革新へと変わる世界、右傾化して変わらない日本

ジェレミー・コービン、バーニー・サンダース、カタロニア独立運動、トンキン湾事件、イスラム国、TPP(Trans-Pacific Partnership)、非親告罪、国際教育(2015/10/25)

イギリス労働党の新党首ジェレミー・コービン  アメリカ大統領候補者バーニー・サンダース
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 前回のブログを書いてから既に1ヶ月が経とうとしています。この1ヶ月は拙著『英語教育が亡びるとき』の続編(仮題『英語で大学が亡びるとき―「英語力=グローバル人材」というイデオロギー』)を校正するのに追われて全くゆとりがなく、体をこわして10日間も寝込んでしまう事態になってしまいました。今やっと気力・体力が少し回復したのでパソコンに向かって、このブログを書き始めています。

 最近の世界情勢に少しずつ新しい風が吹き始めたように思います。というのは、9月27日のスペイン=カタロニア自治州議会選挙で、独立賛成派が勝利しました。これを受けカタルーニャと、英スコットランドの分離・独立運動は新たな局面に入ろうとしているからです。
 私は以前のブログで日本政府が沖縄の民衆が圧倒的多数で米軍基地の辺野古移転を拒否したにもかかわらず(全選挙区で自民党が敗北)、安倍政権が民衆の意向よりもアメリカの意向を優先する政策を続けるかぎり、沖縄にとって残された道は日本からの独立しかなくなる、と書きました。
 上記のようなカタロニアやスコットランドの動きがさらに勢いを増し、実際に独立するようなことになれば、それに勢いを得て、沖縄の独立運動はさらに現実味を帯びてくるでしょう。というのは安倍政権は憲法を踏みにじって戦争法案を強行採決しましたが、その結果まっさきに犠牲になるのは沖縄人と自衛隊員の命だからです。
 というのは、「中国封じ込め」という戦略のなかでアメリカがまず第一に頭に描いている戦場は尖閣列島であったり南沙諸島だからです。そして中国との間で実際に戦争が始まった場合、まっさきに出動基地となるのが沖縄であり、まっさきに出動を命じられるのは米軍ではなく自衛隊だからです。
 私の家は岐阜市内にありますが自衛隊各務原基地が近くにあります。ところが機密保護法案が国会の話題になり始めた頃から、自宅の上空で自衛隊戦闘機の爆音が急に強くなり始め、戦争法案が話題になり始めた頃から、自衛隊戦闘機の大編隊が轟音を立てながら何度も上空を行き来するようになりました。
 これは明らかに戦争が近くなっている証拠であるように思います。さもなければ、このようにひっきりなしの戦闘訓練をする理由がないからです。かつてアメリカは「トンキン湾事件」という謀略事件を起こして本格的にベトナム戦争へと突入しました。日本も中国本土で盧溝橋事件や満州事変などの謀略事件を起こして戦争に入っていきました。このように軍部・為政者にとって戦争はいとも簡単に引き起こせるものなのです。
 そして、いったん戦争がおきてしまえば大手メディアは一斉に敵を悪魔化して戦争賛美へと流れていきます。逆にそれに異を唱える人たちには「非国民」のレッテルを貼りますから、始まってしまった戦争を押しとどめることは極めて困難になります。それは、アメリカ全体が「911事件」のあと一斉にアフガニスタン戦争さらにはイラク戦争へと流れていった経過をみれば、歴然としています。ABC放送もニューヨークタイムズも戦争賛美一色になりました。
 ですから、日本でもアメリカでも尖閣列島や南沙諸島の問題を口実に戦争を起こしたいと思っているひとたちは、どこかで必ず謀略事件を起こすに違いないと私は思っています。
 イラク戦争の場合も、いま起きているシリア内戦の場合も、いったい幾つの嘘がばらまかれてきたでしょうか。今でも欧米のメディアはシリアのアサド大統領が化学兵器を使って自国民を殺しているという嘘をつきながらシリア爆撃の口実にしようとしましたがロシアによってその嘘が暴かれて攻撃の口実を失い、今度は自分たちが育て上げたイスラム原理主義者「イスラム国」の人権問題や古代遺跡の破壊を口実にしながらアサド政権転覆を画策しています。
 しかも、アメリカとNATO諸国による中東地域の破壊は、アフガニスタン→イラク→リビア→シリア→イエメンといったふうに、とどまるところを知りません。2001年から始まったアフガニスタンについても、その国土を破壊し尽くしているのに未だに休戦・停戦の道筋を全く見えていません。これは中東全体についても言えることです。
 このなかで、どれだけの死者と難民が生まれたでしょうか。このような破壊と殺戮の「パンドラの箱」を開けることになった張本人、元イギリス首相ブレア氏と元アメリカ大頭領ブッシュ氏は、戦争犯罪人として裁かれたでしょうか。今もサウジアラビアなどのイスラム原理主義=王制独裁国家を支援しながら戦乱拡大の役割を果たしているオバマ大統領にたいして、戦犯としての告発を、欧米の大手メディアのどこかが、今までに発したことがあるでしょうか。
 というのは、これらの王制独裁国家およびトルコやイスラエルが、アメリカと手をつなぎながら、裏でいわゆる「イスラム国」を支援してきたことは今では歴然としているからです。それが目に見えるかたちではっきりと姿を現したのがイギリスにおける労働党の党首選挙でした。この党首選挙では、労働党の最左派と言われ今まで泡沫候補として誰も相手にしていなかったコービン氏が、圧倒的多数で党首に選ばれることになったからです。
 これはイギリス民衆が、ブレア氏に代表される今までの労働党の路線、規制緩和と民営化を追い求める財界寄りの路線、嘘をついてまでもアメリカの戦争政策に追随する労働党の路線に、いかに嫌気がさしているかを如実に示すものでした。そして今までのブレア路線がいやになって労働党をやめていたひとの多くが、いま労働党に戻り始めているというニュースも入ってきています。(しかし他方でBBCを初めとする大手メディアは、コービン氏を過激派分子であるかのようなレッテルを貼り、新しい「悪魔化」、新しい「コービンたたき」を始めています。)
 このようにイギリス民衆が目覚め始めたのと同じようにカナダでも変化が起きました。カナダの総選挙でも、アメリカの戦争政策に追随してきたスティーブン・ハーパー首相を、有権者が3期ぶりに政権の座から引きずり降ろしたからです。カナダの新しい首相はさっそくカナダ軍戦闘機を中東からひきあげると発表しました。これは二つの意味があるように思います。
 一つは、イスラム原理主義集団「ISイスラム国」と戦うと称してアメリカやイギリスが主権国家シリアの許可なく勝手にシリア領内を爆撃しても「ISイスラム国」の領土は縮小するどころか拡大する一方だったからです。ところが正式に選挙で選ばれたアサド大統領の要請で、ロシアが「ISイスラム国」の軍事拠点を攻撃し始めたら、アメリカやNATO諸国が1年かけても達成できなかった成果を1週間で達成してしまったからです。
 このことは、アメリカが「ISイスラム国」と戦うと言いながら、真の狙いはアサド政権の転覆にあったことを改めて裏付けるものでした。このことはアラブの民衆にとっては自明の事実でしたが、カナダの総選挙は、それがカナダの民衆にも分かり始めたということを示すものでした。しかも(国連決議があるのであれば別ですが)、内戦状態にある主権国家を国家元首の了解や要請なしに他国が勝手に爆撃するなどという行為は国際法を露骨に踏みにじるものであり、これもカナダの民衆にとっては許せないことだったのでしょう。
 同じことは実はアメリカでも起きています。いまアメリカでは新しい大統領を選ぶための予備選が激しさを増しています。ところがここに異変が起きています。というのは社会主義者を自認するサンダース氏が、無所属ではなく民主党の候補者として立候補し、民主党の目玉と目されているヒラリー・クリントン女史と互角の闘いを演じているからです。世論調査ではヒラリー女史を超える支持率を得ている州も少なくありません。
 しかもサンダース氏は財界からの献金は拒否するという姿勢を強固に貫いているにもかかわらず、氏のもとに集まる献金はヒラリー女史が財界から集めた金額に迫る勢いだそうです。これもアメリカの民衆が、ブレア氏と同じような「財界寄りの規制緩和と民営化」を推し進める民主党=ヒラリー女史の路線に、嫌気を感じていることを如実に示すものです。
 サンダース氏とヒラリー女史の動きで、もうひとつ面白い現象が起きています。それはTPPをめぐるものです。
 TPPは巨大企業が国家主権を乗り越えて、国家が国民の生命・健康・生活を守るために企業活動に規制をかける法律を作った場合、それを企業が自分の利益に反する規制をかけたという理由で国家を訴える権利をもつという、恐ろしい条約です。だからこそ、今まで交渉内容をひたすら秘密にしてきたのでした。
 これに真っ向から反対しているのがサンダース氏です。しかも民主党の党員にも、このようなTPPに反対する議員は少なくありませんでした。ですから、TPPについては一括して大統領に任すという法案を通すために、オバマ大統領は、皮肉なことに共和党の議員に頼らざるを得ませんでした。
 ところがウィキリークスなどを通じて、TPPの内容がいかに巨大企業の利益だけを優先し民衆の利益を踏みにじるものであるかが暴露されてきているので、今ではヒラリー女史でさえ、予備選挙でサンダース氏を打ち負かして民主党支持を取り付けるために、TPP反対を言わざるを得ないように追い込まれています。
 さらに、もっと興味深いのは、共和党の大統領候補者として予備選で最先端を走っているトランプ氏までが、最近はTPP反対を言い始めていることです。彼の言い分は「たとえば日本の大企業がアメリカの政府を訴えることができるような貿易協定は許すわけにはいかない」というものです。トランプ氏にとっては、世界の覇者であるアメリカ、覇権国家アメリカが、他国の企業から告訴されることなど許しがたいというわけです。

 いずれにしても、世界はこのように揺れ動いているのですが、肝心の日本は、戦争法案に疑問を呈した朝日新聞や毎日新聞ですら、あたかもTPPは既成事実であるかのような論調です。それどころか「TPPが流れずに何とか妥結して良かった」という論著すら見られます。オバマ氏のアメリカでさえ、まだTPPの行方は流動的なのに、我が日本ではTPP推進論が主流なのですから、言うべきことばを失ってしまいます。
 しかもTPPは安倍晋三氏がアメリカ議会で演説したとき、TPPは単なる経済協定ではなく中国封じ込めのための軍事協定であり、日本はその協定実現のために先頭に立って奮闘すると述べ、満場の拍手を得ているのです。だとすれば、戦争法案に疑問を呈してきた大手メディアは、TPPにたいしても鋭い疑問を提起すべきでしょう。単に農産物の自由化だけを問題にするのではなく、国家主権など論ずべき問題は数多く残されているのですから。
 ところがNHKを初めとしてメディア全体が右傾化しているので、国家主権はもちろんのこと、TPPと中国封じ込めの問題、TPPで日本の医療が崩壊するするかも知れないという問題、「非親告罪」をめぐる言論の自由などは、ほとんど議論になっていません。あれほど戦争法案が話題になり、国会包囲のデモが繰り返しおこなわれたにもかかわらず、与党が平然としていられる背景には、このような事情があるように私には見受けられます。


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