fc2ブログ

ウクライナ問題の正体――アメリカとの情報戦に打ち克つために、その15  「ロシアによるジョージアへの軍事侵攻」?

国際教育(2022-05-16)
 WMD(Weapon of Mass Destruction 大量破壊兵器)
 NED(National Endowment for Democracy 全米民主主義基金)
 ISIS(Islamic State of Iraq and Syria イスラム原理主義勢力)
 OPCW(Organization for the Prohibition of Chemical Weapons 化学兵器禁止機関)
 ランド研究所(RAND [Research ANd Development] Corporation、従業員1500人)
 スコット・リッター(Sctt Ritter 元国連大量破壊兵器廃棄特別委員会主任査察官)
 カラー(色)革命:バラ革命、オレンジ革命、ジョージ・ソロス、アメリカNED
 ミヘイル・サアカシュヴィリ(元グルジア[現ジョージア]大統領、元オデッサ州知事)
 

インタビューに答えるスコット・リッター(右側)
スコット・リッター



 前回のブログを私は次のように結びました。
 <研究所の研究員から届いたメールに応えて、ロシア軍の「特別作戦」が国際法違反ではないということもダニエル・コバリク教授とは違った視点で述べたいと思っていたのです。が、気がついてみると既に十分に長くなりすぎています。で、今日はここで断念し、次回こそ完結できればと願っています。>
 さてそこで、煩を厭わず、「研究員(小山さん=仮名)から届いたメール」を再び引用することから私の論を始めたいと思います。

今日の事態については、グローバルリサーチ社の見解が妥当のように思えます。つまり、ロシアの立場は理解するが、ロシアの侵攻は支持しない。
 素人考えですが、ロシアは2州の自治独立を承認したのちに、両自治州の自主投票によるロシア編入を待つべきだったように思います。
 そうすれば、ウクライナによる2州への攻撃は止むでしょうし、もしその攻撃が続けば、ロシアは反撃の正当性が主張しやすくなると思います。ただし、その時でも、今日のように、アメリカのプロパガンダによる情報攻撃が行われるでしょうが。
 ウクライナ侵攻が、寺島先生が危惧されるように、ロシアにとって第二のアフガニスタンにならなければよいと願います。


 上で小山さんは
 「ロシアは2州の自治独立を承認したのちに、両自治州の自主投票によるロシア編入を待つべきだったように思います」
 「そうすれば、ウクライナによる2州への攻撃は止むでしょうし、もしその攻撃が続けば、ロシアは反撃の正当性が主張しやすくなると思います」
 しかし既にこのブログで何度も書いているように、ドンバス2カ国は、住民投票による独立宣言をしたあとに、ロシアへの編入を求める自主投票もおこない、どちらも圧倒的多数の賛成を得ていたのです。
 ところがドンバス2カ国は、ロシア編入どころか、独立宣言すらも認められなかったのです。だからこそキエフ政権は、「分離主義者・テロリスト集団を制裁する」という口実で、2014年以来、8年間にわたってドンバス2カ国を爆撃し続けることができたのでした。

2 
 なぜロシアがクリミアと同じように、独立を認めただけでなくロシア編入も即座に許可しなかったのか、その理由はよく分かりません。
 その理由は、私なりに推測して以前のブログに書きましたから、ここでは割愛させていただきます。しかし、いずれにしても、そのため、ドンバス2カ国は、この8年間、一方的に攻撃され続けました。
 その間(かん)何度も休戦と交渉が続けられ、それが「ミンスク合意」「ミンスク合意2」となりましたが、これらの合意も、キエフ側は真面目に実行したことはありませんでした。
 そこで遂にロシアの堪忍袋の緒が切れてウクライナへの「侵攻」となったわけです。しかし、いきなりウクライナに「侵攻」したわけではありません。国際法に従って次のような手順を踏んでいるのです。
① まずドンバス2カ国を独立国として承認する。
② その独立国の要請にしたがってウクライナへの「特別作戦」を実行する。
 これはプーチン大統領がシリアにロシア軍を出動させたときの手順と基本的には同じもです。
 アメリカやイスラエルの後ろ盾を得てシリアに侵略してきたイスラム原理主義勢力(いわゆるISIS)に、アサド大統領が十分な対応をできず、ついにロシアの援助を求めたとき、プーチン大統領は国際法に従ってロシア軍を出しました。
 ところが、このときアメリカもシリアに軍隊を出動させています。その時の口実は「アサド大統領が住民を化学兵器で殺しているから、そのような悪逆非道な政権を倒さなければいけない」「そのために反政府勢力を援助する必要がある」というものでした。
 しかし、アサド政権を倒そうとしている「ISIS]は、アメリカが日頃からテロリストと名付けて攻撃してきた「アルカイダ」と同じものだということが暴露されると、当時のオバマ大統領は「穏健なISIS」という口実で彼らを擁護しました。
 それが事実かどうかは別にして、いずれにしても、アメリカがアサド政権の要請なしにシリア領内に軍隊を出動させることはシリアに対する主権侵害ですから、これは明らかに国際法違反の行為です。
 アメリカは「神に許された国」「例外的な国」だから何をしても許されるというのでしょうか。


 そもそも、「穏健なISIS」と「過激なISIS」という区別が存在しないことは、その言動によってますます明らかになってきました。
 また「アサドによる化学兵器の使用」ということも根拠がなかったことは、調査にあたったOPCW(=化学兵器禁止機関)の科学者たちによって内部告発されています。
 つまり、OPCWの公式発表は、自分たちが調査して奉公した内容と違うと言っているのです。それどころか、「アサドによる化学兵器の使用」は、いわゆる「ホワイトヘルメット」と呼ばれる集団の自作自演だったということも暴露されてきています。
 このように、ロシア軍のシリア出動は国際法から照らしても合法であるのに反して、アメリカ軍のシリア出動は明らかに国際法違反です。それと同じようにドンバス2カ国への要請によるロシア軍のウクライナにおける「特別作戦」も国際法違反にあたりません。
 これにたいして次のような反論が出てくるかも知れません。
 「ロシア軍が、ドンバス2カ国へ侵略してきたウクライナ軍を追い出すだけであれば、確かに国際法違反には当たらないかも知れないが、ドンバス2カ国から外に出てウクライナ領にロシア軍を進出させるのは疑問だ」
 しかし国と国との戦争では、相手が一方的に空爆してくるのに、それを国内で防御しているだけでは、いつまでたっても戦争を終わらせることは出来ません。相手の軍事拠点を空爆やミサイルで攻撃するだけでなく、相手国の司令部を攻撃し選挙することも、場合によっては必要になります。
 実際、第2次大戦ではロシア軍がドイツのヒトラーがいる指令部を攻撃し選挙することによって戦いは終結しました。もしロシア軍がソ連領内にからドイツ軍を追い出すだけで矛先を収めていたら、撤退したドイツ軍は、また態勢を立てなおしてロシアを襲って来たに違いありません。
 最近になって初めて知ったことですが、ドイツ軍を破ったのは一般的には英米を主力にした連合軍がノルマンディー上陸作戦でドイツ軍を破ったからだ(1944年6月6日)と言われていますが、ソ連軍がベルリンを完全包囲した時点で(1944年4が25日)で、実質的に第2次大戦は終わっていたのです。
 (ちなみにヒトラーはベルリンの総統地下壕の居間でピストル及び毒薬を使用して自殺したとされています。)
 この戦いにおけるソ連の犠牲者は2060万であり第二次世界大戦最大でした。それに比してイギリスの死者は38万人、アメリカの死者は29万人です(人間自然科学研究所「戦争による国別死者数」)。第2次大戦がいかにソ連の犠牲のもとに達成されたかが分かります。
 ここまで調べてきて、ソ連における犠牲者の多さに息をのむ思いがしました。アメリカがWMD(大量破壊兵器)という嘘をついてイラク侵略に乗りだしたとき、その嘘を暴露した国連の「武器査察官」だったスコット・リッターが、「私の祖国アメリカは、あまりにも事実を知らなさすぎる」と、次のように嘆いた理由がよく分かりました。

*An open letter to the American people, as Russia celebrates its WW2 victory over the Nazis
「ロシアが第2次世界大戦でナチスに勝利したことを祝して、アメリカ国民に宛てた公開書簡」
https://www.rt.com/russia/555114-victory-day-america-nazis/

 この公開書簡の副題は次のようになっていました。
*To those who have forgotten the sacrifices the ‘Greatest Generation’ made to defeat Hitler
「ヒトラーを倒すために『偉大なる世代』が払った犠牲を忘れてしまった人たちへ」

 つまりスコット・リッターは、アメリカ人の多くがバイデン政権の流す嘘に欺されて新たな戦争に引きずり込まされようとしていることに対して、5月9日に(ロシアが毎年祝うことになっている「第2次大戦の戦勝記念日」)、具体的事実をあげて訴えたくなったのです。
 スコット・リッターの公開書簡を読んで、ヒトラーのナチス軍によるソ連侵攻を許したと同じ失敗をプーチン大統領が2度と繰りかえしたくないと思ったとしても、それは当然のことではないかと、改めて思いました。


 以上、「独立共和国であるドンバス2カ国からの要請であるからロシア軍の行動は国際法違反ではない」という私論を述べてきたのですが、スコット・リッターの公開書簡を読んでいるうちに、少し考えが変わりました。
 つまり今度のドンバス攻撃は、単にキエフ政権によるドンバス2カ国への攻撃どころか、これは「キエフ政権を道具に使ったロシアへの攻撃」とも考えられるということです。言い換えれば「キエフ政権はロシアへの代理戦争を戦っている」ということです。
 むしろ、そのほうが事態を正確に捉えているのではないかと思い始めました。その意味で、ダニエル・コバリク教授の意見を、ここできちんと紹介し解説する必要があるのではないかと思い始めたのです。
 コバリク教授は前回のブログで紹介した論考で次のように述べています。

しかし、ロシアが主張する介入の正当性については、まだ検討すべき点がある。
 それは、ロシア人を含むロシア系住民を攻撃する過激派集団が国境に存在するだけでなく、これらの集団は米国から資金提供や訓練を受けていると伝えられていることである。それはロシアを不安定化し政権を転覆するためだ。
 Yahooニュース!は2022年1月の記事で次のように説明している。

 <この構想に詳しい5人の元情報・国家安全保障局員によると、CIAはウクライナのエリート特殊作戦部隊やその他の諜報員のための米国での秘密の集中訓練プログラムを監督しているという。その元情報局員によると、2015年に始まったこのプログラムは、米国南部の非公開の施設を拠点としている。
 このプログラムでは、ウクライナ人が「ロシア人に反撃する能力を高める」ための「非常に具体的なスキルの訓練」が行われてきた、と元情報当局の高官は述べた。
 この訓練には「戦術的なもの」も含まれており、「ロシアがウクライナに侵攻すれば、かなり攻撃的に見えるようになるだろう」と元政府関係者は語った。
 このプログラムに詳しいある人物は、もっと露骨にこう言った。
 すなわち、CIAの元幹部が「我が国は暴徒を訓練している」「このプログラムはウクライナ人に『ロシア人を殺す方法』を教えている」と言ったというのである。>(強調は筆者)


 つまり、ウクライナには「ロシア人を含むロシア系住民を攻撃する過激派集団が存在する」という事実を認めているのです。
 この「過激派集団」が「ネオナチ」であり、いわゆる「アゾフ大隊」等と呼ばれている集団を指すことは間違いないでしょう。しかも、これらの集団は米国から資金提供や訓練を受けているというのです。
 具体的には、CIAはすでにウクライナでクーデターを成功させた翌年の2015年からウクライナのエリート特殊作戦部隊やその他の諜報員を訓練し、それは「ロシアを不安定化し政権を転覆するためだ」というわけです。
 ですからキエフ政権がドンバスの「ロシア人」「ロシア語話者」を爆撃して殺すことは最初から計画に入っていたことになります。そして、ロシアがこの挑発にのってウクライナに侵攻すれば、それはロシアの「攻撃性」「侵略性」を宣伝する材料として使えるというわけです。
 CIAの元幹部が「我が国は暴徒を訓練している」「このプログラムはウクライナ人に『ロシア人を殺す方法』を教えている」と言ったというのですから、このことは、ほぼ間違いないでしょう。
 言い換えれば、ドンバス2カ国への攻撃が残虐であればあるほどロシアがそれに我慢できなくなりウクライナに侵攻を始めるようになり、それを口実にNATOをロシアへの戦争へと駆り立てることが可能となるという戦術です。
 しかも、この訓練がアメリカの本土、米国南部の非公開の施設を拠点としている、というのですから、ますます、このウクライナ危機は、NATOやウクライナを「代理」として使った、ロシアとアメリカの戦争を意図したものであることが、明確になってきます。
 EUを単にロシアへの経済制裁の道具として使うだけでなく、NATO軍もロシアとの戦争でへの「代理」として使えれば、こんなに好都合なことはありません。米軍兵士の血を流さずにすむからです。


 以上の主張をさらに確証するために、さらにコバリク教授は先の論考を次のように続けています(下線は寺島)。

 ロシアの不安定化そのものが、こうした取り組みにおける米国の目標であったという疑いを払拭するには、ランド社の2019年の報告書を精査する必要がある。
 この会社は長年にわたり政策目標を遂行する方法について米国に助言をしてきた防衛請負業者であるが、その報告書には「ロシアを過度に拡張させて不安定化する:コスト負担を押しつける選択肢の影響評価」と題されたものがあり、そこでは、数ある戦術の一つとして「ロシアの最大の対外的脆弱性を突く」ために「ウクライナへの兵器の提供」が挙げられている。


 ここでコバリク教授がとりあげている「ランド研究所」は、「非営利、無党派の組織」と自称していますが、国防総省、米陸軍、空軍、国家安全保障機関(CIAなど)だけでなく、他国の機関や強力な非政府組織から公式に資金提供を受けている組織です。
 この組織は、冷戦時代、ソ連に資源を消費させる過酷な軍事対決を強い、アメリカの勝利に導く戦略を考案したと自負していますが、その研究所が2019年に発表した報告書が次の文書でした。
*Overextending and Unbalancing Russia:Assessing the Impact of Cost-Imposing Options
「ロシアを過度に拡張させて不安定化する:コスト負担を押しつける選択肢の影響評価」

 幸いにも、この文書については既に次のような翻訳が出ています。
*Ukraine, It Was All Written in the Rand Corp Plan
「いまウクライナで起こっていることは、すべて3年前のランド研究所のプランに書かれていた」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-836.html(『翻訳NEWS』2022/03/20)

 これを読むと、冷戦時代にソ連をアフガニスタンにおびきだして崩壊させたと基本的には同じ戦略を提案しています。そこでは、コバリク教授が述べているように、数ある戦術の一つとして「ロシアの最大の対外的脆弱性を突く」ために「ウクライナへの兵器の提供」が挙げられているのです。
 ですから、このような事実を踏まえてコバリク教授は、自分の主張を次のように結論づけています。

 要するに、ロシアは、米国、NATO、そしてウクライナの過激派代理人による具体的な不安定化工作によって、かなり深刻な形で脅かされてきたことは間違いないのである。 ロシアは8年の間ずっと、そのような脅威にさらされてきたのだ。そしてロシアは、イラクからアフガニスタン、シリア、リビアに至るまで、そうした不安定化の企みが他の国々にとって何を意味するのかを目撃してきた。
 それは、国民国家として機能していた国がほぼ完全に消滅させられることを意味していたのである。

 国家防衛のために行動する必要性について、これほど切迫したケースは考えにくい。
 国連憲章は一方的な戦争行為を禁止しているが、第51条で「この憲章のいかなる規定も、個人的または集団的自衛の固有の権利を害するものではない」と規定しており、この自衛権は、実際の武力攻撃だけでなく差し迫った攻撃の脅威にも対応できるものと解されている。

 以上のことから、今回の切迫した事例では、この権利が発動され、ロシアは自衛のために行動を起こす権利があったと私は判断する。
 ロシアのウクライナへの介入は、ウクライナが、米国とNATOの代理人として、国内のロシア民族だけでなくロシア自身への攻撃を行ったことに対する自己防衛であったと言えるのだ。
 これに反する結論は、ロシアが直面している深刻な現実を単に無視することにしかならない。


 つまり、ロシア軍の行動は国連憲章第7章51条にもとづくものであり、国際法違反で
はないということです。
 このコバリク教授の主張を読んで、プーチン大統領がロシア軍を派遣した2022年2月24日に、ロシアの国営テレビを通じて全国民に向けて演説した内容が急に気になりました。
 この全訳はNHKのサイトに載せられていたので、いま改めて読み直してみると、プーチン大統領もコバリク教授の主張と同じように、国連憲章第7章51条を根拠にしていたことに気づきました。
 そのときには急いで斜め読みをしていたので、国連憲章の何条を根拠にしていたかまでは記憶に残っていなかったのです。


 ここまでの説明を読んでいただければ、前回のブログで紹介した小山さん(研究員のひとり)からいただいた次のメールをどう考えたらよいかが、改めて明らかになるのではないでしょうか。

 今日の事態については、グローバルリサーチ社の見解が妥当のように思えます。つまり、ロシアの立場は理解するが、ロシアの侵攻は支持しない。
 素人考えですが、ロシアは2州の自治独立を承認したのちに、両自治州の自主投票によるロシア編入を待つべきだったように思います。
 そうすれば、ウクライナによる2州への攻撃は止むでしょうし、もしその攻撃が続けば、ロシアは反撃の正当性が主張しやすくなると思います。(ただし、その時でも、今日のように、アメリカのプロパガンダによる情報攻撃が行われるでしょうが。)
 ウクライナ侵攻が、寺島先生が危惧されるように、ロシアにとって第二のアフガニスタンにならなければよいと願います。


 前回のブログで私が主張したことは、ドンバス2カ国のロシア編入を待つ必要はなく、承認した独立国からの要請にもとづく行動と考えれば、国際法違反ではないということでした。つまりシリアにおける行動と同じだということです。
 しかし、今回あらためてコバリク教授の主張を読み直してみて、ドンバス2カ国のロシア編入を待たずとも国際法違反にはならないし、それでは時機を失すると言う思いが強くなりました。
 というのは、ロシア軍の「特別作戦」によって入手した資料によると、ウクライナ軍は3月早々には、ドンバスへの攻撃を再開する予定だったことが明らかになっているからです
そのような情報を密かに入手していたからこその行動だったと考えられるからです。

*米政府がドンバス攻撃を始める直前に露軍が攻撃、米政府の計画が挫折した可能性
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202203290000/(『櫻井ジャーナル』2022--03-29)

 このウクライナ軍によるドンバス攻撃について上記の『櫻井ジャーナル』は次のような事実を紹介しています。

ロシアがウクライナを攻撃する5日前、ドンバス(ドネツクやルガンスク)の独立をプーチン大統領が承認する2日前、オレグ・ツァロフというウクライナの政治家が​「大虐殺が準備されている」という緊急アピールを出していた。
https://rusvesna.su/news/1645217482
 彼によると、ボロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバス(ドネツクやルガンスク)で軍事作戦を開始するという情報をキエフから得たとしている。ドンバスでの「民族浄化」だけでなく、ウクライナのSBU(ウクライナ保安庁)はネオ・ナチと手を組み、全土で「親ロシア派」の粛清を実行することにもなっていたという。


 さらに、ロシア軍が入手した文書についても『櫻井ジャーナル』は次のように書いていました。

 ロシア国防省によると、ロシア軍はウクライナ軍が残した回収した文書の中に、ドンバスを攻撃する作戦に関するものがあった。
https://www.jpost.com/international/article-700752
 ニコライ・バラン上級大将が1月22日に指令書へ署名、攻撃する準備が始まり、2月中に準備を終えたとされている。攻撃は3月に始めることになっていたという。この作戦はゼレンスキーが1月18日に出した指示に基づいて立てられたという。

 こうした情報が正しいなら、アメリカ政府は3月にドンバスを攻撃、市街戦を始めようとしていたということになる。
 ロシア政府がウクライナ軍のドンバス攻撃を非難することを想定し、事前にロシア軍の「偽旗作戦」を宣伝していた。そして、市街戦が始まってからロシア軍が介入すれば、市民の犠牲は全てロシア軍に押し付けるつもりだったのだろう。


 このように調べれば調べるほど、キエフ政権によるドンバス攻撃は目前に迫っていたことになります。その意味でロシア軍による行動は一刻の猶予も許されなかったと言えます。
 ですから、先述の小山さんのメール、そこに書かれていた提言は、善意にもとづくものには間違いないのですが、やはり情勢に正しく対処できるものではないと考えられるのです。
 それはともかく、このようなことを私に調べ直すきっかけを与えてくれた小山さんのメールに感謝したいと思います。

政治地図:ジョージア、南オセチア、アブハジア
グルジア(ジョージア)地図



 さてこの連載を書くきっかけになったSさんのオンライン署名について、まだ書き残したことがありますので、それについて私見を述べ、この連載をひとまず終えたいと思います。
 Sさんのオンライン署名で、私がコメントを書き残した残りの段落は次のようなものでした。

5)この戦争を止めるために、私たち一般市民ができることはあまりないかもしれません。しかし、国のリーダーたちにはできることがあります!それは、EU各国の首脳が紛争地域に集結することです。
6)この方法が実際に成功した例があります。ロシアがジョージアに軍事侵攻した2008年には、リトアニア、ラトビア、エストニア、ウクライナ、ポーランドの各国首脳がジョージア入りし、同国に対する支持を表明しました。この各首脳の行動が、ロシア軍の撤退につながったのです。
7)必要なのは、EU加盟国首脳たちの少しの勇気と、行動する意志だけです。今こそ行動する時です!


 ここでSさんは「この戦争を止めるために」「EU各国の首脳が紛争地域に集結すること」を提案し、そのためのオンライン署名を求めていました。
 そして、その根拠としてあげていたのが、「ロシアがジョージアに軍事侵攻した2008年に」「リトアニア、ラトビア、エストニア、ウクライナ、ポーランドの各国首脳がジョージア入りし、この各首脳の行動がロシア軍の撤退につながった」と事例でした。
 しかしSさんが例としてあげていた「ロシアによるジョージアへの軍事侵攻」とはどのようなものだったのでしょうか。
 そもそもジョージアは旧名をグルジアと言い、1991年のソ連崩壊後は元ソ連の外務大臣だったエドゥアルド・シェワルナゼが2003年まで大統領でした。ところが2003年のいわゆる「バラ革命」でシェワルナゼが政権を追われ、2004年にサアカシュヴィリ政権が誕生しました。
 ところが、この民衆革命だと言われていた「バラ革命」も、実はアメリカの仕掛けたクーデターだったことが、最近になって分かってきました。CIAの別動隊「NED全米民主主義基金」やジョージ・ソロスというアメリカの大富豪が裏で戦術指導や資金援助をしていたことが明らかになってきたのです。
 このように、調べてみると、ジョージアという国そのものも、その成立が極めて怪しいものです。ちなみにグルジアがジョージアという国名に変更されたのも、2014年にウクライナでクーデターが起きた後の2015年4月だったことも、私は今になって初めて知りました。
 さらに調べてみると、2004年の「バラ革命」でサアカシュヴィリ政権が誕生したわけですが、そのサアカシュヴィリ大統領自身が、「ロシアによるジョージアへの軍事侵攻」という今までの主張を全面的に撤回しているのです。今では全くの体制寄りのウィキペディアですら、次のように書いていて驚きました。

南オセチア紛争に関するサアカシュヴィリ自身の発言も変化し、紛争時に行っていた「先に軍事行動を開始したのはロシア側だ」という主張を翻し、同年11月28日にグルジア側の方が先に軍事行動を開始していたことを認めた。同年12月5日には国防相・外相・国家安全保障会議書記を更迭し、自らの責任回避に腐心している。


 ちなみに、この「バラ革命」に影響されたとする「オレンジ革命」が、隣のウクライナで起き、ロシア寄りのヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領を追い落とすことになったわけですが。今となっては、このいわゆる「カラー(色)革命」という名の「民衆革命」もアメリカが裏で糸を引いていたクーデターだということが分かっています。


 このように見てくると、Sさんが呼びかけた「オンライン署名」も、単に大手メディアによる一方的報道を信じて行動していることが分かります。
 このような「オンライン署名」はネオナチに依拠したゼレンスキー政権の危険な行動を助長することはあっても、平和に貢献することはありません。
 私は以前に、Sさんの行動を、「地獄への道は善意のバラに敷き詰められている」と表したことがありますが、このことばを、もう一度、Sさんに贈りたいと思います。
 それを再確認するという意味で、ジョージアの元大統領サアカシュヴィリの、その後の行動を紹介して、今回のブログの「締め」にしたいと思います。
 というのは、調べてみると、このサアカシュヴィリ大統領とウクライナの醜い関係が明らかになり、またまた驚かされることになったからです。

 というのは、グルジアで2013年におこなわれた選挙で、親サアカシュヴィリ派の統一国民運動は野党連合「グルジアの夢」に過半数を奪われ、2012年10月1日、政権は内閣総辞職に追い込まれました(この時点では国名は「グルジア」のままです)。
 そして誕生した新政権は、サアカシュヴィリ大統領が関与した様々な非合法行為(汚職、言論弾圧、拷問等)について真相を明らかにすると宣言しました。
 そのうえ新政権のイヴァニシヴィリ首相は、2013年4月12日、棚上げされていた南オセチア紛争の開戦経緯についても正式な調査を行う事を決定し、必要に応じてサアカシュヴィリ大統領を重要参考人として尋問すると表明しました。
 さらに2013年10月27日に執行された大統領選挙では自分が擁立した候補者が敗北したことを受け、11月17日をもって大統領を退任し、グルジア政府から一連の汚職や拷問、弾圧等による国際指名手配が出ているため、ウクライナへ脱出しています。
 その後の行動をウィキペディアは次のように書いています。驚くべきことに、今では体制派に転換したはずのウィキペディアでさえ、このような事実を隠すことはできなかったのでしょう。

2013年12月には、ウクライナで発生した大規模反政府デモ(寺島註:アメリカが裏で指導したクーデター)に連帯表明するために姿を見せた。
 グルジア政府から一連の汚職や拷問、弾圧等による国際指名手配が出ているため、母国へ帰らずそのままウクライナに留まっている。
 こうして、ポロシェンコ政権の諮問機関最高顧問に就任し、エカ・ズグラゼやアデイシヴィリ等自身の盟友を引き連れて反露親米姿勢を強めるウクライナに事実上亡命した形となる。


 ご覧のとおり、サアカシュヴィリは、グルジア政府から国際指名手配が出ているため、ウクライナへ脱出し、アメリカが裏で指導したクーデターの集会に姿を見せているのです。
 ここで驚くべきことが起きます。
 なんとクーデターで成立したウクライナのポロシェンコ大統領は、グルジア政府から一連の汚職や拷問、弾圧等による国際指名手配が出ている人物を、自分の政権の諮問機関最高顧問に就任させたのです。
 クーデター後のウクライナ政権がいかに腐敗堕落しているかを示す象徴的事件ではないでしょうか。

オデッサの労働組合会館で生きたまま焼かれた集会参加者
オデッサ虐殺 焼け死んだ人たち
オリバー・ストーン監督『ウクライナ・オン・ファイヤー』
https://odysee.com/@pomchannel:e/98:35



 その上さらに、これを上回る人事がおこなわれました。それを例によってウィキペディアから引用します。

 [サーカシュヴィリは]、2015年5月30日、ポロシェンコ大統領の協力を得てウクライナ国籍まで取得し、さらにオデッサ州知事にも就任した。
 オデッサ州は親露派が多く、2015年5月2日にはオデッサにおいて親欧米派と親露派の衝突に端を発した火災により多数の死者が発生する事件(寺島註:いわゆる有名な「オデッサの虐殺事件」)が起きている。
 反露主義の亡命政治家であるサアカシュヴィリの知事就任により、同地域の親露派制圧の意図を示したと見られている。


 ご覧のとおり、ポロシェンコ大統領は、グルジア政府から一連の汚職や拷問、弾圧等による国際指名手配が出ている人物にウクライナ国籍を与えただけでなく、彼をオデッサ州知事にも就任させているのです。
 この「オデッサの虐殺事件」は、ウクライナ政権がロシア人およびロシア語話者を人間と見なしていないことを示す象徴的な事件でした。ナチス政権がユダヤ人を人間として見なさず、アウシュビッツで焼却したことに匹敵するほどの衝撃的事件でした。
 この凄惨さは、以前に紹介したオリバー・ストーン監督のドキュメンタリーでも明らかです。まだご覧になっていない方は、ぜひ見ていただきたいと思います。
*オリバー・ストーン監督『ウクライナ・オン・ファイヤー』https://odysee.com/@pomchannel:e/98:35
 この凄惨な事件は、ウクライナ南東部のひとたち、とりわけドンバス2カ国のひとたちに、「キエフ政権から独立しないと殺される」という思いを強め、独立宣言をすることになったのですが、2022年2月までプーチン大統領がそれを認めなかったことは既に述べたとおりです。
 ところが、欧米のメディアは(日本のメディアも)、このような事実を全く報道せず、報道したのは「プーチン大統領とロシアの悪魔化」「ロシアによるウクライナの侵略」のみでした。

10
 この話には、さらに驚くべき続編があります。
 というのは、サーカシュヴィリは、その後、ポロシェンコ大統領との路線対立が激化し、ポロシェンコの大統領令によりウクライナ国籍を剥奪されたのですが(2017年7月26日)、その後のサーカシュヴィリの軌跡が再び、ウクライナという国およびゼレンスキー大統領という人物の腐敗堕落ぶりを改めて示すことになったからです。
 例によってウィキペディアから引用します。

 その後、ポロシェンコ大統領との路線対立が激化し、2017年7月26日にポロシェンコの大統領令によりウクライナ国籍を剥奪された。
2017年9月には無国籍という状態ながらもウクライナの国境検問所を強行突破して不法入国し、ユーリア・ティモシェンコ元首相と共にポロシェンコ大統領の辞任を旗印に反政府運動を行っている。
(中略)
 2018年1月5日、大統領在任中の2009年に、殺人罪で服役していた元警官4人に対し違法に恩赦を与えたとして、ジョージア(旧グルジア)の首都トビリシの裁判所から、職権乱用罪で懲役4年の実刑判決を言い渡された。
 2018年2月12日には不法滞在を理由にウクライナの首都キエフにおいて拘束され、その後ポーランドに強制追放された。

 2019年5月にウクライナの大統領に就任したウォロディミル・ゼレンスキー大統領により再度ウクライナ国籍を付与され、2020年5月7日にはゼレンスキー大統領により改革執行委員会議長に任命された。


 ご覧のとおり、新しく大統領になったゼレンスキーは、驚くべきことに、次のような罪状をもつ人物に再びウクライナ国籍を与えただけでなく、改革執行委員会議長のポストまで与えたのです。
① グルジア政府から一連の汚職や拷問、弾圧等による国際指名手配が出ている。
② 殺人罪で服役していた元警官4人に対し違法に恩赦を与えたとして、ジョージア(旧グルジア)の首都トビリシの裁判所から、職権乱用罪で懲役4年の実刑判決を言い渡され
③ 2018年2月12日には不法滞在を理由にウクライナの首都キエフにおいて拘束され、その後ポーランドに強制追放された。
 罪状は他にもいろいろあります。ここでは割愛しましたが、詳しくはウィキペディアを見てください。
 しかし、ここで深刻なのは、ゼレンスキー大統領が、このような罪状をもつ外国人に新たに国籍を与えてまで、重要なポストに任命しなければならないウクライナの現実です。それほどほどウクライナに人材がいないという事実です。
 あるいはゼレンスキー大統領にひとを見る眼がないという現実と言うべきなのかも知れません。もっと露骨に言えば、それはゼレンスキーという人物の品性・品格の下劣さを象徴していると言うべきなのかも知れません。
 このような人物に指導されるウクライナの未来に光があるとは、とても思えません。逆に言えば、「そのように腐敗堕落し、かつ残酷な政権」と戦っているドンバスの民衆にこそ「光あれかし」と願うのみです。


関連記事
スポンサーサイト



検索フォーム
プロフィール

狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

リンク
最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
RSSリンクの表示
QRコード
QR