大学入学共通テスト「英語」に、民間試験を利用することに対して、緊急の国会請願署名


私のところに和歌山大学の江利川先生から「国会請願署名(6/7〜6/16)にご協力ください!」とする案内が送られてきました。
読んでみると、羽籐由美さん(京都工芸繊維大学教授)が中心になって「大学入学共通テスト英語に民間試験を利用することに反対し,その中止と制度の見直しを国会に求める運動」を起ち上げるので、賛同者になってほしいというものでした。
私も大学英語入試への民間試験導入にたいして強い憤りを感じて、すでに下記のブログで2度にわたって私見を述べてきましたから、喜んで賛同者になる旨を伝えました。
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-325.html
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-326.html
しかし請願署名の締切が「6 月 16 日(日)署名用紙必着」となっていて、時間が余り残されていないので、私のブログでもこの反対運動について紹介し、少しでも羽籐由美さんたちの運動に協力したいと考えました。
羽藤さんたちが起ち上げた「2021年度(2020年度実施)の大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用中止を求めます」と題するサイトのトップページは、次のようになっていました。
国会請願署名(6/7〜6/16)にご協力ください!
私たちは,2021年度(2020年度実施)の大学入学共通テストにおいて英語の民間試験を利用することに反対し,その中止と制度の見直しを国会に求めます。
国会請願は,国民が国政に対する要望を直接国会に述べることのできる,憲法で保証された権利です。日本に住んでいれば,外国人や未成年(たとえば,小・中・高生)も請願することができます。
今国会における請願の受付は 6 月 19 日(水)まで。そのために短期決戦の署名運動になりますが,国政選挙の直前でもあり,私たちの声を国会に届ける大きなチャンスです。
署名・送付の方法のページをご参照のうえ,署名運動にご協力ください。
締切 6 月 16 日(日)[署名用紙必着]
この「署名・送付の方法のページ」は下記のURLにリンクが貼られていました。
https://nominkaninkyotsu.com/signaturecampaign/
また「以下の請願書を衆議院と参議院に提出します」と題して、次の文面が枠で囲まれて掲示されていました。調べてみると、これは署名用紙の冒頭に書かれているものと同一のものでした。
しかし「一 請願要旨」は、段落改行が全くない13行にもわたる文章だったので非常に読みづらいものでした。そこで以下では私の判断で適当と思われるところに改行を加えました。お許しただければ幸いです。
一 請願要旨
2021年度(2020年度実施)の⼤学⼊学共通テストにおいては,⼤学⼊試センターが作成する 英語の試験と,英検,GTECなど8種類,計23の民間試験が併⽤されることになっている。
文部科学省は,大学⼊試センターが作る英語の試験を2024年度から廃⽌し,民間試験に⼀本化したい意向といわれる。しかし多くの専⾨家が指摘するように,新制度には多数の深刻な⽋陥があり,大学入試が有するべき最低限の公正性・公平性が確保されていない。
それどころか,2020 年 4 ⽉の新制度導⼊を間近に控えた現時点でも,希望者全員がトラブルなく民間試験を受検できる目処が立たず,高校生や保護者,学校関係者に不安が広がっている。
このように,ずさんな 制度設計,拙速な計画の弊害が,制度の開始前から表面化しているにもかかわらず,当初の予定どおりの導⼊にこだわることは高大接続改⾰の意義をないがしろにする。
このまま導⼊を強行すれば,多くの受験生が制度の不備の犠牲になり,民間試験の受検のために不合理な経済的,時間的,精神的負担を強いられる。また,予想される各種のトラブルのために,当該年度の⼊学者選抜が⼤きく混乱することも危惧される。
上記のホームページでは、上の「一 請願要旨」を受けて、次の2項目が「二 請願事項」として記載されています。
以上の趣旨から、次の事項を速やかに実現するよう請願いたします。
⼆ 請願事項
1 2021年度大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用を中⽌すること。
2 大学入学共通テスト全体としての整合性を考慮し,公平性・公正性を確保するために新制度のあり方を見直すこと。
さらに、このホームページでは、先に紹介した「署名・送付の方法のページ」だけでなく、次の項目が設けられていて、それぞれにリンクが貼られています。
「Home」「新制度の問題点」「賛同研究者」「参考リンク」「お問い合わせ」
まだ未完成のページもありますが、「参考リンク」には貴重な情報が載せられていました。とりわけ私のとって興味深かったのは「東大で開催されたシンポジウムの報告書」でした。
このシンポジウムについては、すでに『検証 迷走する英語入試――スピーキング導入と民間委託』(岩波ブックレット)となって公刊されているのですが、ここに盛り込まれなかったものを知ることができて便利でした。
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