ミシェル・チョスドフスキー「誰がマレーシア航空機MH17便を撃墜したのか」

翻訳 (2014/09/04)
ウクライナ MH17 400x224

 私の主宰する研究所の研究員からMichel Chossudovsky "Malaysian Airlines MH17 Was Ordered to Fly over the East Ukraine Warzone" の翻訳が届きました。
 この論文については、すでに『アジア記者クラブ通信』2014年8月号に「親ロシア派勢力による犯行との『定説』を覆す証拠あり、危険空域へと導かれたMH17便」と題して、翻訳が載せられています。
 しかし、この翻訳では英語原文で載せられているカラーの図が白黒になっていて、しかも小さく縮小されているので、非常に見づらいものになっています。そこで、研究員から送られてきた訳稿に手を入れ、このブログで改めて紹介することにしました。

 今までアメリカのメディアは一貫してマレーシア航空機MH17便の撃墜はロシアや反キエフ勢力によるものだと主張してきました。
 しかしアメリカやNATOがロシアを戦争に引きずり出そうとしている時、わざわざその口実を提供する愚をおかすものは誰もいないでしょう。
 ところが最近、大手メディアはMH17機の撃墜がロシアや反キエフ勢力によるものだという攻撃をぴたりと停止しました。これは言わず語りに自分たちの非を認めたということでしょう。
 このように、アメリカやNATOに自分たちの非を認めさせるひとつの力になったのが、ここで紹介するチョスドフスキー論文ではなかったかと思います。その意味でも、これは「ウクライナ危機を理解するための必読文献」のひとつでしょう。このブログで改めて紹介したいと思った理由です。
 

<註1> 先に紹介した『アジア記者クラブ通信』2014年8月号には「MH17便はウクライナ空軍機により撃墜された」と題する衝撃的な分析も紹介されています。筆者はドイツのルフトハンザ航空傘下にあったコンコルド航空のベテラン操縦士です。この論考もアメリカとNATOにとって大きな打撃になった論文に違いないでしょう。ぜひ御一読ください。

「MH17便はウクライナ空軍機により撃墜された」
Shocking Analysis of the‘Shooting Down’of Malaysian MH17
By Peter Haisenko、Juli 30, 2014


<註2> いずれにしても、こうしてマレーシア航空機の撃墜事件を口実にロシアを攻撃しようとした試みが失敗したので、今度はロシア軍がウクライナ領に侵略したという嘘を大々的にバラ捲きつつあります。しかし、ロシアの正規軍が戦車その他を引き連れてウクライナ領に侵入した証拠は何一つありません。
 このままではロシア軍の侵入を口実にNATO軍とロシア軍との戦闘になり、東ヨーロッパ全域が戦場になり、それが第3次世界大戦に拡大していく恐れがあります。このような状況を見るに見かねて、アメリカ政府情報機関の元高官たちがつくる組織VIPS(Veteran Intelligence Professionals for Sanity)が下記のようなメルケル首相あての公開書簡を発表しました。そして「アメリカ政府はイラク戦争のときと同じように、嘘で戦争を始めようとしている」と警告しています。

Russia’s “Invasion” of Ukraine. Memorandum to Germany’s Chancellor Angela Merkel, by Veterans of U.S. Intelligence

 オバマ氏の言う「ロシア軍の侵攻」という大宣伝も、これが嘘であったことはそのうち明らかになるでしょう。アメリカ軍は世界中に侵攻して恐怖と殺戮をバラ捲いているのですから、ロシア軍も当然そうしているのだと思ったのかも知れません。この状況を見ているとイソップ寓話「狼と少年」を思い出してしまいます。そのうちアメリカが何を言っても誰も信用しない時代が来るかも知れません。

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マレーシア航空MH17便は
東ウクライナ戦闘地域の上空を飛ぶように指示された
(マレーシア航空が正式発表)

ミシェル・チョスドフスキー
Global Research, July 21, 2014
http://www.globalresearch.ca/malaysian-airlines-mh17-was-ordered-to-fly-over-the-east-ukraine-warzone/5392540

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 MH17便の飛行経路に関してマレーシア航空は、パイロットがウクライナ空域に入るとすぐキエフ航空管制塔から通常より高度を下げて飛行するよう指示されたことを確認し、次のような声明を発表した。(詳細はマレーシア航空のプレスレリースを参照)

「MH17便はウクライナ上空を高度3万5千フィート(約1万700m)で飛ぶ飛行プランを提出した。これはほぼ‘典型’高度である。しかし飛行高度は地上の航空管制官が決定する。ウクライナ領空に入るときMH17便は、ウクライナ航空管制官から3万3千フィートを飛行するよう指示された。」
http://www.malaysiaairlines.com/my/en/site/mh17.html

 3万3千フィートは、飛行禁止高度32000フィートの1000フィート上空(約300m)である。このウクライナ航空管制官の要求は、そのとおり実行された。(下図参照)
ウクライナrestricted air space

“通常”許可されている飛行経路を離脱
 MH17便の飛行経路に関してマレーシア航空は、欧州航空管制局(Eurocontrol)および国際民間航空機関ICAOによって設定されたルールに従っていたとして次のような発表をおこなった。

 「欧州航空管制局」(Eurocontrol)の職員たちのコメントに言及したい。これは国際民間航空機関ICAOの規則にしたがってヨーロッパの飛行経路を承認する機関だ。
 その職員たちは、ウォールストリートジャーナル紙によれば、国際線の150便を含む約400便の民間飛行機が、その墜落以前にも毎日、東ウクライナを通っていたし、事故発生前の2日間で75の航空会社がMH17便と同じ飛行経路を飛んでいた。
 MH17便の飛行経路は、空の高速道路のような、過密な主要航路であった。 MH17便は、ICAOによって設定され、欧州航空管制局によって承認され、他の何百という航空機が使っている経路を進んだのだ。
 MH17便は、決められた高度を飛び、したがって地域[ウクライナ]航空管制局によって安全が保証されていた。またMH17便は飛行制限空域へ入りこむことはなかった。[註:このマレーシア航空の声明は最新の証拠によって誤りだったことが証明されている。]
 MH17便と運行責任者たちは規則を遵守した。しかし地上では戦時法規が破られた。受け入れがたい攻撃によってMH17便は撃墜された。つまり乗客・乗務員はミサイルによって殺されたのだと思われる。
 何度も言うが、事件が起こったウクライナ領空の飛行経路はヨーロッパが通常アジア便として使っているものだ。さまざまな航空会社の航空便もMH17便の事故の時と同じ飛行経路を通っていた。その日も、数週間前も、他の航空会社の数多くの他の便も同様だった。欧州航空管制局は、ウクライナ領空を含めヨーロッパ空域を通過する全便の記録を保有している。

 この声明で確認されているのは、MH17便の「通常飛行経路」が1日あたり東ウクライナを通過する約150の国際便の飛行経路と類似していたということである。
 マレーシア航空によれば「[アゾフ海を横切る]通常航路は、ICAOによって安全であると認定されていた。国際民間航空輸送協会IATAも、飛行機が通過する空域は飛行制限の対象になっていなかったと述べている。」
 その承認された飛行経路は下図のとおりである。7月17日(惨事があった日)以前10日間の、MH17便(および他の国際便)の通常飛行経路は、東ウクライナを南東方向へ通過するときは、アゾフ海を横切るコースである。
MH 17 flight paths_0

7月17日の飛行経路は変更された
 先述のとおり、マレーシア航空のプレスリリースは、次のように述べていた。
  MH17機と運行責任者たちは規則を遵守した。しかし地上では、戦時法規が破られた。受け入れがたい攻撃でMH17便は撃墜された。乗客と乗務員はミサイルで殺されたのだと思われる。
 MH17便の音声記録がキエフ政府によって押収されているので詳細は不明だが、少なくとも飛行経路を変更せよという指令は、欧州航空管制局からは出ていなかった。この飛行経路変更の指令はウクライナ当局が出したものだったのか。パイロットは経路変更を指示されたのだろうか。

英国メディアのでっち上げ ― 「なかった嵐をひねり出せ」
 イギリスのニュースメディアは、飛行経路変更があったことを認め、それは「南ウクライナの雷雨を避ける」ためだったと証拠もなしに主張している。他方、ニュース・マレイシア(2014年7月20日)は次のように報じた。
  マレーシア航空の運行責任者イザム・イスマイルも、天候悪化のせいでMH17便に飛行計画を変更したという主張に異議を唱えている。「パイロットから天候悪化による航路変更を示唆する報告はなかった」とイザムは語った。
 しかし重要なのは次の二つだ。飛行経路の変更が実際におこなわれたことを西欧メディアも認めているということ、そして「天候悪化」の話がでっち上げだったということだ。

ウクライナのジェット戦闘機、民間航空機用の航路にあらわれる
 注目しなければならないことは、空対空R-60ミサイルを装備したウクライナ軍の戦闘機SU-25がマレーシア機の5-10km圏内で探知されたことである。戦闘機が民間航空機用に確保された飛行経路に侵入していたのだ。この戦闘機を配備した目的は何だったのか。ウクライナの戦闘機はマレーシアの民間機を戦闘空域に向け、北の方角に“誘導した”のではないのか。
ウクライナ MH17 400x224
ロシア国防省提供

<註>『アジア記者クラブ通信』2014年8月号はこの映像にたいして次のような解説を付している。

 「ロシア国防省が7月21日、衛星写真や完成レーダー情報を使って、米欧の非難に反撃した際に示したデータ。マレーシア航空機が墜落する直前、ウクライナ空軍のSU-25が同機に接近していたこと、墜落現場であるドネツク市の北方には、ブークを保有する防空部隊が存在していなかったことなど、西側の言いがかりを否定する証拠の数々を示した。」

2014年7月16日のMH17便の航路と
2014年7月17日に戦闘空域に入ったMH17便の
飛行経路を比較する


 マレーシア航空MH17便の7月17日の航路変更は下図で明示されている。MH17便を戦争地域であるドネツクやルガンスク上空に連れ込んでいる。
 次のふたつの地図は2つの航路を比較している。7月17日の航路は、ルガンスク州に接するドネツク州の戦闘空域にMH17便を連れ込んでいる。16日のアゾフ海を通る航路と比べてみれば、これは明らかだ。

MH17ingograph.gif

2014年7月14-17日のMH17便の飛行経路のスクリーンショット
 下の4つの画像は、2014年7月14-17日の間のMH17便の飛行経路画像を示している。これらの地図が伝える情報が示しているのは、7月17日の飛行経路が変更されたということだ。
 MH17便は、アゾフ海上空を飛ぶ通常の南東経路から、ドネツク州上空の経路に迂回させられた。誰が飛行経路変更を命令したのか。

↓7月14日の航路、↓7月15日の航路 
14th-july-route.jpg
↓7月16日の航路
16th-july-route.jpg
↓7月17日の航路
17th-july-route.jpg

 私たちは、マレーシア航空に公式声明をだすことを求め、MH17便のパイロットとキエフ航空管制塔の交信音声ファイルの公表を要求している。これらの音声記録の文字起こしは公表されるべきである。
 さらに確認しなければならないのは、ウクライナのジェット戦闘機SU-25がマレーシア航空M17便と交信していたかどうかである。
 いずれにしても、複数の証拠から確認できることは、7月17日の飛行経路が通常の認められた飛行経路では「なかった」ことである。飛行経路は変更されていた。その変更は欧州航空管制局による指令ではなかった。
 飛行機を戦闘地域に誘導し、298人を死に至らしめたこの経路変更の背後には一体誰がいたのか。飛行経路変更の理由は何だったのか。

 ふたつの悲劇的事件(3月のマレーシア航空機失踪事件につづく今回の事件)の結果としてマレーシア航空がこうむった被害も明らかにされなければならない。マレーシア航空は、これまでかなり高い安全水準を保ち、優れたキャリアを有する航空会社だった。これら2つの事故は、ひとつの犯罪的企ての部分である。少なくとも相次いだ事故は(この事故でマレーシア航空は破産に直面する可能性がある)マレーシア航空側の怠慢によるものではない。

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<註> なお、この翻訳は単独で下記に掲載されています。
http://www42.tok2.com/home/ieas/translation_index.html
http://www42.tok2.com/home/ieas/MalaysianAilineMH17.pdf
 この翻訳の末尾には、先に紹介した『アジア記者クラブ通信』2014年8月号の翻訳「MH17便はウクライナ空軍機により撃墜された」では白黒でしか載せられていなかった写真を、はっきりと分かるカラーで載せてあります。



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