チェルノブイリの教訓 ― 復興へのヒント「新しい街」スラブジチの建設、 ECRRからの警告 ―首都圏を含む200キロ圏内で今後10年間で20万人がガンを発病する!!

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鹿児島講演から戻ってきたら疲れが出て2-3日、寝込んでしまいました。しかし、鹿児島から帰るとすぐ、『Voices of a People's History of the United States』翻訳原稿の初校(約1400頁)が届き、ゆっくり休息しているわけにもいかず、今その仕事に忙殺されています。

しかも昨年8月に愛犬が亡くなり、もう一匹が残っていたのですが、その愛犬もついに動けなくなり、夜にも起きて水を飲ませたりオムツを替えたりの新しい仕事が出てきました。そんなわけでブログの続きを書きたいのに時間がなかなか取れません。



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そうこうしているうちに北海道の泊原発を再稼働するというニュースが飛び込んできました。事故を起こした福島原発すら収束の目処が立たず、大量の高濃度汚染水を太平洋に垂れ流している(これは国際法違反です)にもかかわらず、泊原発を再開するという知事の神経が信じられません。

しかも未だに余震が思わぬ時に襲ってきて、東北の人たちを不安に落とし入れています。今度の原発事故は津波が原因ではなく地震に依るものであったことが今や明白であるにもかかわらず、しかも泊原発の近くに活断層があることが明確になってきているにもかかわらず、再開を許可するというのですから、「いったい北電からいくら貰ったの?」と尋ねたくなります。

北海道・泊原発の活断層と3号機の検査記録の改ざん
http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-778.html

いったん原発事故が起きれば、原発周辺の人たちの命が危険に晒されるだけでなく、国土全体の水・空気・土地・農産物・畜産物・海産物が放射能「汚染まみれ」になりつつあることは、チェルノブイリの事故どころか今回の事故で十分すぎるほど経験しつつあるはずなのに、北海道知事は福島の経験から何を学んだのでしょうか。

(国内どころか海外にまで汚染は広がっています。こんなことを考えると、彼女は「原発再稼働」→「プルトニウム製造」→「核兵器保有」という路線を密かに強制されているのか、という疑問すら湧いてきました。)

先日、福島県から数百キロも離れた首都圏の150カ所で、市民が土壌の放射能汚染を測定した結果、チェルノブイリ事故の「強制移住区域」にあたる地区すら首都圏に存在することが明らかになっています(2011/08/08)。

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1192
(出典のURLをクリックしてもらえば、各地区の詳しい数値も知ることができます。)

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ところで、前回のブログで「東大教授・児玉龍彦」の発言を紹介しましたが、その頃から福島の「除染」だけが大声で叫ばれるようになってきています。

もちろん「除染」しないよりも、したほうが良いに決まっていますが、庭や校庭から削り取った汚染土をどこに保管するかが大問題です。今のところ自宅や校庭の一部に穴を掘って保管する作業がおこなわれているようですが、そこから絶えず放射能が出続けているわけですから、決して安全とは言えません。

また地面の中に埋めたとしても、雨が降ったときに放射能が地中にしみ込んで地下水と合流し、飲料水や農家の田や畑の灌漑用水になっていく危険性もあります。これは道路を水で除染した場合も同じです。放射能を洗い流した水は地中にしみ込んで地下水に合流するでしょうし、下水道を通って川に流れ着くことにもなります。

もっと大きな問題は「除染処理」が数か月で終わるのか数年かかるのか分からないという点です。森林や田畑の除染を完全におこなうことを考えると気が遠くなります。ですから旧ソ連では途中で諦めてしまいました。

その間も福島に住む人たちは放射能で汚染された環境に住み続けることになります。だとすれば、汚染地区にいる子どもたちや妊婦に深刻な影響が出ることは、チェルノブイリの経験から明らかです。

土壌に落ちたセシウムは放射能を出し続けていますし、今も事故を起こした原発は「最終処理」が終わるまでは熱と放射能を出し続けていますから、「福島の復興を!」という美名のもとに住民を除染処理が終わるまで福島での居住を強制することは、一種の「殺人罪」と言ってもよいくらいです。

(福島市のような汚染濃度のところで「”自主避難”には補償金を出さない」というのも、金銭的ゆとりのないひとには「福島での居住を強制されている」のと同じことを意味します。)

それをハッキリ明言しているのがクリストファー・バズビー博士(欧州放射線リスク委員会ECRRの技術部長)です。

博士は、日本政府などが様々な基準に採用しているICRP(国際放射線防護委員会)と一線を画し、内部被ばくや低量被ばくについて長年、研究を重ねてきましたが、その彼が日本の汚染はどのような状況にあるのかについて、つぎのような衝撃的な発表をおこなっています。
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/07/japanese-translation-of-ecrr-chris.html

│1.ECRRリスクモデルにより福島事故の100キロ圏の住民300万人に対する健康影響
│を検討した。
│1) 100キロ圏内に1年居住を続けることにより、今後10年間で10万人、50年間で
│およそ20万人がガンを発病すると予測された。直ちに避難を行うことで、この数字は
│大きく減少するだろう。
│2) 100キロ圏と200キロ圏の間に居住する700万人から、今後10年間で10万人、50
│年間で22万人が発ガンすると予測された。
│3)これらの予測値は、ECRRリスクモデルおよびチェルノブイリ事故後のスウェーデ
│ンでの発ガンリスクに関する疫学調査に基づいて算定されたものである。

│2.ICRPモデルは、100キロ圏での発ガン数を2838人と予測している。したがって、
│福島事故によるガンの最終的な発生数が分かるときに、どちらのリスクモデルが適切
  かの答えがでるだろう。

│3.日本の文部科学省が公表したガンマ線量の公式データは、一般的に承認された科
  学的手法を用いて、測定箇所の地表汚染レベルを逆算するために使用できる。その結
  果、IAEAは汚染レベルを明らかに低く見積もった報告を行っていることが分かった。

│4.放射性同位体別の地表汚染レベルの測定を緊急に実施することが必要である。

│5.100キロ圏の北西部に居住する人々は直ちに避難し、その地域を立ち入り禁止と
  すべきである。

│6.ICRPリスクモデルを廃棄し、すべての政治的決定をECRR www.euradcom.orgの
│勧告に基づいて行うことを求める。これは、2009年のレスボス宣言に署名した著明な
│放射線リスク専門家が出した結論である。

│7.一般国民から意図的にデータを隠した者に対しては、調査のうえ法的処罰を与える
│べきである。

│8.メディアを通じて今回の事故の健康影響の過小評価をもたらす行為を行った者に対
│しても調査のうえ法的処罰を与えるべきである。

バズビー博士の発表で注目されるのは「100キロ圏内に1年居住を続けることにより」「今後10年間で10万人」「50年間でおよそ20万人」がガンを発病すると予測していることです。

だからこそ博士は「直ちに避難を行うことでこの数字は大きく減少するだろう」として一刻も早い避難を呼びかけているのです。このブログで私が一貫して「集団移住」「学童疎開」を呼びかけてきたのですが、その正しさが改めて確認されたという思いがしました。

また「100キロ圏と200キロ圏の間に居住する700万人」から、「今後10年間で10万人、50年間で22万人」が発ガンするという予測も、十分に恐ろしいものですが、もっと不気味なのは、下記のように「ICRPモデルとECRRモデルのどちらが正しいかは今後10年で証明されるだろう」と言っていることです。

<ICRPモデルは、100キロ圏での発ガン数を2838人と予測している。したがって、福島事故によるガンの最終的な発生数が分かるときに、どちらのリスクモデルが適切かの答えがでるだろう。>
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<註> 上記発表についてバズビー博士は、Our Planet TVのインタビューで簡潔明快に説明していますので、時間がある方は、これもぜひ視聴してください。

内部被ばくに警鐘:クリス・バズビー博士インタビュー
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1190

30分弱で字幕付きですから、簡便な英語のリスニング訓練(あるいはリスニング教材)にもなるのではないでしょう。
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また既に述べたように、バズビー博士は下記のような提案もしています。

4.放射性同位体別の地表汚染レベルの測定を緊急に実施することが必要である。
5.100キロ圏の北西部に居住する人々は直ちに避難し、その地域を立ち入り禁止とすべきである。

ところが政府や東電は福島の生徒に線量計を持たせるだけで、「集団移住」「学童疎開」を考えているようすは全く見えません。これでは評判の悪かった旧ソ連の対応の方が、遙かに良かったと考えざるを得ません。

というのは、旧ソ連は事故が起きた翌日には1200台のバスを使って住民を避難させただけでなく、チェルノブイリから50キロ(専用列車で45分)のところに2万5千人が暮らす「新しい街」を、たった2年間でつくりあげてしまったのです。

チェルノブイリの教訓 ― 復興へのヒント、「新しい街」スラブジチの建設
http://youtu.be/vB_l7lbPxl0 (2011/08/09)約7分
http://www.youtube.com/watch?v=vB_l7lbPxl0&feature=player_detailpage

上記の映像を見て驚かされるのは、人々が希望を持って毎日を生きていることです。街の人たちには定期健康診断が実施され、検査も治療も無料です。街の「自由市場」では野菜などの食料も全て汚染値を測った上で基準値以下のものが販売されています。(しかも日本のように、外国に輸出するときに恥をかくような基準値ではありません。)

かつては世界第2の経済大国だった日本で、しかもノーベル賞をの受賞者を何人も産みだしている日本で、旧ソ連のやり遂げたようなことをなぜできないのでしょうか。それとも、かつてアメリカABCCが広島・長崎の被災者を「原爆病」のモルモットとして使ったと同じことを、今度は福島でおこなおうというのでしょうか。

それにしても、旧ソ連に出かけていって、このようなドキュメンタリーをつくりあげて、福島・浪江町の人たちに「復興へのヒント」を提供しようとしたテレビ朝日の努力に大きな拍手を送りたいと思います。上記で紹介したものはその一部ですが、7分程度のものですから、ぜひ視聴していただきたいと思います。

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なお、バズビー博士がこのような発表をするためにどのような研究をおこなったかの詳細は下記論文を御覧ください。

論文『福島の破局的事故の健康影響』
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B6kP2w038jEAYmExZDE0MzAtYTk3NS00NGE2LTg5NGQtMWU1NGE1NjZiMzgw&hl=en_US
英語の原文は下記にあります。
http://www.bsrrw.org/wp-content/uploads/2011/04/fukusima-health-ECRR.pdf

また博士が論文で言及している汚染地図の一つが、群馬大学の早川由紀夫氏の作成した下記「放射能地図」です。これを見れば、バズビー博士が言うように、200キロ圏も決して安全ではないことが、じゅうぶん納得できるのではないでしょうか。
http://savechild.net/map


しかしそれにしても、個人の研究者でこれだけのことができるのに、なぜ政府はもっと迅速に、精密で広範囲の汚染地図を作成できないのでしょうか。謎は深まるばかりです。

(もともと、このブログは、「ことばの教育・研究」を中心に、日ごろ思いついたこと発見したことを徒然なるままに書き連ねようとして始めたものでしたから、いつまでも原発事故から抜けられないことに悶々としています。)
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