歌と映像で学ぶ私の原発学習(1) ― アメリカによる原発導入工作、CIAのAgentだった正力松太郎、そして隠されていた核兵器開発

総合文化、国際教育、平和研究 (2011/07/17)


前回のブログを書いてから既に10日以上も経ってしまいましたが、この間、いま翻訳をしている『Voices of a People's History of the United States』の索引づくりに追われたり、甲南大学で頼まれた講演の準備をしていて時間が取られ、さらに講演が終ったあと少し疲れが出たのか、2日ほどベッドでぶらぶら寝ていないと次の仕事ができない状態でした。

ですからブログで書きたいことが山積していても体が動かない状態でしたので、取りいそぎ出版社の編集担当者に送ったメールや私の主催する研究会の「掲示版」に載せたメール原稿を次に紹介し、次のブログへの「つなぎ」としたいと思います。英語教育だけでなく現在の情勢にも関連したことを述べているので、これでお許しいただければ幸いです。

まず最初は出版社の編集者あてのものです。
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○○出版社、**さん

先に送っていただいた「カタカナ語の不統一」について「訂正版」ができましたので送ります。また、これに併せて「索引」のカタカナ語不統一も直しましたので、これも一緒に送ります。

初校をお送りいただくときに、カタカナ語不統一の訂正版を送っていただくことが可能であれば、そのほうが校正の際、内容だけに集中できますので有り難いのですが・・・

(ただし「カタカナ語の不統一」で出処のページが見つからないものがありましたので、それには ? の記号を付けておきました。これは初校のときに見つけたら英語の綴りを見た上で直すつもりです。)

これと併行して、「人名」だけでなく「事項」についても、索引の第1案をつくってみました。それも「人名」索引に混在させてありますが、最終的には別項にした方がよいと思っています。

なおハワード・ジン『民衆のアメリカ史』(明石書店)では 、[v]音を「ヴ」と表記しているのですが、家人と相談した結果、[v]と[b]の区別はせずに全て「バビブベボ」と表記することにしました。

というのは家人の大学での体験によれば、今の若者は漢字が読めなくなっているだけでなく、「ヴ」と書かれていても、それを[v]音の表記だと分かりませんので音読できないからです。

また日本語では[l]と[r]も区別せず全て「ラリルレロ」としていますので、[v]と[b]だけを「ヴ」と「ブ」で区別するのも不自然だと考えました。

さらに言えば、「ヴェトナム」「ヴィエトナム」を「ベトナム」と表記するのが普通になっていますので、そのような意味合いも込められています。

人名や地名をなるべく原音に近い表記にしたいという強い誘惑がありますが、現在の日本にとって重要なのは、原音に近い表記にするよりも「コンプライアンス」「ハザードマップ」などという一般庶民にとって意味不明なカタカナ語が多すぎることだと考えています。

これはカタカナ表記を氾濫させることによって間違った英語発音を日本人に定着させる危険性があるだけでなく、(拙著『英語教育が亡びるとき』明石書店でもふれたように)庶民に意味不明な日本語を氾濫させ、政府が知られたくない情報を隠蔽する働きをしますので、極めて重大な問題を孕んでいるように思います。

(ところが、私が抗議してもニュースその他でカタカナ語を乱発して止めないNHKが、福島原発事故では一貫して「炉心溶融」という漢語を使い続け、決して「メルトダウン」というカタカナ語を最近までは絶対に使おうとしませんでした。情報操作(メディア・コントロール)の極地ですね。)

以上、索引をつくりながら思いついたことを列挙してみました。ご意見をいただければ幸いです。

早々

<追伸> 東京も汚泥から高濃度の放射能が発見されるなど、ますます日本全土が汚染されつつあるようで、恐ろしい限りですね。

だとすれば福島在住のひとたちはどんな思いで毎日を生きているのでしょうか。そんなことを思いながら下記のブログを書きました。時間があれば覗いていただければ幸いです。

放射能汚染地図(5) ―福島からの便り 「フクシマ県民かく被曝せり、国には後世、県民200万の健康管理に御尽力をたまわらんことを・・・」
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3752426

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次は私の主催する研究会「掲示版」に投稿したものです。これを読んでいただければ、日本の原発が単に儲け目的のために企業が強引に推進したものではなく、その裏に巨大な力が働いていたことを知っていただけると思います。

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**さん、投稿を有難うございました。

投稿に指摘されている「アメリカによる原発導入工作、CIAのAgentだった正力松太郎=読売新聞・日本テレビ社主の果たした役割」については、K大学に招かれて講演した際にも若干は話しましたが、時間がなくて詳しくは紹介できませんでした。

詳しくは下記の研究室HPに講演資料として載せてありますので、「メディア・コントロールに抗するちからを培う資料」として、時間があるときに覗いてみていただければ幸いです(なお鹿児島講演では、この資料を元に、もう少し詳しく話すつもりです)。

講演「国際理解教育の課題」要旨
http://www42.tok2.com/home/ieas/lecture_resume_konan_university20110702.PDF
資料A 「ガルトゥング:暴力の類型」
http://www42.tok2.com/home/ieas/lecture_handout_galtung_type_violence.pdf
資料B 「HIROSHIMAの国がなぜ原発推進なのか」
http://www42.tok2.com/home/ieas/lecture_handout_konan_university20110702.pdf

(以下、省略)

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上記の「資料B」では、NHKで長くチェルノブイリ事故を取材し、その危険性をドキュメンタリー番組で訴え続けてきた七沢潔氏の研究を詳しく紹介しました。

七沢氏は、チェルノブイリルなどの原発事故をドキュメンタリー化にしようと調査し続けた結果、「これ以上、原発に深入りするな」という理由でNHK放送文化研究所に左遷されました。

しかし、氏はその機会を逆用して、 研究所の資料を駆使しながら「原子力50年、テレビは何を伝えてきたか」というテーマで、メデイアが原発をどう報道したかを詳細に研究しました。それが以下の報告書です。

七沢潔(2008)「原子力50年、テレビは何を伝えてきたか」(NHK放送文化研究所年報、第52集)
http://www.nhk.or.jp/bunken/resarch/title/year/2008/pdf/007.pdf

この報告書のなかで特に「米国による原発導入工作、CIAの密使(agent)だった正力松太郎=読売新聞社主」の部分だけを抜き出してまとめたものが「資料B]です。
http://www42.tok2.com/home/ieas/lecture_handout_konan_university20110702.pdf

このなかで、七沢氏は、有馬哲夫(2006、2008)などの研究をもとに、正力がPODAMというコード名を持つCIAのAgentだったという興味深い事実も紹介しています。

正力は、「原爆投下=大量殺戮」を理由に日本で反米感情が高まらないよう、新聞だけでなくテレビの宣伝力も使って工作する任務を負わされたのでした(逆に、広島・長崎の現状、被爆者の写真・映像は長い間、日本人には知らされませんでした)。

とりわけアメリカのビキニ環礁における水爆実験で第5福竜丸の乗組員が被曝し、お母さん方が中心になって始めた署名運動が爆発的な広がりを見せ、日本中で「反核」「反米」の機運が大きく盛り上がろうとしているときでしたから、これは急務とも言える仕事でした。

正力がアメリカに支援されて日本テレビというテレビ局を開設できたのも、そのような「対日心理作戦」を実行するためでしたし、それは同時に「アメリカ方式の技術標準を採用させ,関連設備や映像で日本のアメリカへの依存度を高めるため」でもありました。

これ以上詳しく説明していると、また長くなりすぎますので、詳しくは上記「資料B」を御覧ください。

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また、この「資料B」には、第5福竜丸事件で日本中が騒然としている「ドサクサ紛れ」をねらって、当時の若き中曽根康弘氏が2億3500万円の原子炉建設調査費の予算要求を提案し、ほとんど審議らしい審議もせず、その予算を通してしまったことも載せてあります。

しかも2億3500万円という予算は「ウラン235」をもじった数字だったというのですから、ふざけた話ですが、このことが現在の悲惨なFUKUSHIMAを造り出したことは、決して忘れてはならないことでしょう。

ところで、中曽根康弘氏が原子炉建設調査費の予算要求を出したのは、単に中曽根氏がCIAのAGENTだった正力氏とつながっていただけでなく、その裏で「原子力の平和利用」を隠れ蓑にして核兵器開発をねらっていたのではないかとも言われています。

その証拠に、早くも1969年版の防衛庁の安全保障調査会の報告書に、「東海原発の運転を発電所から変更すると年間240キロの軍事の予算要求用プルトニウムがつくれる。発電炉のまま運転しても、炉心の周辺部分から6~10キロの軍事用プルトニウムができる」と正直に書いてあるそうです。

これらの事実も「資料B」に載せてありますので、詳しくはそちらを御覧ください(日本政府が北朝鮮の「原発の平和利用」をヒステリックに非難するのも、「亀は甲羅に似せて穴を掘る」の類(たぐい)かもしれません)。

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アメリカによる「原発の導入工作」は、既にNHKが1994年に「現代スクープ・ドキュメント」として放映しているのですが、 今と違って当時のNHKは、こんなものをつくる力量、こんなものの放映を許す度量もあったのですね。

原発導入のシナリオ 〜冷戦下の対日原子力戦略 (NHK現代スクープ・ドキュメント、1994)
http://video.google.com/videoplay?docid=-584388328765617134&hl=ja

なお上記とほぼ同じことを、20世紀米国史の専門家ピーター・カズニック(アメリカン大学歴史学准教授)というアメリカ人が書いていることを知りましたので、これも以下に紹介しておきます。

ピーター・カズニック(2011)「原発導入の背景に広島・長崎の意図的な忘却と米国の核軍拡」
http://www1.odn.ne.jp/hikaku/kaku-info/one/110413.htm

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ところで、七沢潔氏には『原発事故を問う―チェルノブイリから、もんじゅへ』(岩波新書1996)という著書があります。

この本を読むと、当時のソ連政府が事故を小さく見せようと必死に画策するようすが克明に追跡されていて、まるで現在の日本政府を見ているような錯覚を起こさせます。

また、同書では、そのソ連政府の画策にIAEAが協力するようすも忠実に再現されていて、これも現在のIAEAと日本政府の姿に瓜二つで、極めて興味深いものがあります。

というのはIAEAも今回の福島原発事故は「想定外の大津波によるもの」という点で、日本政府とぴったり口裏を合わせているからです。元々IAEAは原発推進の国際組織として結成されたものですから、当然と言えば当然ですが。

ただ当時のソ連政府と現在の日本政府が根本的に違っているのは、当時のソ連政府には1000台以上のバスを用意して国民を「集団疎開」させましたが(子どもたちの多くをキエフなどに「保養」「学童疎開」も)、日本政府はいまだに福島市のような高濃度の汚染地帯に国民を「拉致」したまま、政府の責任で「集団疎開」させるつもりがないことです。

政府は「集団疎開」させるお金を惜しいと考えているのかもしれませんが、あと数年後あるいは多くの被曝患者が出てきた場合、その責任をどう取るつもりなのでしょうか。あるいは裁判闘争で敗訴した場合にかかる損害賠償がどれほど巨大な額になるのかを考えてみたことがあるのでしょうか。

(ちなみに旧ソ連の場合は、被爆者の治療費は全て無料だそうです。だとすれば、いま避難させない場合、発病してからの治療費の方が高くつくのではないでしょうか。)

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今回のブログは、私の体調が良くないので簡単に済ませるつもりでしたが、書いているうちに、どうしても訴えたいことが次々と頭に浮かんで来て収拾がつきません。そこで最後に研究会「掲示版」に載せたメールをあと一つだけ紹介して終わりにしたいと思います。

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研究会員の皆さんへ
鹿児島講演についてKUさんから連絡がありましたが、今のところ次のようなテーマで話をしたいと考えています。東日本は既に汚染地帯と化していますので、関東以北の皆さんも「家族・お子さんの転地療養」を兼ねて鹿児島や屋久島などへ保養と旅行にでかけててみるというのはいかがでしょうか。

午前:テーマ「生活指導から教科指導へ ― TMメソッドが目指す教育原理・教育技術」

先日の掲示版でSJさんから、「昔、大修館の英語教育に“同僚性を高める”という特集があったのですが、あまり、役に立たずかえってがっかりしました」といった悩みが書かれていました。

それに呼応してMYさんやJSさんからも同じようなことで悩んでいる旨の投稿がありました。このように現場では英語以前の問題に悩まされている方が少なくありません。服装指導や化粧指導をめぐる生徒との軋轢も同じことです。

このような問題については既に拙著『英語にとって教師とは何か』(あすなろ社/三友社出版)で、かなり詳しく論じたつもりでしたが、新しい指導要領「英語で授業」が出されてから、現場はますます複雑になっているようです。

 そこで当日は、参加者の皆さんから悩み・疑問を出していただいた上で、それに答えるかたちで、「教師というものの生き方考え方」を、「私の教育原理」(『英語教育原論』pp.57-61)を踏まえて話をしたいと思うようになりました。

そして同時に、「記号づけ」「リズムよみ」などのTMメソッドが、そのような「同僚性」や「生徒指導」の問題にも、いかなるかたちで解決のヒントを提供してきたかも、具体的な体験を元にお話しできればと思っています。

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午後:テーマ「ことばの教師としてメディア・リテラシーのちからを如何に培うか」

先日、WMさんから、「△△大学の先生の原発関連のお話の中で、“「Russia Todayは良いですよ”とお勧めしていただきました。Democracy Now!、アルジャジーラ、アメリカ主要新聞の見出しだけ目を通したとしても1時間は時間がかかってしまいます。ソースの見直しを迫られている気がします」という投稿がありました。

そして、これに続けて、「前任校の英語教科書の中でMedia Literacyを扱ったレッスンの中に“日本人は平均して一日三時間テレビを見ている”という記述があったことを思い出しました。3分の1の時間で良質なインプットが得られているのであれば1時間といえども良い方なのかもしれません」と書かれていました。

そこで午後からは「3・11福島原発事故」を素材にしながら、メディア・コントロールに抗して如何にメディア・リテラシーの力を培うかを考えてみたいと思っています。

というのは、私自身は高校教師だった頃、能登半島の志賀原発が近くだったこともあり、それなりの学習をしてきたつもりでしたが、「3・11」以降あらためて原発学習をしてみて、自分がいかに無知だったかということを改めて思い知らされたからです。

その学習の一端は下記の研究室HP「福島原発資料」に結実しています。ここには私が読んだり見たり聞いたりしたもので皆さんに「ぜひ読んで欲しい」「ぜひ視聴してほしい」と思ったものだけを載せてあります。
http://www42.tok2.com/home/ieas/fukusima.html

この体験を通じて思うのは「メディア・コントロール」に抗する力を培うためには、「やみくもに何でも読めばよいとわけではない」ということです。自分の軸足・土台を決め、それから芋づる式に読みが広がっていくという読み方をしない限り、「つまみ食い」しながら多くを読む方法は、逆に「メディア・コントロール」の網に絡め捕られてしまう恐れがあるからです。

これは英語教育の理論学習・実践研究についても同じことが言えるように思います。私の場合は三浦つとむという言語学者や大西忠治という実践家が出発点になり、その後はチョムスキーが常に軸足・土台になってきましたが、当日はそんなことを例にしながら、私の原発学習がどのような軌跡を描いて現在に至っているのかを話したいと思っています。

その中で「高木仁三郎」「小出裕章」「武田邦彦」「木村真三」「広瀬隆」「広河隆一」など諸氏の生き方・考え方の類似性・相違性・問題点、あるいはWHO、IAEA;ABCC、RERF;ICRP、ECRR、さらにはCIAや正力松太郎といった機関や人物が果たしてきた役割なども語りたいと考えています。

それは同時に今の福島を語ることになりますし、私の驚きと発見の学習史を皆さんと共有することになると思うからです。

<註>
WHO世界保健機関(World Health Organization)
ABCC原爆傷害調査委員会(Atomic Bomb Casualty Commission)
RERF放射線影響研究所(Radiation Effects Research Foundation)
IAEA国際原子力機関(International Atomic Energy Agency)
ICRP国際放射線防護委員会(International Commission on Radiological Protection )
ECRR欧州放射線リスク委員会(European Committee on Radiation Risk )

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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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