福島原発事故(2)―広瀬隆、高木仁三郎、そして原子力資料情報室(CNIC)

先のブログを書いてから、これでしばらくは翻訳に専念できると思っていたのですが、今の原発状況を見ると、どうしても少しだけ付け足しておきたいことが出てきて困っています。

というのは、下記の「原子力資料情報室」の発表によれば、原発事故の状況が改善するどころか、いっそう悪くなっているような気がするからです。

記者会見「最新映像資料」
http://www.ustream.tv/channel/cnic-news

この「原子力資料情報室」は、故・高木仁三郎氏が1975年9月に設立したもので、1999年9月に特定非営利活動法人化されました。原子力業界から独立した立場で、調査・研究などを行っています。

また、公開研究会や国際会議、シンポジウム等を開催していますが、今回の福島原発事故を受けて、連日のように収集した情報を元に、記者会見などをおこない、現状を一般市民に知らせると同時に、政府への申し入れをおこなっています。
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1040

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昨日20日(日)も、詳細な理由をあげて、政府の、「福島原発から20キロ以内の住民に避難、20~30キロ以内の住民に屋内退避」という指示はあまりにも危機意識が欠けているとして、警告を発すると同時に緊急の対応を要請しました。

この記者会見では,現時点での問題点と今後の見通について後藤政志氏(元東芝の原子炉格納容器設計者)が詳しい説明をしていましたので、時間がある方は是非みていただきたいと思いました。
http://www.ustream.tv/recorded/13447172

[ここで非常に印象的だったのは、原子炉の冷却がうまく作動するようになったとしても、それを2~3年も冷却し続けなければ(コンクリートで覆って)廃炉にできないということでした。つまり、この原子炉および近辺地域はもう使えなくなるという前提で話されているのです。]

この記者会見では視聴者から寄せられた質問にも丁寧に答えていくので、ひじょうに勉強になりますが、NHKなど大手メディアでは、専門家と称する学者が出てきて解説する場合も、全くの短時間で終わりますから、理解できない部分も多く、まして放送記者の解説では、あまり信用できません。

この記者会見では英語による同時通訳もついていて、現状に不安を感じている外国人にも今の事態を理解するのに大きな助けになるような気がしました。(通訳をされている外国人が、通訳に困って、ときどき日本語で質問する場面があって、英語教育を考える上でも極めて興味深く思われました。)
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<註> 上記の「原子力資料情報室」をつくりあげた高木仁三郎氏については、下記を御覧ください。

高木仁三郎の部屋
http://cnic.jp/takagi/
高木仁三郎市民科学基金
http://www.takagifund.org/

高木氏は、時々いかがわしい人物にも受賞させる「ノーベル平和賞」と違って、本当に実績ある人にしか賞を出さないことで有名な「Right Livelihood Award」を、1997年に受賞しています。詳しくは下記を御覧ください。
http://www.rightlivelihood.org/takagi.html

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ところで、前回のブログでは、大学時代の友人から(もとNHK技術者)、次のサイトをぜひ見るように電話があったことをお知らせしましたが、上記の後藤政志氏による記者会見を見比べてみれば、現状に対する理解がいっそう深まるはずです。

ニュースの深層3/17(木)「福島原発事故 広瀬隆 メディア報道のあり方」1/3
http://www.youtube.com/watch?v=veFYCa9nbMY&feature=player_embedded
ニュースの深層3/17(木)「福島原発事故 広瀬隆 メディア報道のあり方」2/3
http://www.youtube.com/watch?v=wlVlmyyNxlw&feature=player_embedded#at=440
ニュースの深層3/17(木)「福島原発事故 広瀬隆 メディア報道のあり方」3/3
http://www.youtube.com/watch?v=rpcuM1v90XE&feature=player_embedded

また、「原子力資料情報室」による番組では、関東以北で心配されている放射能に対して庶民はどのように対処したら良いのか、どのような薬を,どう飲めば良いかについても、専門家(崎山比早子=元放射線医学総合研究所主任研究官、医学博士、現高木学校)と産婦人科女医による詳しい説明と対談があります。
http://www.ustream.tv/recorded/13446685

上記の説明で特に印象的だったのは、「外部被曝」と「内部被曝」の違い、およびNHKなどが「ただちに」影響はないなどと解説していることの欺瞞性と犯罪性をみごとに暴いていることでした。なぜなら「ただちに」影響が出るということは、原爆投下直後の広島や長崎のことであって、いま問題なのは放射性物質の微粒子が水や空気を通じて体内に入り込み、「内部被曝」することの重大性だからです。

なお、Ustream中継や記者会見で使用しているスライド資料は下記のとおりです。
資料:福島第一原発で何が起きているのか(2011/3/19)
http://cnic.jp/files/earthquake20110311/CNICpresentation_20110319.pdf

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もう一つどうしても紹介したいのは、平井憲夫氏の「原発元配管技能士の証言」と題する講演記録です。

これも、氏が実際に原発の配管技能士としてかかわってこられた生々しい体験が述べられているだけでなく、私の故郷につくられた志賀原発などにもふれられていて、読んでいて胸の詰まる思いがしました。

■平井憲夫「原発がどんなものか知ってほしい(全)」
http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html#page1

平井氏は、日本全国で原発事故が起こる度に、修理のために引っ張り出されて、結局、被爆のため1997年1月に逝去されました(実は高木仁三郎氏の死も日本原子力事業(NAIG)に勤務していた頃の被爆が遠因だと言われています)。

上記の講演記録は、「私は原発反対運動家ではありません。二十年間、原子力発電所の現場で働いていた者です」という出だしで始まりますが、読んでみて、氏の講演は、このような「血を吐く」ような体験に基づいているだということを、本当に実感しました。

YouTubeなどによる映像資料は、それを見終わるのに時間がかかりますし、パソコンが茶の間ではなく書斎にあったりすると(普通のテレビ番組を見るように)食事をしながら見るわけにはいきません。

しかし添付ファイルやPDF文書は印刷して、寝るときにベッドで横になりながらでも読むことができます。その意味で、平井氏の文書は少し分量がありますが、読み出したら止められない迫力があり、思わず引き込まれて読んでしまいます。

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ところで前回のブログで、「個人で対処するには今回の地震・津波・原発事故はあまりに強大すぎるから国や県レベルで対処すべきだ」という提案をしました。

最近の報道を見ていると、島根県から被災者受け入れの声が上がっていたり、福島県の双葉町が町ぐるみで移住する動きが出てきています。

双葉町の場合は、受け入れ先の「さいたまスーパーアリーナ」が3月一杯で退去しなければならず、埼玉県は20日、同県加須市の閉校になった高校の校舎を活用する方針を発表した。畳などを敷けば約1000人の収容が可能だそうです。

千葉県は20日、東日本大震災の被害が大きかった旭市と香取市に避難者向けの仮設住宅を建設すると発表しました。一方、旭、香取、山武、九十九里の4市町では、県内の国家公務員宿舎と県営住宅への入居手続きも進めています。

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このような動きが、もっと加速されることを願っています。しかし、このようなことを自治体まかせにするのではなく、国が先ず指導・援助すべきでしょう。それにつけても不思議なのは、昨日20日(日)のNHK早朝の番組[名古屋放送局]です。

朝食を食べながら、家族でテレビを見る一番の時間帯に、東北関東大震災について視聴者に知りたい情報を提供するのではなく、なんと名古屋市議選で河村市長を代表者とする「減税日本」が第1党になったことを宣伝するかのような特集番組でした。

しかも河村市長は19日、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城、福島、岩手の3県に、2011年度の市民税10%減税を実施しないことで生じた財源から3億円分の物資を緊急支援すると発表しています。

しかし、逆にいえば、河村氏の言うとおりの減税をしていれば、このような援助は不可能だったことを示しています。もし河村氏の公約どおりに進めば、埼玉県や千葉県がおこなっているような援助もできなくなるでしょう。

私はこのような減税は、日本版「ティー・パーティ」であり、結局は「金持ち減税」だけに終わること、そして自治体財政を破局に追い込むことを、以前からブログで繰り返し指摘してきました。

アリゾナ州の惨状とチョムスキー講演、そして日本
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3065751
アリゾナ州の惨劇(続)―銃乱射事件とオバマ大統領
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3422879

調べてみたら、何と名古屋市も既に財政赤字になっているのです!!これでは、河村氏が市長をつとめる限り、名古屋市も早晩、アリゾナ州に転落することは間違いないでしょう。

また、このような流れがアメリカで加速しているからこそ、教育・医療・福祉が大幅に削られ、貧困大国アメリカがその加速度をいっそう増すことになっているのです。それが私の前々回のブログでした。

揺れうごく貧困大国アメリカ―高校生までもが立ちあがる
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3533091

私は、これまで何度も、「英語を学ぶのは日本をアメリカにしないためだ、」という趣旨のことを述べてきましたが、益々その切実さは増しているように思われます(たたしそれは「会話ごっこ」や「英語で授業」では決してありません)。
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