裁判官こそ被告席へ――東京電力の旧経営陣に「無罪」判決!?
福島原発事故(2019/09/23) 東京地裁(永渕健一裁判長)、東京電力の旧経営陣(勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長)、『絶望の裁判所』 『あざみの花』

東京地裁(永渕健一裁判長)は、2019年9月19日(水)に、業務上過失致死傷罪で起訴されていた東京電力の旧経営陣3人(勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長)に無罪を言い渡した。
永渕裁判長らは、2011年3月11日に起こった東電福島第1原発の事故にたいして、被告3人に法的な責任はないと判断したわけですが、これにたいして「一点の曇りもない不当判決だ」という非難が起きて当然でしょう。
しかし、もう一つここで考えておきたいことがあります。それは、このような判決が出ることは初めから予想されたことでもあった、ということです。
なぜなら、原発が建てられ始めたとき、「原発は危険だから」という理由で、日本全国に反対運動が起き、数多くの裁判闘争がおこなわれました。が、その多くの判決で裁判官は「原発は安全だ」として建設を許可する判決を出してきました。
ところが福島第1原発の事故をみれば分かるように、このような裁判官の判断は間違っていたことが立証されました。だとすれば、福島第1原発の事故でたくさんの死者・被災者・被爆者を産みだした責任は裁判所にもあるわけです。
ですから9月19日(水)、東京電力の旧経営陣3人に有罪判決を下せば、今まで「原発は安全だ」として建設を許可する判決を出してきた裁判所・裁判官も、必然的に同時に有罪とならざるを得ません。
だとすれば、9月19日(水)に東京電力の旧経営陣3人にたいして無罪判決を下すであろうことは、初めから予想されていたことではなかったでしょうか。
だとすれば、この裁判の被告は、東電幹部ではなく、まず第一に福島第1原発の建設を許可した裁判所・裁判官であるべきではなかったのでしょうか。
瀬木比呂志『絶望の裁判所』 (講談社現代新書、元裁判官の内部告発書)という本が示すとおり、日本の裁判所はすでに絶望的なのです。いま日本が必要としているのは、裁判官を裁く裁判所ではないでしょうか。
すでに福島では甲状腺癌など二次被曝で苦しんでいる被爆者・子どもたちが着実に増えています。そのことを大手メディアは正しく伝えていません。原発事故の現場で働く労働者の間で被爆死するひとたちの実態も報道されていません。
幸いなことに前回のブログでも紹介したように、『東京五輪がもたらす危険』という本が緑風社から9月13日に発売されました。これを読めば福島における二次被爆の実態がはっきりと分かります。
ところで、広島や長崎で原爆投下の直後に被爆したひとの手記は広く知られていますが、原爆投下のあとに知人や親戚を訪ねて二次被爆したひとの手記は、それほど知られているとは言えません。
そこで私事になりますが、私が頼まれて英語に翻訳した絵本をここで紹介したくなりました。絵本『あざみの花』は、原爆が投下された後の広島を訪れた母親が、二次被爆したあとにたどった悲惨な日々を、娘の視点から語ったものです。
原本は2017年に出版されたものですが、出版元の長周新聞社から「この絵本を英訳して外国人にも知らせたいのですが誰か適当なひとがいないでしょうか」とメールが届いたので、研究所でプロジェクトチームをつくって取り組むことにしました。
最初は英訳本として出版されるものと思っていたのですが、最終的には和英対訳の絵本となりました。出来上がったものを見ると、表紙も一新され、もとの絵本よりも読みやすい体裁になったので、この方が結果としてはよかったか、と思いました。
それはともかく、これを読んでいただければ、福島で二次被爆したひとたちが今後どのような将来を生きることになるのか、その一端を暗示してくれる本としてお役に立てるのではないかと考えています。
以下は長周新聞社から届いた反響の一部です。
寺島隆吉先生
先日は『あざみの花』の普及について的確にお答えできず、ご心配をおかけし申し訳ございませんでした。
広島の「原爆と戦争展」では、10冊ほど普及されていました。うち外国人は2人でした。平和公園での展示(販売不可が条件)では、見本を読んだ外国人から、新鮮な感動が寄せられています。
あるアメリカ人(若い女性)は「原爆については建物が崩壊するイメージはあったが、この本は、被爆した家族や人の内面から原爆をとらえることができる」と語っていました。これは今のところ、外国人からの共通した反響だといえます。
また、広島の「原爆と戦争展」展示会場で『あざみの花』を知って、後で長周新聞社に購入を求めてきた人もいます。広島の書店:丸善・弘文館では書棚に縦積みで展示しています。
取り急ぎ、簡単な連絡のみで、失礼します。
追伸)ご存じかとも思いますが、アマゾンの感想に「後世に、そして世界で読み継がれたい本」として次のようなものがありました。
<追記>
ウィキペディアは、勝俣恒久元会長に関するエピソードとして、「2013年には、アラブ首長国連邦のドバイの高級マンションで暮らしていると報じられた」と書いています。その出典として下記のURLをあげています。
http://taishu.jp/politics_detail647.php


東京地裁(永渕健一裁判長)は、2019年9月19日(水)に、業務上過失致死傷罪で起訴されていた東京電力の旧経営陣3人(勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長)に無罪を言い渡した。
永渕裁判長らは、2011年3月11日に起こった東電福島第1原発の事故にたいして、被告3人に法的な責任はないと判断したわけですが、これにたいして「一点の曇りもない不当判決だ」という非難が起きて当然でしょう。
しかし、もう一つここで考えておきたいことがあります。それは、このような判決が出ることは初めから予想されたことでもあった、ということです。
なぜなら、原発が建てられ始めたとき、「原発は危険だから」という理由で、日本全国に反対運動が起き、数多くの裁判闘争がおこなわれました。が、その多くの判決で裁判官は「原発は安全だ」として建設を許可する判決を出してきました。
ところが福島第1原発の事故をみれば分かるように、このような裁判官の判断は間違っていたことが立証されました。だとすれば、福島第1原発の事故でたくさんの死者・被災者・被爆者を産みだした責任は裁判所にもあるわけです。
ですから9月19日(水)、東京電力の旧経営陣3人に有罪判決を下せば、今まで「原発は安全だ」として建設を許可する判決を出してきた裁判所・裁判官も、必然的に同時に有罪とならざるを得ません。
だとすれば、9月19日(水)に東京電力の旧経営陣3人にたいして無罪判決を下すであろうことは、初めから予想されていたことではなかったでしょうか。
だとすれば、この裁判の被告は、東電幹部ではなく、まず第一に福島第1原発の建設を許可した裁判所・裁判官であるべきではなかったのでしょうか。
瀬木比呂志『絶望の裁判所』 (講談社現代新書、元裁判官の内部告発書)という本が示すとおり、日本の裁判所はすでに絶望的なのです。いま日本が必要としているのは、裁判官を裁く裁判所ではないでしょうか。
すでに福島では甲状腺癌など二次被曝で苦しんでいる被爆者・子どもたちが着実に増えています。そのことを大手メディアは正しく伝えていません。原発事故の現場で働く労働者の間で被爆死するひとたちの実態も報道されていません。
幸いなことに前回のブログでも紹介したように、『東京五輪がもたらす危険』という本が緑風社から9月13日に発売されました。これを読めば福島における二次被爆の実態がはっきりと分かります。
ところで、広島や長崎で原爆投下の直後に被爆したひとの手記は広く知られていますが、原爆投下のあとに知人や親戚を訪ねて二次被爆したひとの手記は、それほど知られているとは言えません。
そこで私事になりますが、私が頼まれて英語に翻訳した絵本をここで紹介したくなりました。絵本『あざみの花』は、原爆が投下された後の広島を訪れた母親が、二次被爆したあとにたどった悲惨な日々を、娘の視点から語ったものです。
原本は2017年に出版されたものですが、出版元の長周新聞社から「この絵本を英訳して外国人にも知らせたいのですが誰か適当なひとがいないでしょうか」とメールが届いたので、研究所でプロジェクトチームをつくって取り組むことにしました。
最初は英訳本として出版されるものと思っていたのですが、最終的には和英対訳の絵本となりました。出来上がったものを見ると、表紙も一新され、もとの絵本よりも読みやすい体裁になったので、この方が結果としてはよかったか、と思いました。
それはともかく、これを読んでいただければ、福島で二次被爆したひとたちが今後どのような将来を生きることになるのか、その一端を暗示してくれる本としてお役に立てるのではないかと考えています。
以下は長周新聞社から届いた反響の一部です。
寺島隆吉先生
先日は『あざみの花』の普及について的確にお答えできず、ご心配をおかけし申し訳ございませんでした。
広島の「原爆と戦争展」では、10冊ほど普及されていました。うち外国人は2人でした。平和公園での展示(販売不可が条件)では、見本を読んだ外国人から、新鮮な感動が寄せられています。
あるアメリカ人(若い女性)は「原爆については建物が崩壊するイメージはあったが、この本は、被爆した家族や人の内面から原爆をとらえることができる」と語っていました。これは今のところ、外国人からの共通した反響だといえます。
また、広島の「原爆と戦争展」展示会場で『あざみの花』を知って、後で長周新聞社に購入を求めてきた人もいます。広島の書店:丸善・弘文館では書棚に縦積みで展示しています。
取り急ぎ、簡単な連絡のみで、失礼します。
追伸)ご存じかとも思いますが、アマゾンの感想に「後世に、そして世界で読み継がれたい本」として次のようなものがありました。
原爆は絶対悪だということを改めて思い知らされる1冊であり、後世にそして各国で広く読み継がれてほしい一冊である。
被爆した母の最期までの様子を実の娘が書いた文章であるが、実の娘だからこそ書けた文章と表現である。また、心に強く迫ってくるのは父の姿である。妻を介護する夫としての深い愛情と苦悩が痛いほど読み手に伝わってくる。内容は実際に手にとって読んでもらいたいと思います。
翻訳も大変すぐれた英文であり、同じページ上で原文の下に載せられているため日本文と比較して読めることも大変ありがたい。すぐれた英訳によって広く世界で読み継がれることが可能になったことが嬉しい。英語学習の教材としても広く用いられることを願います。
監修者の寺島隆吉氏、翻訳者の山田昇司氏と寺島美紀子氏は、寺島メソッドで名著を数多く世に問うてきた方々である。また、寺島隆吉氏、美紀子氏はチョムスキー等の翻訳も数多く出版されている。「あざみの花」を読んで、その方々が英訳することを決めた理由がよく分かる。また、そうした方々による英訳であるが故に、分かりやすく優れた翻訳になっていると納得させられる。
この本を手にとって読まれること、そして周りの人に紹介され、より多くの人が原爆被害の実相を心に刻む機会になることを願う。それだけの内容をこの本はもっている。
<追記>
ウィキペディアは、勝俣恒久元会長に関するエピソードとして、「2013年には、アラブ首長国連邦のドバイの高級マンションで暮らしていると報じられた」と書いています。その出典として下記のURLをあげています。
http://taishu.jp/politics_detail647.php
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