香港とウクライナ: 世界を破滅に追い込まないために英語教育はどうあるべきか

英語教育、平和研究、アメリカ理解(2015年1月7日)
年賀状2015

 あけましておめでとうございますと言いたいところなのですが、小選挙区制のもとで与党が圧勝し、金持ち大企業は減税で庶民は増税ですから、今年もあまり目出度い年になりそうにありません。唯一の良いニュースは共産党の躍進と沖縄県の与党勢力全滅でしょう。
 ところで世界情勢を見ると、アメリカによる「世界破壊」が深刻化し、解釈改憲で集団的自衛権を認めた現在、その「世界破壊」の片棒を日本も担がされる雰囲気がますます強くなっているようで、非常に怖くなってきます。特定秘密保護法を強行採決した背景には、このような事情もからんでいるのではないでしょうか。
 アメリカがウクライナのクーデターを裏で画策したこと、その実動部隊になったのはネオナチ勢力だったことは、今では周知の事実になってきていますが、香港「オキュパイ・セントラル」の運動も、やはりアメリカが裏で画策した結果であることは、まだまだ一般には認知されているとは言いがたいようです。
 しかしアメリカが「マフイアの原則」(チョムスキーの言、前回のブログ参照)にしたがって行動し、世界を股にかけて今までおこなってきた破壊活動を見れば、中国だけを例外扱いすることは考えられません。まして今や自分の覇権をおびやかす強敵としてロシアよりも手強い相手になりつつある中国を放置したままにすることはあり得ないでしょう。
 それどころか中国が、アメリカによる経済制裁の対象になっているロシアと一緒になって、世銀やIMFに代わる新しい国際的金融機関をつくろうとしている(しかも本部は上海に置く)のですから、これをオバマ氏が手をこまねいて座視していることは考えられません。
 ウクライナでクーデターを起こすとき送り込まれたNGOは50を超える程度でしたが、あの小さな港湾都市に送り込まれたNGOの数は1000を超えると言われているのですから、中国「不安定化工作」の意欲は並みのものではありません。
Operation ‘Occupy Central’

 しかし、このアメリカの試みは成功しませんでした。というのは、この運動を最初に提唱した指導者たち(戴耀廷TAI Benny、香港大学副教授など3人)が今回の運動から撤退すると宣言したとき、この運動は事実上の停止状態になったからです。
Hong Kong Protest Leaders Ask Demonstrators to Pull Bac
 この運動が成功しなかった原因・理由として、「その目標が普通選挙の獲得に焦点が当てられ、香港民衆が願っている貧困問題が十分に取りあげられず彼らの支持を失った」ことなどいろいろ考えられます。
 しかし他の大きな理由のひとつに、この運動が、ウクライナのクーデターと同じように、裏でアメリカによる画策があったということが、ウィキリークスを初めとする独立メディアによって徐々に暴露されたことにあるのではないかと思います。
 これまで私はグローバルリサーチなどの独立メディアを検索し、香港「占拠運動」を翻訳してブログで紹介してきたのですが、調べてみると、月刊『アジア記者クラブ通信』だけでなく「櫻井ジャーナル」「マスコミに載らない海外記事」というサイトで、下記のような分析や翻訳が日本語で読めることを知りました。
‘中国を不安定化する勢力として、占領中環運動に注目するアメリカ’(2014/12/03)
“カラー革命”: 香港の傘(アンブレラ)は “メイド・イン・アメリカ”(2014/10/06)
CIAを背景に持つ抵抗運動で混乱している香港を、英国はアヘン戦争で手に入れて略奪拠点にしてきた(2014/10/09)
香港の抗議行動「佔領中環」の指導部はCIAにつながっていて、中国庶民の不満を体制転覆に利用へ(2014/10/01)
香港で「民主化」を求めている学生は暴力行為で支持を失ったが、警察が催涙弾を撃ち込んで復活(2014/09/30)

 要するに私がここで言いたかったことは、香港「オキュパイ・セントラル」をアメリカが裏で画策していることが、ウィキリークスやグローバルリサーチなどによって暴露され、それが徐々に香港の民衆の気持ちを変えていったのではないかということです。
 しかし、アメリカを筆頭に世界の大手メディアは、香港「オキュパイ・セントラル」を一党独裁の中国政府が民衆を弾圧する典型例として大々的に報道しました。日本の大手メデイアも例外ではありませんでした。
 NHKも、集団的自衛権や特定秘密保護法を必要とする口実として安倍内閣がつくりあげた「反中国宣伝」の流れに乗って、香港「オキュパイ・セントラル」を密着取材した番組をつくり、民主化を求める誠実な学生運動としてこれを報道したようです。
 しかし他方のアメリカでは「警察によって丸腰の黒人が次々と殺害されている」ことにたいして香港とは桁違いの巨大な運動が全米各地で展開されていることについては、NHKも大手メディアも、ほとんど関心を寄せていません。
 香港警察がおこなった弾圧は、アメリカ全土で(大学キャンパスでも)日常茶飯事におこなわれてきたことですが、今度の「丸腰黒人の連続殺害」への抗議行動にたいする弾圧ぶりは桁違いで、軍事的重武装した警察だけでなく州兵が出動するほどの徹底ぶりでした。
 このように、「民主主義の旗手」を標榜するアメリカがやっていることは、「一党独裁」と非難されている中国よりも、はるかにひどいのです。そして、この警察の軍事化を全土で押し進めたのもオバマ氏でした。
 日本では、文科省が「大学の授業までも英語でおこなう」と言い出すほど英語が氾濫しているのに、このようなアメリカの実態は驚くほど知られていません。
 しかし知られては困るからこそ、「英語で授業」「TOEFL受験」「アメリカ留学」が声高に叫ばれているとも考えられます。「英語学習」と「アメリカ崇拝」「アメリカ美化」は、ともすると併行して進行するものだからです。
 言いかえれば、英語教育を通じて、「アメリカの視点で世界を見るようにしつけられている」と言ってよいのかも知れません。
 たとえば日本では、オバマ氏は民主党でありノーベル平和賞受賞者だから共和党のブッシュ氏よりも「鳩派」だという幻想がありますが、国外でも国内でもオバマ氏が現在やっていることはブッシュ氏よりひどいものです。
 CIAの拷問にかかわった元ブッシュ政府高官でさえ「俺たちは確かに拷問をやった。だがオバマ氏は捕まえて拷問する代わりに、疑わしきものはすべて無人機でいきなり暗殺だ」と言っているくらいです。
 「有罪が証明されるまでは無罪」というマグナカルタ以来の民主主義の原則を、いとも簡単に投げ捨てたのがオバマ氏(チョムスキーの言)でした。
 「暗殺リスト」に誰を載せるかは、オバマ氏の一存で決まってしまい、しかも誰もその内容を知ることはできないのです。
 国内でもオバマ氏は、CIAの拷問をおこなった張本人を罰するのではなく、それを内部告発した元CIA職員ジョン・キリアクー氏を牢屋に入れてしまうという恐ろしさです。イラクで多くの民間人をヘリコプターから銃殺した争犯罪を(これは戦争犯罪です)内部告発したマニング上等兵も、牢屋につながれたままです。
 オバマ氏が内部告発者を「スパイ防止法」で告訴した数は、歴代大統領の中でも群を抜いています。
 アメリカのすすめるTPPも本質的には同じです。TPPは、日本の国家主権をアメリカ巨大資本に売り渡す極めて危険な条項を含んでいるだけでなく、その目的のひとつは「中国を除け者にすることによって強力な中国包囲網を築くことにある」と、チョムスキーも指摘しています。

 しかし日本に蔓延している「革新大統領オバマ」「民主主義の旗手アメリカ」「自由貿易を拡大するTPP」という幻想ををつくりあげているのは、大手メディアであると同時に英語教育もその一端を担ってきたのではないかと、私は反省しているのです。
 高校や大学で、CNNやFOXニュース、あるいはTOEFL入試問題などを教材に使っている限り、英語教師は無意識的に上記のような幻想をふりまく手助けをすることになるからです(私の反省の一端は拙著『英語教育原論―英語教師三つの仕事、三つの危険』で書きました)。
 これでは、オバマ政権や安倍内閣が押し進めようとしている「日本の軍事化」「解釈改憲」「九条廃棄」「自衛隊海外派兵」という戦略に、まんまとはまってしまいます。つまり政府・文科省の英語教育政策は、単に日本人の英語力を高めるためにつくられているのではない可能性があるわけです。
 だとすれば、どのような英語教育こそが求められているのか。いま文科省が新しい大学政策、大学入試を提起しているときだけに、今それが真剣に問い直されなければならないときではないかと思うのです。しかし、ここではそれを詳述しているゆとりがありません。次の機会にしたいと思います。


<註1> 上記の年賀状で紹介した私の英語教育に関する論考やインタビューは、下記のサイトで、PDFファイルとして読むことができます。時間と興味のある方は御笑覧いただければ幸いです。
国際教育総合文化研究所「寺島研究室」
<註2> 私は、純粋な気持ちで運動している香港「オキュパイ・セントラル」の学生たちを貶めるつもりはありませんが、貧窮に苦しむ香港民衆を第一に考えずに「普通選挙」だけを優先する闘いは、香港の金融街やウォール街を支配するひとたちにとっては痛くも痒くもないでしょう。中国封じ込めをねらうオバマ氏にとっても実に好都合です。
<註3> 今日は近くの病院へ月一回の定期検査に行く日だったので待合室で中日新聞を読んでいたら、相変わらず中国・ロシア・北朝鮮を敵視または悪魔化する記事に満ちあふれていて驚きました。産経や読売などと比べればまだ中立かと思っていた中日新聞でさえこのような状態なのですから、安倍内閣としては万々歳でしょう。ここでは詳述しませんがソニーピクチャーズを狙ったハッカー攻撃も元従業員による可能性が強いのです。

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