆を裏で工作したアメリカの国務次官補ヌーランド女史も「ロシアがのりだしてきても通常兵器でNATO軍に勝てるはずがないのだから、恐れることはない。どんどんやってしまえ」と言ったのも、このような背景があります。
 つまり、これを逆に言うと、(相手が核兵器を使うなら別ですが)超軍事大国アメリカが負けるような戦いに、自衛隊が参戦して勝てるはずがないのです。そもそも子犬のような日本が、獰猛な狼=アメリカを守ってやろうと発想が、奇想天外なのです。北朝鮮が必死になって核兵器を保有しようとするゆえんです。

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 もう一つの独立メディア「レイバーネット日本」を見ていたら、集団的自衛権の閣議決定に反対している元自衛官の発言が目にとまりました。その自衛官は次のように主張していました。
 「私は元自衛官で、防空ミサイル部隊に所属していました。日本に攻めて来る戦闘機を叩き落とすのが任務でした。いま、尖閣の問題とか、北朝鮮のミサイル問題とか、不安じゃないですか。でも、そういったものには、自衛隊がしっかりと対処します。自衛官は命をかけて国民をしっかり守ります。そこは、安心してください。いま私が反対している集団的自衛権とは、そういうものではありません。日本を守る話ではないんです。売られた喧嘩に正当防衛で対抗するというものではないんです。売られてもいない他人の喧嘩に、こっちから飛び込んでいこうというんです。それが集団的自衛権なんです。」
http://www.labornetjp.org/news/2014/0702doro

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 アメリカは非常に腐敗した国ですが、それでも投獄を覚悟しながら元CIA高官や元NSA高官が次々と内部告発者として登場していますから、まだ救いがあります。帰還兵の反戦組織もあります。しかし日本にこれに相当する人物・組織が存在するかと考えてみたら、ほとんど思い当たりません。
 元外交官だった天木直人氏や孫崎享氏は、そのようななかでも数少ない人物だと思いますが、元NSA職員だったウイリアム・ビネイ氏(William Binney)やエドワード・スノーデン氏(Edward Snowden)のような投獄されるほどの危険をおかしているわけではありません。
 ですから、その意味で泥憲和という元自衛官には深い敬意を払いたいと思います。日本にはアメリカと違って帰還兵の公然たる反戦組織もありませんし、少数の例外を除いて、個人的に内部告発した自衛官の存在も、ほとんど知られていないからです。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-03-26/2014032615_01_1.html
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-11-26/2013112615_01_1.html

 その泥氏が次のように主張していることに大きな興味と共感をおぼえました。
 「いま私が反対している集団的自衛権とは、そういうものではありません。日本を守る話ではないんです。売られた喧嘩に正当防衛で対抗するというものではないんです。売られてもいない他人の喧嘩に、こっちから飛び込んでいこうというんです。それが集団的自衛権なんです。」
 つまり集団的自衛権とは、「友だちを守る」話でもないし、「日本を守る話」でもない。それは、「売られてもいない他人の喧嘩に、こっちから飛び込んでいこうというもの」だと泥氏は主張しているのです。これほど明確に分かりやすく本質を突いた発言は今までに聞いたことがありませんでした。

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 考えてみれは、第1次世界大戦も第2次世界大戦も、最初は単独の国同士の争いだったものが、集団的自衛権の名の下に「世界大戦」へと拡大していったものでした。日本が第2次世界大戦=アジア太平洋戦争に参加していったのも、日独伊軍事同盟という同盟があり、その同盟による縛りのなかで集団的自衛権を行使した結果だったと言えるでしょう。
 私が前回のブログの題名を、「ここはいつか来た道――集団的自衛権は戦争とファシズムへの一里塚!」としたのは、このような意味を込めていたつもりです。
 しかし上記の泥氏の発言で気になることがないわけでもありません。というのは氏は次のようにも述べているからです。
 「いま、尖閣の問題とか、北朝鮮のミサイル問題とか、不安じゃないですか。でも、そういったものには、自衛隊がしっかりと対処します。自衛官は命をかけて国民をしっかり守ります。そこは、安心してください。」
 この論調では「中国や北朝鮮が日本を攻撃してくる」ことが前提になっています。しかし、こちらから挑発しないかぎり「中国や北朝鮮が日本を攻撃してくる」ことは、ほんとんど考えられません。そんなことをすれば自殺行為になることは北朝鮮でさえ十分に承知しています。
 それどころか「社会主義を掲げていてもベトナムや中国が資本主義国になっているのと同じように、自分も、一刻も早くあのような国になりたい」と思っているのが北朝鮮です。そしてそれを妨げているのがアメリカです。北東アジアに不安定要素を残しておき、アジアが団結してEUのような共同体をつくらせないためです。

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 これは孫崎享『日米同盟の正体――迷走する安全保障』(講談社現代新書、2009年)の中でも述べられていることですが、チョムスキーも下記の論考で同じことを述べていて「やはりそうだったのか!」という思いを強くしました。北朝鮮を口実に中国包囲網を強めているのはむしろアメリカなのです。

チョムスキーの北朝鮮論060124「核武装に追い込んでいるのは誰か」
チョムスキーの中国論100822 「中国は脅威か」

 ですから、北朝鮮や中国を口実とした集団的自衛権の賛成論は、ほとんど意味をなしません。泥氏の発言には、そのような誤解を与えかねないところがあったのは非常に残念なことでした。むしろ今もっとも憂慮すべきことは、オバマ氏が戦争を際限なく世界各地に拡大して行っていることです。
 「ブッシュの戦争」はアフガンとイラクにとどまっていましたが、オバマ氏は無人爆撃機Droneを使いながら、イエメン、リビア、シリアと、戦争と暗殺を拡大する一方です。またブッシュ氏にはそのゆとりがなかったのかも知れませんが、オバマ氏はホンジュラスやベネズエラなどのクーデターにまで手を伸ばし始めました。

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 そして今度はウクライナです。いま内戦状態になっているウクライナは今ではアメリカが仕掛けたものだったことは半ば常識になっています。このことは本ブログでも何度も指摘してきたことですが、大統領候補に立候補したことのある共和党の最右派ロン・ポール氏までもが次のように指摘していることに驚きました。
 「アメリカのいつもの介入主義者は、ウクライナの内政にずっと干渉してきた。2004年のオレンジ革命を財政支援してきたのはアメリカ政府のお金だ。片方の政治勢力に味方して米国資金の入った複数のNGOが政権転覆を可能にした。これらの同じ人々がウクライナをあきらめなかった。彼らはアメリカの介入を批判する人々をあざ笑うかのように、背後でウクライナのための彼ら自身の計画を押し進めてきた。」
Leave Ukraine Alone!(ウクライナに手を出すな、彼らに任せよ)

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 またポール氏は、アメリカの政策は「俺の言うことに従え、さもなくば爆撃するぞ」というものだ、と喝破していることです。アメリカの自称「リベラル左翼」でさえ口にしないことを、ポール氏が言っているのですから、日本の「リベラル左翼」も見習うべきではないでしょうか。
Ron Paul on Obama's foreign policy: "Disobey us and we will bomb you"(02.06.2014)

 ポール氏はさらに「アメリカは、シリア、リビア、イラクに『イスラム聖戦士のワンダーランドをつくりだした」とも述べています。嘘をついて始めたイラク戦争が「パンドラの箱」を開け、流血と難民と国土破壊を中東全域に撒き散らすことになったことを、みごとに言い当てています。
Rand Paul: US created "jihadist wonderland" in Syria, Libya and Iraq (23.06.2014)

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 もっと不吉なのは、オバマ氏が今まで敵対していたイランと手を結び、兵力を中東から引き上げて、その余った兵力をロシアと中国を包囲する作戦に転じようとしていることです。このことをいち早く警告したのが中東問題の報道で世界的に名を知られている戦争報道記者ジョン・ピルジャー氏です。
 氏は、ウクライナの現政権はアメリカの後ろ盾を得ていることに自信をもち、東ウクライナを焦土にするまで徹底的に破壊するだろうと言っています。そして、それに我慢しきれなくなってロシアが軍隊を出すことになるだろうと期待しているというのです。そうすれば、「侵略」を口実にロシアを爆撃することができるからです。
 ジャーナリストを何人も殺し、一般の民家どころか爆撃で村ごと焼き払われたところさえありました。難民としてロシアに逃れようとしてる家族連れのバスでさえ砲撃を受けています。ところがいま欧米のメディアは、東ウクライナで進行しているこのような深刻な人権侵害・戦争犯罪に全く眼をつむっている、とピルジャー氏は嘆いています。
 それどころか、事態の対処を誤れば、第3次世界大戦になるかもしれないし、核戦争になるかも知れない、と氏は警告しています。

On big politics, Western media spews propaganda - war correspondent John Pilger(13.06.2014)

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 オバマ氏は「賢い」ひとですから、ロシア軍との地上戦はNATO軍に任せます。自分は空から爆撃するのみです。地上で米兵に死傷者が出れば一気に反戦運動が高まるからです。そしてベトナム戦争の時、韓国軍がベトナムに送られたように、今度は自衛隊がロシア戦線に送られるかも知れません。
 というのは集団的自衛権が閣議決定されたことでもあり、自衛隊はすでにイラクやソマリアに出兵した経験がありますから、アメリカからそのような要請があったとき断り切れないでしょう。というよりも安倍内閣のことですから、泥氏が言うように「売られてもいない他人の喧嘩に、こっちから飛び込んでいこう」とするかも知れません。
 アメリカという「たそがれの帝国」が威信を保とうとすれば、勃興しつつある大国を何らかの口実をつくってたたく以外にありません。しかし、いまアメリカの財政は「火の車」ですから、なるべく自分では手を汚さずに他人にやらせようとします。それが日本の機密保護法と集団的自衛権をオバマ氏が高く評価するゆえんです。
 孫崎享氏は『日米同盟の正体』のなかで、アメリカが第2次世界大戦の戦後処理のなかで、尖閣列島や北方領土という「紛争要因」「紛争の火種」を、わざと解決せずに残したのは、このような深い配慮があったからだと述べています。

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 言われてみれば、イギリスがインドから撤退するときも、わざとインドとパキスタン(そして中国)の間に「いがみあいの火種」を残しながら去って行きました。私たちは、自衛隊員の命を粗末しないために、そして日本の真の国益を守るために、このような「深い配慮」を見抜くことのできる鋭い知性を磨かねばならないでしょう。
 しかし小学校から大学まで、とどまることなくおしよせてきている「英語一極化」の外国語教育政策を押しとどめないかぎり、そのようなことは期待すべくもありません。子どもから大人まで一億人すべてが英会話にうつつを抜かしてるかぎり「一億総白痴化」は進行しても、鋭い知性は生まれないでしょう。しかし逆に、だからこそ安倍内閣の英語教育政策が存在するのだとも考えられます。

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<註> 英語教育については下記の拙論を御覧いただければ幸いです。
朝日新聞インタビュー「争論」、大学生は英語で学べ?「深い思考奪い、想像の芽摘む」
毎日新聞インタビュー 「論点」、英語の授業どうあるべきか?「母語を耕し、自分を耕し、自国を耕す外国語教育を」
京都大学新聞インタビュー 、グローバル時代の英語を考える、 「外国人教員」「英語で授業」は何をもたらすか」 前編
京都大学新聞インタビュー 、グローバル時代の英語を考える、 「外国人教員」「英語で授業」は何をもたらすか」 後編





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