日本の高齢者、生活費軽減のため犯罪人生へと転落――アベノミクスがつくりだしたもの

総合文化(2016/04/06)、アベノミクス、民営化・規制緩和、市場原理主義、新自由主義経済、新保守主義(Neoconservatism、ネオ・コンサバティズム, 略称:ネオコン)


日本の高齢の囚人たち 万引きの35%が60歳以上の高齢者によるものだ
高齢者の囚人グラフ
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/fbd435a6-f3d7-11e5-803c-d27c7117d132.html#axzz44im6fXy6


 東京に拠点をおく研究所カスタム・プロダクツ・リサーチ(Custom Products Research)のマイケル・ニューマン氏がおこなった「高齢者犯罪の経済学」による調査・研究によれば、日本の刑務所における高齢者の収容者数がこのところ激増しつつあります。
 この研究が示すところによると、万引きの約35%が60歳で、そのうち、再犯者の40%が同じ犯罪を6回以上も犯しています。これを単に法律にたいする軽蔑と説明するのは、その裏にひそむ真の原因を覆い隠すことになってしまうことになります。
 というのは、いま日本では生活保護を受給する人の割合が戦後で最大になっていて、しかも高齢者の約4割が独りで暮らしていますから、刑務所を出ても、所持金や家族がないため、すぐに犯罪に手を出して、刑務所に戻ることになるからです。
 これについてニューマン氏は「刑務所では1日3食のちゃんとした食事、無料の医療、宿泊施設が保証される。これでは悪循環だ」と述べています。
 これは安倍政権を初めとする歴代自民党政権が進めてきた「規制緩和と民営化」「庶民への増税と福祉や医療費の削減」というアメリカ流の経済政策が何をもたらすかを如実に示しています(しかもこれはアメリカから強制された政策でもある)。
 とりわけ安倍政権がすすめている経済政策は、アメリカから強制された日本の軍備拡張と一体になっていますから、「庶民増税」「金持ち企業大減税」「介護医療費・生活保護削減」そして「防衛省軍事費の激増」が手を携えて驀進(ばくしん)することになっていますから、ますます庶民の購買力が減少し、景気が回復する兆しは全く見られません。
 これを称して大手メディアは「アベノミクス」ともてはやしていますが、同志社大学の浜矩子氏は「アホノミクス」と言っています。まさにさもありなんと言うべきでしょう。
 このまま事態が進行すると、2060年までには、高齢者の犯罪者数は65歳以上人口の40%になるだろうと予想されています。
 この調査が発表されると、テレグラフ紙やフィナンシャル・タイムズ紙など世界の大手メディアがこれを取り上げて紹介しましたから、安倍政権は世界中にその恥をさらすことになりました。
 そこで、フィナンシャル・タイムズ紙のレオ・ルイス記者による配信記事を、以下に訳出して紹介させていただきます。


日本の高齢者、生活費軽減のため犯罪人生へと転落
Japan’s elderly turn to life of crime to ease cost of living
レオ・ルイス(Leo Lewis、東京) March 27, 2016

講習を受ける高齢の囚人たち
高齢者の囚人
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/fbd435a6-f3d7-11e5-803c-d27c7117d132.html#axzz44im6fXy6

日本の刑務所制度は財政危機に追い込まれつつある―人口動態、福祉費不足、そして新しく致命的な犯罪者つまり定年退職者の常習犯によって。銀髪の窃盗犯たちが刑務所に入ることを切望している、と専門家は言う。

犯罪総計が示すところによると、万引きの約35%が60歳以上だ。そのうち、再犯者の40%が同じ犯罪を6回以上も犯している。

ある研究報告書(後述)の結論によれば、とくに万引き犯の急増は、有罪判決を受けて刑務所に入れられることをねらった行為ではないかと推測できる充分な理由がある。刑務所は無料の食事、宿泊施設、医療を提供してくれるところだからだ。

常習犯的犯行の数字は、有罪判決を願っている老人の暗く切迫した願いを示している。食費を削り、安くて汚らしい部屋に住んだところで、最小限の貯えしか持っていない独り身の定年退職者は、貧弱な国民基礎年金の年額78万円(6900ドル)では生活できない。彼らの生活費は、それよりさらに25%以上も必要だからだ。以上の数値は、東京を拠点とする研究所カスタム・プロダクツ・リサーチ(Custom Products Research)のマイケル・ニューマンがおこなった「高齢者犯罪の経済学」によるものだ。
http://www.custprd.com/rsch/Crime%20in%20Japan%20-%20Geriatric%20Jailbirds.pdf

上記の報告書によれば、200円のサンドイッチを盗むだけで2年の禁固刑になりうる、そして国にとっては840万円の出費だ。

高齢者犯罪の数は加速している。そして専門家によれば、日本の刑務所は今後数十年間の増加に備えて拡張されたので最近の収容率は約70%だ。しかし法務省公表の最新統計(1991年から2013年)によれば、同じ犯罪を6回以上も犯して刑務所に収容されている高齢者の数字は460%も急増した。

高齢者の犯罪率上昇を単に法にたいする軽蔑と説明するのは、その裏にひそむ暗い傾向を覆い隠すものだ、と経済学者や犯罪学者たちは語る。定年退職者の犯罪は高齢者人口動態の一般的な上昇以上に急増しており、2060年までには、その犯罪者数は65歳以上人口の40%になるだろうと。

東京にある日本生命基礎研究所(NLI Research Institute)の土堤内昭雄(どてうち、あきお)主任研究員は、再犯者の比率は上昇し続けるだろうと予測している。
http://www.ft.com/intl/world/asia-pacific/japan
「日本の社会情勢は高齢者が犯罪を犯さざるを得なくさせている」と彼は述べる。
「生活保護を受給する人の割合が戦後で最大になっている。高齢者の約4割が独り暮らしだ。悪循環だ。刑務所を出ても、所持金や家族がないため、すぐに犯罪に頼る」

「高齢者の犯罪数は、政府による福祉への引き締め政策とその結末を示すものだ。世界第2位の経済大国が老化・劣化しつつあるのだ」と彼は付け加えて言う。
「刑務所予算をどのように操作しようが、最も必要としている人にたいする福祉支出を政府が削減対象にするのは、悲しく非能率的な方法である」。

「刑務所が満杯になるのを防ぐために単に高齢者の囚人を早期に釈放しようとするだけの政策は、すでに再犯率の増加という克服しがたい法的問題に直面している」と土堤内昭雄主任研究員は言う。
「現状の政策を続ければ、刑務所は、いずれ高齢者であふれかえることになるだろう」。

<註> 
 この記事を読みながら私は、市民の哀歓を描いて右に出るものがいないと言われる短編の名手オー・ヘンリーの、「警官と讃美歌」 (The Cop and The Anthem)という珠玉の作品を思い出していました。
 「あるホームレスが越冬策として、わざわざ刑務所に行こうと街でいろいろな悪事を試みるのだが……。」
 まだ未読の方はぜひ読んでいただきたいと思いますし、英語教師なら、いちどは教材として使っていただきたいと思います。
 そうすれば、ひたすら会話の文句を丸暗記し会話ごっこをするだけの英語授業、英検やTOEIC・TOEFLなどの受験勉強ばかりに追われる英語学習ではなく、豊かな内容にふれて人間性を回復する英語授業・英語学習の世界が開けてくるのではないでしょうか。
 今の文科省は、「文系排除、実用一点張りの教育」を声高に叫んでいますが、人間にとってやはり文学は必要なのです。




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