英語の学力低下は、誰がもたらしたのか―文科省が初調査「高3英語力は中卒程度」(下)

英語嫌い、英語で授業、「"ざる水" 効果」、高3英語力調査 (2015/04/20)
 
前回のブログで、拙論「誰が英語の学力低下をもたらしたのか―文科省が初調査『高3英語力は中卒程度』」(上)を紹介しましたが、長周新聞(2015年4月15日)が引き続き、(下)を載せてくれましたので、それを以下に転載させていただきます。
 なお国内情勢ではTPP、国際情勢ではイエメンとウクライナが風雲急を告げていますが、それらについては下記に優れた分析や翻訳があります。それで私の方は、「英語教育」「アメリカ理解」その他へと、徐々に重点を移していきたいと考えています。
*櫻井ジャーナル:http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
*マスコミに載らない海外記事:http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/


文科省が初調査「高3英語力は中卒程度」
英語の学力低下は、誰がもたらしたのか(下)


文科省では英語力の調査のほかにアンケート調査もおこなったようですが、それによると「英語を嫌いな生徒が五八・四%。海外留学やビジネスに必要なレベルの習得を目指す割合も約一四%にとどまった」そうです(時事通信三月一七日)。
 ところが、ここに興味深い調査結果があります。それは広島大学教育学部の調査で、それによれば、英語嫌いの生徒が一〇年ごとに激増しているというのです。それについて私は、前掲書『英語教育が亡びるとき』で次のように書きました。少し長くなりますが、以下に引用します。

さらに、もっと深刻なのは高校生の英語に対する意識が確実に変化していることです。広島大学教育学部英語教育研究室では、一九六六年から毎年一〇年ごとに研究室をあげて「高校生の英語学習意識」の調査を実施しているそうですが、一九九六年におこなわれた調査結果が『英語教育研究』四〇号に報告されています。それによれば「英語は将来必要だと思う人だけが勉強すればよい」と考える高校生が年を追うごとに増えています。
下の棒グラフ[省略]で網掛け部分が「英語に対する好意的意識」を示すように表示されているので、それを見ればお分かりのとおり、一九六六年には英語に好意を示すものが六三・八%もいたのに、一九八八年には半減して三〇・七%、そして一九九六年には二五・七%に落ち込んでいるのです。これを逆に言えば、「英語は将来必要だと思うひとだけが勉強すればよい」と考える高校生は、一九六六年には一一・九%しかいなかったのに、それが一〇年ごとに増えていって、一九九六年の時点では三一・八%になり、英語に好意を持つ二五・七%を超えてしまっているのです。
つまり昔の高校生は英語を勉強すれば明るい未来が待っていると信じることが出来たのに、今の高校生は「少しぐらい英語を勉強しても明るい未来が開けるとは限らない」ということがわかり始めているのです。この調査は一九九六年の調査ですから、最新の調査ではもっと悪い結果になっていることは十分に推測されます。なぜなら米国が嘘をついてイラク侵略したことが明らかになってからは「英語を話す理想の国」米国の権威は大きく失墜してきていますし、また米国発の金融危機がそれに拍車をかけているからです。(一六八-一六九頁)


 私は上記の引用で「この調査は一九九六年の調査ですから、最新の調査ではもっと悪い結果になっていることは十分に推測されます」と書きました。この予言が的中したことが、今回の文科省の調査で明確に示されているのではないでしょうか。
 というのは、広島大学の調査では、「英語は将来必要だと思うひとだけが勉強すればよい」と考える高校生は、一九六六年には一一・九%しかいなかったのに、それが一〇年ごとに増えていって、一九九六年では三一・八%になり、英語に好意を持つ二五・七%を超えてしまっています。
 この「英語は将来必要だと思うひとだけが勉強すればよい」という意識は、「英語を嫌いだ」という意識の間接的表明だと考えられます。それが一九九六年の時点で三一・八%だったのが、今回の二〇一四年の調査では五八・四%になっているのです。

一九六六年、一一・九%
一九九六年、三一・八%(三〇年間で約二〇%増)
二〇一四年、五八・四%(さらに二〇年後に約二六%増)


 つまり、政府・文科省が「英語は国際語だから勉強しろ」「英語を話せないのは日本人だけだ」「日本の不況は日本人の英語力のせいだ」という嘘を振りまいて、下は小学校から上は大学まで、生徒・学生に「英語漬け」を強制しているのですが、生徒の間では「英語嫌い」がますます進行しているのです。
 この「英語嫌い」の結果は、「海外留学やビジネスに必要なレベルの習得を目指す割合も約一四%にとどまった」という調査結果にも表れています。
 政府・文科省は、必死になって英語熱を煽り立て、あわよくばTOEFLまでも大学入試で受験させつつ海外留学(とりわけアメリカ留学)させようとしているのですが、当の高校生は「笛吹けど踊らず」なのです。
 しかし、だからこそ逆に、文科省や各県教育委員会の強制力を通じて、今の異常な英語熱がつくられているとも考えられるのです。
 ところが広島大学の調査では、一九六六年の時点で、「英語は将来必要だと思うひとだけが勉強すればよい」というアンケートにたいして「反対」、つまり「英語はすべてのひとが勉強すべきだ」と考えていた高校生が、六三・八%もいたのです。
 この頃は少なからぬ高校生がアメリカに好意をいだき、可能なら留学したいと思っていたから、政府・文科省はやっきになって英語熱や留学熱を煽る必要もありませんでした。
 しかし今の高校生は非常に冷めた目で英語やアメリカを見ているのです。その理由を私は前掲書で次のように書きました。くどいようですが再度引用します。

昔の高校生は英語を勉強すれば明るい未来が待っていると信じることが出来たのに、今の高校生は「少しぐらい英語を勉強しても明るい未来が開けるとは限らない」ということがわかり始めているのです。この調査は一九九六年の調査ですから、最新の調査ではもっと悪い結果になっていることは十分に推測されます。なぜなら米国が嘘をついてイラク侵略したことが明らかになってからは「英語を話す理想の国」米国の権威は大きく失墜してきていますし、また米国発の金融危機がそれに拍車をかけているからです。(一六九頁)


 いまアメリカは、オバマ政権になってから、イラクやアフガニスタンどころか、リビアやシリアやイエメンにまで戦争を拡大しました。そして無人機と秘密特殊部隊による殺戮で大量の難民を生み出し、世界各地を瓦礫に変えています。また国内でも、市街地だけでなく高校や大学などの学内でさえ、銃撃事件が相継いで起き、多くの生徒・学生が死傷しています。
 これではアメリカ嫌いが増えることはあっても減ることはないでしょう。そしてアメリカ嫌いは必然的に英語嫌いへと連動していきます。
 何度も言いますが、このような状況に危機感を感じたからこそ、政府・文科省は、教育委員会を使って英語熱を煽り立て、中高生に英検を強制的に受験させたりなど、しているのではないでしょうか。留学のための資格試験であるはずのTOEFLを、大学入試に使わせようとしたり、大学の一般教育にまで「英語で授業」を推奨するのも、その一貫でしょう。
 また、その制度的裏付けとして小中高の学習指導要領を次々に改訂(改悪?)し、その内容を「会話・コミュニケーション」一辺倒にしました。ところが皮肉なことに、その成果が「高三生徒の英語力が中卒程度」「海外留学やビジネスに必要なレベルの習得を目指す割合も約一四%」という惨めな調査結果になって現れたというわけです。
 それにしても「英語力が中卒程度」の高三生徒が続々と入ってくる大学に、「英語で授業」を推奨する文科省の神経が、私には信じられません。


<註> 日常会話文を暗記する英語学習法は、それを日常的に使う機会がないのですから、覚えてもすぐ忘れてしまいます。これを私は「"ざる水" 効果」と名づけています。笊(ざる)にどれだけ水を入れても、水は溜まらないからです。「会話文では会話の基礎は育たない」ひとつの理由です。詳しくは以下に載せてある私の英語教育論を御覧ください。
http://www42.tok2.com/home/ieas/
http://www42.tok2.com/home/ieas/englishteaching.html





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