放射能汚染地図(1)―福島の子供たちを救うことが日本を沈没から救う

この街で子どもたちを学ばせるつもりですか?

チェルノブイリ原発から4キロメートルのプリピャチ市の空間線量=3~4マイクロシーベルト/時
福島市で学校を通常通り開校し、子どもたちを学ばせていいと定めた基準値=3・8マイクロシーベルト/時


心臓バイパス手術をしてから、やがて1年が経とうとしているのですが、手術後の傷跡の痛みが取れず、今日も病院に行ってきました。

今も相変わらず食事をしたあとは30-60分くらいベッドで横にならないと次の仕事ができません。そんなわけで、ブログを書くためにいまベッドから起き上がってきたところです。

いつもなら10日に1回くらいしか書けないし、それ以上の頻度で書こうとすると、身体に良くないので、自制していたのですが、今週末に再放送がある番組について、どうしても早めにお知らせしておいた方が良いと思ってパソコンに向かい始めました。

というのは、いつもブログを読んでいただいている方から次のようなメールをいただいたからです。(このようなメールをいただくと、書いている方も元気が出てきます。本当に有難いことです)。
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(前半部省略、「既に御存知の情報かも知れませんが、より多くの方に知っていただきたいと思いました」という私のメールに対する返信の部分からのみ引用します。)
 いえいえ、知っていたものも一部ございましたが、詳しくは知らないものばかりで、いつも先生の情報収集能力には感嘆させられます。汚染地図自体は見ておりましたが、きっこさんの解説を読んでその深刻さに驚き、また揚水発電のことも聞いたことはありましたが、ジャピック計画のようなことは思いもよらないことでした。
 一昨日のNHKのドキュメント『ETV特集:ネットワークで作る放射能汚染地図、福島原発事故から2ヶ月』(20日金総合で午前1:30、28日土教育午後3:00で再放送)が話題になっておりましたのでYouTubeで見ました。
http://www.youtube.com/watch?v=m-KN6GPX3XQ&feature=related
 ここに出てくる木村博士の研究者魂、本当に感嘆致しました。またこれを見て、学校での20ミリはやはり誰が決めたのか疑問になったのとNHKにも、ニュースを伝える外向けの顔以外にも、真実に迫ろうというドキュメント制作者もいることを知って、少しは公共放送としての体面が保てたのでは、と思いました。
 原子力の専門家ではなくても、とにかく、より原子力の恐ろしさを知った今は全面停止にしていくように声を上げて求め続けることが重要と思いました。
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上記にもあるとおり、YouTubeでも見ることができるのですが、「細切れ」で見なければなりませんし、インターネットの接続料もかかります。ですから再放送を見るのが一番だと思います(録画できる人はぜひ録画を!)。

このドキュメントを見ると、「風評被害」という名の「風評被害」を流してきた、政府・東電・大手メデイアの責任は、本当に重大なものだということが分かってもらえると思います。

私は本ブログで何度も「学童疎開」「自主避難ではなく」「政府自治体による集団疎開」の緊急性を何度も訴えてきたつもりでしたが、そのことの正しさを、この映像で改めて確認することができました。

政府が正しい情報を流し、一刻も早く避難指示を出していれば、大量被曝しなくても済んだ人が如何に多かったことか!! 
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私は、最近のNHKの「かつてのソ連における国営放送と全く変わらない報道ぶり」に嫌気がさして、ほとんどNHKの報道を見なくなりました。だから「地デジ」移行を機会にNHKとは縁を切り、受診料も払わないつもりでいました。

しかし上記の番組を見て、全くひどいNHKニュース報道の裏で、このような「番組をつくる闘い」「それを報道する闘い」が続けられていたことを改めて知ることができました。

というのは、原発番組をつくることにたいして強い圧力があったことをこの番組をつくったディレクターの一人である七沢潔氏は、かつて次のように語っていたからです。
http://sci-tech.jugem.jp/?eid=1272

「原発の番組から足が抜けられなくなり続けていると、上司が『長いこと、テレビでこういうことをやらないほうがよい』と言われました。原発事故がたくさん起きていた時期で、東海村の臨界事故も手がけましたが、放送研究所に行きなさいということになりました」

その彼が今回どのようにしてこの番組制作に関わったかは不明ですが、放送文化研究所に籍を置きながら、脇からこの番組制作に協力したのかもしれません、しかし、もうひとりのディレクターである大森淳郎氏は今後どのような運命をたどるのでしょうか。

NHK上部の締めつけに抗して、このような番組を制作した人たちの努力と勇気に深い敬意を表したいと思いますが、大森氏がどこかに飛ばされないようにするためにも、再放送の要求をどんどんNHKに送りつけることが大切だと思います。
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<註> ここまで書いてきて、もうひとりのディレクターである大森淳郎氏の名前を確認しようとして、上記のYouTubeを覗いてみたら、既にNHKにより削除されていました。だとすれば尚更この番組の再放送を一人でも多くの人に見てもらうこと、それが無理ならそれを予約録画して一人でも多くの人に見てもらうことが必要です。
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この村で子どもたちを育てるつもりですか

チェルノブイリ事故の後、ウクライナ共和国が定めた居住禁止地域=5ミリシーベルト/年
文科省の定めた子どもの年間放射線許容限度=20ミリシーベルト/年


政府・東電やNHKを含む大手メデイアが如何に原発の真実が国民に知れ渡ることを恐れているかは、この番組に登場する木村真三氏の運命を見ても分かります。

放射線医学総合研究所の線量計測部門で研究員をしていた木村真三氏は、その後、独立行政法人労働安全衛生総合研究所に移ったのですが、原発事故が起こった直後に福島へ調査に行こうとしたら、上から(つまり厚生労働省から)圧力がかかり、現地調査をするために、辞表を提出せざるを得ませんでした。

しかし、元理化学研究所の岡野眞治博士の全面的な協力のもと(博士が独自に開発した計測機を自動車に搭載して)木村真三氏が福島県内の道路2000キロを走破して作成した放射能汚染地図は、今回の事故の深刻さをまざまざと示しています。

それにしても、このような調査を国家・東電の責任ではなく、個人や私的グループでやらなければならないということ、それどころか国家がそのような調査を圧力をかけて妨害しているという事実が、私の心を暗澹とさせます。これでは日本がしばしば非難の対象としてきた中国や北朝鮮とどこが違うのでしょうか。

それと同時に木村氏や岡野氏が、京都大学・広島大学・長崎大学の放射線観測・放射線医学を専門とする科学者達のネットワークと連係し、震災の3日後から放射能の測定を始め汚染地図を作成してきた地道な活動に、唯々、敬服あるのみです。この調査と、それを追いかけたこの番組が、必ずや日本の未来を変える起爆剤になるでしょう。

私がいま翻訳しているHoward Zinn &Anthony Arnove(編)『Voices of a People's History of the United States』も、歴史はそのような民衆の地道な闘いによって造られてきたことを、民衆の声を綴ることによって鮮やかに示していますが、今度のドキュメント番組で、そのことを改めて確認させられたような気がしています。
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<註> 思い起こせば、国家は国民を守るどころか犠牲にすることが多かったことは、あのアジア太平洋戦争が証明しています。
 敗戦間近の中国東北部(いわゆる「満州国」)で、開拓民を放置して真っ先に逃げ出したのは帝国軍隊でしたし、いわゆる「ガマ」と呼ばれる地下洞窟に逃げ込んできた沖縄県民を、米軍に見つかるからという理由で追い出して集団自決に追い込んだのも国家=軍隊でした。
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ところで、今も原発は空と海に放射能を出しながら、いつ終息するか分からない状態が続いています。その汚染地帯は雨と風、そして海流によって、福島県だけでなく日本全体に、ゆっくりと確実に広がって行きつつあります。今や神奈川県や静岡県の茶葉にでさえ放射能が検出されつつあります。

このように海も陸も汚染したまま放置しておいて、政府・東電は「風評被害」「地産地消」などと叫んできました。下記の「汚染予測」「汚染予報」を御覧ください(この予報はドイツ気象局によるものです!!なぜ日本政府ではないのですか!?)。
http://www.dwd.de/wundk/spezial/Sonderbericht_loop.gif

しかし、最近の食品売り場では農産物・海産物は産地が明記されるようになってきています。生産者を明記した農産物が売られることさえ珍しくなくなってきています。

ところが今度の事故が起きてからは、生産地を「まぜこぜ」にして売るところが出てきました。たとえば「このトマトは千葉&長崎産」などといった表示です。これでは、どこの野菜から分からず怖くて買えません。

しかし、千葉産であっても「被曝線量**マイクロシーベルト」という表示があれば、安心して買うことができます。

だとすれば、農産物についても海産物についても正しい汚染データを公表しなければ、誰も買わないどころか国民の命を危険に晒すことになります。真っ先に、その犠牲になるのは幼児・児童・妊婦などです。

したがって、いま最も求められているのは、全国に放射能の測定器を置き、毎日そのデータを公表することです。天気予報で「洗濯指数」や「花粉指数」を出すくらいなら、「放射能汚染指数」を先ず出すべきでしょう。そのようなデータを出すことなく「風評被害」のみを叫び続けるならば、今後だれも政府の言動を信じなくなるでしょう。

(イソップ寓話「狼と少年」を思い出してください。)
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また、正確な汚染データを公表しないかぎり、「農産物」「海産物」「汚染部品」「汚染製品」の買い手が(国内どころか国外からも)全くなくなり、日本経済は壊滅的打撃を受けるでしょう。農業や漁業を救うのは「汚染された農産物や海産物」を食べさせることではありません。

賞味期限の切れた食品や中国の毒入り餃子を売ったという理由で業者を袋だたきにした人たちは、現在の事態を何と言うのでしょうか。口蹄疫にかかった牛を何千頭(何万頭?)も殺してきた政府・自治体の役人たちは、そのとき「地産地消」を叫んだのでしょうか。

今この事態を放置すれば、どこにも住めなくなるし、どこの食品も食べることができなくなります。汚染された農産物や海産物を国家が買い上げ、それを他の地方に拡散させないこと、汚染地の農漁民には別の生計の道を提示することなど、全く別の方法を考えるべきです。

さもないと下記のグラフが示すように、日本経済は壊滅的打撃を受けるだけでなく、「長寿国世界一」を誇ってきた日本は、確実に死滅への道を歩み始めるでしょう。そんなことを考えると、英語教育をどうするかなどは枝葉の問題ではないかと思えてきて、仕事が手につかなくなります。

平均寿命が1994年に急落したロシア国民
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/8985.html

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ロシア国民の平均寿命が急落した原因には、ソ連が崩壊し,今まで保障されていた社会保障が得られなくなり、「教育も医療も全て自分持ち」という「剥き出しの資本主義」、特に小泉・竹中コンビが日本にも導入したと同じ「弱肉強食の新自由主義経済」がロシア国民に襲いかかったことが大きな要因になっていることは間違いないでしょう。

しかし、チェルノブイリから出てきた放射能がドイツやハンガリーなどヨーロッパにも大きな被害を与えたことを考えると、ロシアに降り注いだ放射能も平均寿命が急落した一つの大きな原因だと私は思っています。チェルノブイリ原発事故がヨーロッパに与えた影響については下記を御覧ください。

ソ連・ヨーロッパの放射能被曝評価 瀬尾健(1986)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No110/keisemi1986seo.pdf
ヨーロッパで発見された「危険な放射能汚染食品」
(広瀬隆・広河隆一1991『悲劇が進む、新版四番目の恐怖』講談社文庫:80-81頁)
http://www42.tok2.com/home/ieas/Dangerous_Foods_found_in_Europe.pdf

いま庶民が最も求めているのは、手頃な値段で放射能が測れる「線量計」です。ところが昨日5月23日の参議院行政監視委員会でソフトバンクの孫正義社長が指摘したように、政府は「この線量計500台を税関で停めたまま」にしています。政府が正確なデータを出さないのであれば、それを自分で調べたくなるのは当然ですが、それも政府は許そうとしないのです。

食品の安全など、自分で自分の体を守る方法については、下記の武田邦彦氏のブログが便利です。かつて「日教組反対」「原発推進派」であった武田氏ですら、真剣に子供や妊婦のことを考えているのに、政府・文科省が全く耳をかそうとしない姿勢は、全く異様としか言いようがありません。
http://takedanet.com/「武田邦彦ブログ」

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また先日のDemocracyNow!(2011/05/16)では、下記のような海洋汚染について報道していました。

Japan Expands Exclusion Zone around Damaged Nuclear Plant, Greenpeace Calls for Radiation Investigation
日本政府が損傷した原子力発電所周辺の「立ち入り禁止区域」を拡大、グリンピースは放射能の調査を要求
http://www.democracynow.org/2011/5/16/headlines

この記事によると、「東電は3000トンもの高濃度汚染水を海洋に流し続けているにもかかわらず、汚染度を調査しようとすると、それを日本政府が妨害する」とグリンピースの放射能専門家Ike Teuling氏は厳しく批判しています。

これでは、海外から海洋汚染国家として厳しい批判を浴びることは必至です。既に「海洋汚染テロ」ということばすら聞こえてきています。日本政府が認めたところですら「驚くべき高濃度で汚染された海藻」(radioactive seaweed with alarming high levels of contamination)が発見されているのですから。

  Japanese authorities are widening the exclusion zone around the crippled Fukushima Daiichi nuclear power facility as radiation levels remain high more than two months after the nuclear disaster.
  Meanwhile, the Tokyo Electric Power Company has revealed substantial damage occurred to the reactor cores at reactors 2 and 3 of the nuclear complex.
  Last week TEPCO acknowledged the fuel inside reactor 1 had apparently melted down, creating a hole in the chamber causing a leak of more than 3,000 tons of highly contaminated water.
  Greenpeace is urging Japan to start an investigation after high levels of radiation were found in seaweed off the coast of Fukushima. Ike Teuling is a radiation expert at Greenpeace.
Ike Teuling, Greenpeace radiation expert: "Although the Japanese government gave us only very limited permission to do our marine research, we did find radioactive seaweed with alarming high levels of contamination."

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私は先に、「そんなことを考えると、英語教育をどうするかなどは枝葉の問題ではないかと思えてきて、仕事が手につかなくなります」と書きました。しかし日本が海外からどのような眼で見られているかを知らせることも、英語に関わるものの大きな仕事ではないkと思い直しています。

だとすれば、いま学校教育で必要なのは、日本では使う機会がほとんどなく「笊水(ざるみず)効果」しかないような「会話ごっこ」「英語で授業」にうつつを抜かすのではなく、きちんと「読み」「聞き」できる英語力こそ生徒に付けてやらねばならない学力だと、改めて思うのです。

かつて日本は「HIROSHIMA」と「憲法9条」でその名を世界に知られてきましたが、今や日本は「FUKUSHIMA」として、その名を知られつつあります。

Democracy Now!を視聴していても、上記の記事にもあるとおり、「Fukushima Dai-ichi」が当たり前のように発音されています。今や「TUNAMI」が英語になっているのと同じような感覚で、「FUKUSHIMA」も英語になっていくのかも知れません。

FUKUSHIMA ということばで,直ぐ頭に浮かぶのは、緊急出版された『FUKUSHIMA、福島原発メルトダウン』 (広瀬隆、朝日新書、2011/5/13) です。これは同じく緊急出版された『暴走する原発、チェルノブイリから福島へ、これから起こる本当のこと』( 広河隆一、小学館、2011/5/20)と供にぜひ読んで欲しい本です。

これらは、福島で何が起きたのか、いま何が起きているのか、これから何が起きるかを知る絶好の本だと思います。また、後者の帯には「頼む。一緒に子供たちを救おう」という広瀬隆氏の推薦と呼びかけのことばが大きく書かれていますが、その彼らの怒りと叫びが、本当に胸に迫ってくる本です。

<註> また広瀬隆&広河隆一氏が責任編集したフォトジャーナリズム月刊誌『DAYS JAPAN』も、ゆとりのある方は、是非とも手に取ってみてほしい月刊誌です。
 その5,6月号の特集「暴走する原発」「日本の原発:浜岡から脱原発へ」は、高濃度汚染地帯に危険を犯して取材を敢行し真実を伝えようとしてきた人間による、生々しい写真に満ちています。 いま私にとって気になるのは広河氏の内部被曝の線量です。
 (実は今回のブログでカット代わりに使わせてもらったのは、『DAYS JAPAN』から「是非みなさんに知らせて欲しい」と呼びかけのあった写真です。)
http://daysinternationaljp.seesaa.net/category/10130220-3.html
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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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