歌と映像で学ぶ私の原発学習(2)―南正人「原発小唄」、黒澤明「赤富士」(「私たちをこんな目にあわせた連中を“縛り首”にしてやりたい」)、そして広瀬隆氏らによる刑事告発へ


原発小唄、南正人
http://protestsongs.michikusa.jp/japanese/genpatsukouta.html

南正人(みなみ・まさと)は1944年生まれの歌手です。生まれた年が何と私と全く同じ!!驚きました。

偶然に発見したこの歌ですが、聞いてみて驚きました。チェルノブイリ事故の後に発表されたこの歌、その歌詞に出てくるチェルノブイリの恐ろしい事実が、そのまま今の日本、今のFUKUSHIMA を痛々しいまでに映し出しているではありませんか!!

たった5分の歌ですが、聞き終わって思わず溜息が出てしまいました。その素朴な歌いぶりが却って歌詞の鋭さを浮き上がらせ、私の胸を深く衝くものがありました。ぜひ聞いてみてください。

(斉藤和義「ずっとウソだった」と共にフォーク・ソングの古典になるかも知れません。)

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この「原発小唄」が作られたとき原発は38基でしたが、今は54基にまで激増しています。私たちは南正人の嘆きや怒りをどこに捨ててきたのでしょうか。

その彼の切々たる歌の残像・残映が耳から消えないうちに、ぜひ視聴していただきたい映像が二つあります。

放射能で広がる異変~子どもたちに何が起きているか
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1167

以下は、この動画=インタビューを制作した独立メディア「OurPlanet」による解説です。

<福島第一原発事故から4ヶ月。今、福島県や関東全域で、体調の異変を訴える人が増えています。鼻血や下痢、倦怠感。
 OurPlanetTVに寄せられた500件の異変報告を集計すると、子どもに限らず幅広い年代で、普段は見られない症状が出ていることが明らかになりました。
 これらの原因は放射能なのかー。20年以上、チェルノブイリの子どもたちを支援してきたNPO法人「チェルノブイリのかけはし」代表の野呂美加さんをゲストに迎え、低量被ばくによる健康障害について考えます。>

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この「鼻血・下痢・倦怠感」や「倦怠感」(いわゆる「原爆ブラブラ病」)は、次の映像と重ね合わせていただければお分かりのように、広島で「内部被曝」をした人たちに見られる典型的症状です。

被曝医師・肥田舜太郎さんが語る「内部被曝」の真実 (動画25分)、2011/04/24、)
http://www.youtube.com/watch?v=tCV3beH_IWI

これは去る4月24日に広島で開かれた「原発なしで暮らしたい100万人アクション」で、94歳の医師=肥田舜太郎さんが、老躯に鞭打って、立ったまま切々と「内部被曝」の重大さを訴えた記録映像です。

このなかで肥田さんは、「今すぐ直ちに福島の子どもたちに学童疎開を!」と訴えています。自身も内部被曝を抱えながら軍医として広島の被爆者を看病した体験からすれば、このまま放置しておくと福島の子どもたちにも広島と同じ症状が近い将来すぐに現れてくることは確実だからです。

この映像の後半15分では、自給自足の生活に憧れて福島に移住した若い女性が、実家の岡山に避難した自分の生々しい体験と訴えを語っていますので、できればそちらも見て欲しいのですが、時間のない方は最初の25分だけでも、ぜひ視聴してください。
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ところが驚いたことに政府も福島県も一貫して「集団疎開」どころか「学童疎開」を一貫して拒否しています。それに輪をかけた指示が南相馬市から出されました。毎日新聞の次の記事を御覧ください。

<福島県南相馬市が市外の全避難者約3万2000人を対象に、8月末まで避難施設を退去し、自宅や市内の仮設住宅などに入るよう求める文書を12日に発送することが分かった。同市は「いつまでも受け入れ自治体の好意に甘えるわけにいかない。自立するために目標を設ける必要がある」としている。震災から4カ月が過ぎても福島第1原発事故が収束できない中、山形県内の避難者からは「なぜ今なのか」と戸惑いの声が上がっている。(7月12日【前田洋平、安藤龍朗】)>
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110712-00000174-mailo-l06

彼らは市民を守るどころか高濃度に汚染された地域に帰還させて、わざと被曝させようとしているのです。これは一種の「殺人罪」にあたるのではないでしょうか。

そう思っていた矢先に、ジャーナリストの広瀬隆氏とルポライターの明石昇二郎氏が、7月15日、東電幹部や高木義明文部科学大臣、福島県放射線健康リスクアドバイザーの山下俊一氏など合計32名を刑事告発したというニュースが飛び込んできました。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1169 (動画:約3分)

運転ミスの交通事故で人を殺しても何らかの罪に問われます。自分の運転ミスを「想定外」だと言い張っても、罪を逃れられるとは誰も考えないでしょう。ところがNHKを初めとして、そのようなことを問題にする大手メディアが全く存在しないことに、私は大きな疑問を感じてきました。

そこへ広瀬隆さんたちが17名を「業務上過失致傷罪」、15名を「業務上過失致死罪」で刑事告発したのです。これはまさに快挙と言うべきではないでしょうか。
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<註> 告発されたのは以下の人たちです。
 「業務上過失致傷罪」―福島県の放射線健康リスクアドバイザー山下俊一氏、放射線影響学を専門とし原子力安全委員会の久住静代氏、高木義明文部科学大臣や放射線専門家ら計17名。
 「業務上過失致死罪」―東京電力の勝俣会長や清水社長、原子力安全委員長の斑目春樹氏など計15名。
 なぜ上記の諸氏が刑事告発に値するかは、告発人たちの共著『原発の闇を暴く』(集英社新書、2011)を是非ご一読ください。
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広瀬隆さんの刑事告発を考えたとき、もう一つだけ見て欲しい映像があることを思い出しました。

映画「赤富士」
http://www.youtube.com/watch?v=mTg3D1PoyUE&NR=1

この映画は黒澤明がつくった『夢』という映画の第6話 なのですが、このなかに登場する子連れの若い女性が「私たちをこんな目にあわせた連中を“縛り首”にしてやりたい」と叫ぶ場面があります。

私は「死刑」制度には反対ですが、「まだ十分に人生を生きていない子どもたちから未来を奪う連中」にたいして、そのお母さんが思わず口走った怒りが本当に分かるような気がしました。

また映画の中では、「私もその“縛り首”になるべき人間の一人です」という元原発関係者が登場します。

彼は彼女に謝りつつ、「バカなことに研究者たちは、色も臭いもしない放射能を眼に見えるようにするために各放射能に様々な色を付けたが、そんなことをしても所詮、放射能からは逃げられない」と海に飛び込む場面があります。

たった7ー8分の映像ですが黒澤監督は1990年に、既にこんな映画をつくっていたのです。

私はこの映画のDVDを買って、もう一度『夢』を見直してみました。すると第1話「狐の嫁入り」や最終話「水車のある村」などを既に見たことがあることに気づきました。

しかし、この第6話「赤富士」、第7話「鬼哭」は記憶に残っていませんでした。その当時の私には、この映画の深い意味が分かっていなかったのです。不明を恥じるのみです。
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<註> 上でリンクした映画「赤富士」には英語版の字幕が付いていますので、生徒・学生の英語学習にも役立つかも知れません。
 また同時に、この映画は放射能の学習にも役立つでしょう。というのは、上記の元原発関係者は、海に飛び込む前に、色別にプルトニウム239、ストロンチウム90、セシウム137が、身体のどの部分を犯していくかの解説をしているからです。
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ところで、放射能で汚染された牛肉が全国で発見され家庭でも食されていることが、最近の大手メディアでも話題になっています(しかしNHKニュースやクローズアップ現代では、ほとんど話題になっていないのが不思議です)。

しかし考えてみれば、大手メディア(特に国策放送局と化したNHK)が「福島を食べよう」とか「福島の復興を!」とかの宣伝・扇動を重ねてきたのですから当然と言えば当然のことです。

「汚染されたものを福島から外に出すな」「汚染されていない食品を福島へ!」と、くりかえし呼びかけてきた私としては、「何を今さら!」というのが実感です。

もっと困ったことは、今や「反原発の英雄」「反原発のヒーロー」となっている小出裕章氏が、ラジオ番組「たね蒔きジャーナル」で、「一次産業を救うためには福島を食べざるをえない」「原発事故を起こしたのは大人の責任だから汚染された食べ物を私たちが食べよう(そして子どもを救おう)」と繰り返し言ってきたことです。

インターネットだけでなく民放にも登場するようになった小出氏がこんなことを言っていれば、福島の農家の人たちが「安心して」農産物や畜産物を県外に出そうとするのは、当然のことではないでしょうか。原発事故の現状分析にかけては小出氏を超える人物がいないだけに、何とも名状しがたい気分です。
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<註> ただし、広瀬隆さんたちが東電などを刑事告発してからは、「犯罪者の東電に調査させて食物の汚染度を公表させろ」というように、小出裕章氏の言辞は若干の変化を見せ始めています(下線部に注意)。
 しかし、いずれにしても、「反原発」の運動を地道におこなってきた小出氏を、上記のように告発することは、私自身にも大きな躊躇(いためらい)がありましたが、いつも「政治は嫌いだ」と言っている氏の言動が別の大きな「政治的働き」をしているだけに、放置しておくわけにはいかないと思うようになりました。
 しかし、「この原発事故の責任は誰にあるか」という「責任論」は、「戦争責任」の問題とも重なって、非常に重要な問題であり、十分なスペースを取って論じなければならないことなので、今回は事実の指摘のみにとどめさせていただきます。

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