大学教育の「国際化」は、「創造的研究者」「グローバル人材」を育てるか、その1
英語教育、大学の「国際化」「英語化」(2014/12/03)


さる11月24日(月)に京都大学で国際シンポジウム「大学の国際化と何か」が開かれました。そこで基調講演を頼まれたので、以下にその報告をさせていただきたいと思います。というのは、いま日本は、下は小学校から上は大学まで「英語化」「英語漬け」が進行していて、それが公教育に深刻な影響を及ぼしつつあると思うからです。
英語教育を専門とするものが、「我が世の春」を謳歌するのではなく、逆に、このような警告を発しなければならないということは、ある意味では恥ずかしいことです。というのは専門家として、このような事態に至る前に、それを阻止できなかったということですから。とはいえ、これを、このまま放置するわけには行きません。
そこで国際シンポジウムの基調講演の依頼があったとき、体調が悪くて一度はお断りをしたのですが、最終的には引き受けることにしました。それは、主宰者の熱意に押されたということもありますが、同時に、上記のような私の危機感が背景にありました。以下3回に分けて、その内容を紹介させていただきます。
まず第1回目として、シンポジウムの参加者から私のところに基調講演の感想が届いていますので、それを先ず紹介させていただきます。
京都大学 国際シンポジウムに参加して 2014.11.24
S. M.(愛知)
11月24日(月)、京都大学で行われた「大学教育の国際化とは何か」と題する国際シンポジウムに、寺島隆吉先生が基調講演をされると聞いたので、妻と連れだって聞きに行ってきました。
ちょうど紅葉の季節と重なり、京都ではホテルがとれなかったので、大阪で泊まって参加しました。京大の会場には、美紀子先生とそのお母さん、そしてMK先生の姿もみえて一安心しました。
先生の基調講演は20分から30分ほどですが、内容に聞き入ってしまい驚くほど短く感じました。はじめ先生は原稿を読み上げながらスタートされたので、あんなスピードで読み上げたら、聞いている人は付いていけるだろうかと心配しましたが、無用な心配でした。どんどん話に引き込まれ、なるほどと思うことの連続でした。また途中で何度か自然と笑いを誘う場面もあり、会場は大いに盛り上がりました。
前回、寺島先生が京大でスピーチされたときも、YouTubeに講演内容がアップされたので、今回もしアップされたら是非聞いて欲しい内容でした。
衝撃的な内容のそのひとつは、外国人教師100人計画をしているような「京大からは、もうノーベル賞は出ないのではないか」という大胆な提言です。最近ノーベル賞がよく出ている名古屋大学には、坂田昌一教授の自由な討議ができる伝統があった。だからそこで育った益川敏英氏のようなノーベル賞学者が生まれた。天野浩、赤崎勇も名古屋大学です。
次に衝撃的だったのは、「大学ランキング」批判でした。その判断基準の一つである引用数にしても、英語で書かれたものが有利に決まっている。その引用数にしても、書かれた論文がすぐれているかどうかとの相関には疑問があるそうです。知り合い同士が引用し合うやらせもあるそうです。ノーベル賞受賞者が出た名古屋大学は99位、中村修二さんが出た徳島大学はランク外ではないか。まるでエンロンをトリプルAとしていた企業の格付け会社と同じではないか、との批判には考えさせられるものがありました。
また、現在の政権が進めている留学生30万人計画にしても、全てがアメリカ向けです。そのアメリカの教育批判も鋭いものがありました。現在のアメリカの大学の教育がハイスクールレベルでしかないこと、殺人やレイプが大学でも横行していること、学費が高くカナダに学生が逃げている現状などが語られました。どうしてそんなところへ大勢行かせる必要があるのか、なにか別の意図があるのではないかと日米関係における問題を提起されました。
現在、大学が法人化され民営化される中で、副学長が8人もいる大学が現れ、学長の権限が強化されている。一方で上位下達の雰囲気を出しておきながら、他方で生徒に英語でディベートなどと全く訳のわからないことを打ち出してきている。この寺島先生独特の対置のされ方には、痛烈な皮肉も含まれていて会場に笑いがもれました。
私のたよりない感想より、きっと寺島研究室のブログに原稿が載るでしょうし、YouTubeにもしアップされれば、会場の雰囲気もよくわかるので、是非そちらを参考にしてください。それにしても体調のすぐれない中、すばらしい講演を聴かせてくださって本当にありがとうございました。とても勉強になりました。


さる11月24日(月)に京都大学で国際シンポジウム「大学の国際化と何か」が開かれました。そこで基調講演を頼まれたので、以下にその報告をさせていただきたいと思います。というのは、いま日本は、下は小学校から上は大学まで「英語化」「英語漬け」が進行していて、それが公教育に深刻な影響を及ぼしつつあると思うからです。
英語教育を専門とするものが、「我が世の春」を謳歌するのではなく、逆に、このような警告を発しなければならないということは、ある意味では恥ずかしいことです。というのは専門家として、このような事態に至る前に、それを阻止できなかったということですから。とはいえ、これを、このまま放置するわけには行きません。
そこで国際シンポジウムの基調講演の依頼があったとき、体調が悪くて一度はお断りをしたのですが、最終的には引き受けることにしました。それは、主宰者の熱意に押されたということもありますが、同時に、上記のような私の危機感が背景にありました。以下3回に分けて、その内容を紹介させていただきます。
まず第1回目として、シンポジウムの参加者から私のところに基調講演の感想が届いていますので、それを先ず紹介させていただきます。
京都大学 国際シンポジウムに参加して 2014.11.24
S. M.(愛知)
11月24日(月)、京都大学で行われた「大学教育の国際化とは何か」と題する国際シンポジウムに、寺島隆吉先生が基調講演をされると聞いたので、妻と連れだって聞きに行ってきました。
ちょうど紅葉の季節と重なり、京都ではホテルがとれなかったので、大阪で泊まって参加しました。京大の会場には、美紀子先生とそのお母さん、そしてMK先生の姿もみえて一安心しました。
先生の基調講演は20分から30分ほどですが、内容に聞き入ってしまい驚くほど短く感じました。はじめ先生は原稿を読み上げながらスタートされたので、あんなスピードで読み上げたら、聞いている人は付いていけるだろうかと心配しましたが、無用な心配でした。どんどん話に引き込まれ、なるほどと思うことの連続でした。また途中で何度か自然と笑いを誘う場面もあり、会場は大いに盛り上がりました。
前回、寺島先生が京大でスピーチされたときも、YouTubeに講演内容がアップされたので、今回もしアップされたら是非聞いて欲しい内容でした。
衝撃的な内容のそのひとつは、外国人教師100人計画をしているような「京大からは、もうノーベル賞は出ないのではないか」という大胆な提言です。最近ノーベル賞がよく出ている名古屋大学には、坂田昌一教授の自由な討議ができる伝統があった。だからそこで育った益川敏英氏のようなノーベル賞学者が生まれた。天野浩、赤崎勇も名古屋大学です。
次に衝撃的だったのは、「大学ランキング」批判でした。その判断基準の一つである引用数にしても、英語で書かれたものが有利に決まっている。その引用数にしても、書かれた論文がすぐれているかどうかとの相関には疑問があるそうです。知り合い同士が引用し合うやらせもあるそうです。ノーベル賞受賞者が出た名古屋大学は99位、中村修二さんが出た徳島大学はランク外ではないか。まるでエンロンをトリプルAとしていた企業の格付け会社と同じではないか、との批判には考えさせられるものがありました。
また、現在の政権が進めている留学生30万人計画にしても、全てがアメリカ向けです。そのアメリカの教育批判も鋭いものがありました。現在のアメリカの大学の教育がハイスクールレベルでしかないこと、殺人やレイプが大学でも横行していること、学費が高くカナダに学生が逃げている現状などが語られました。どうしてそんなところへ大勢行かせる必要があるのか、なにか別の意図があるのではないかと日米関係における問題を提起されました。
現在、大学が法人化され民営化される中で、副学長が8人もいる大学が現れ、学長の権限が強化されている。一方で上位下達の雰囲気を出しておきながら、他方で生徒に英語でディベートなどと全く訳のわからないことを打ち出してきている。この寺島先生独特の対置のされ方には、痛烈な皮肉も含まれていて会場に笑いがもれました。
私のたよりない感想より、きっと寺島研究室のブログに原稿が載るでしょうし、YouTubeにもしアップされれば、会場の雰囲気もよくわかるので、是非そちらを参考にしてください。それにしても体調のすぐれない中、すばらしい講演を聴かせてくださって本当にありがとうございました。とても勉強になりました。
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