「無実のひとを殺すのか!?」 「一刻も早く、 アメリカも文明国の仲間入りをして死刑制度を廃止してください!」 元ジョージア州・矯正局長官の悲痛なる訴え


さる9月22日朝(現地時間)、野田総理が米国ニューヨークの国連本部で行われた「原子力安全に関するハイレベル会合」で演説をしました。

「日本は原子力発電の安全性を世界最高水準に高めます」という首相の声がむなしく響きます。かつても日本の原子力は世界最高水準の安全性とうそぶいていたのですから、世界じゅうの誰も、このことばを信じないでしょう。

ビデオを見ても会場はガラガラです。国際社会から全く期待されていない演説であることがよく分かります。世界一の地震国・火山国である日本で、自然災害に耐える原発などありえいないのですから当然といえば当然ですが。

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世界中の人々がニューヨークの国連本部に集まってきている9月21日、ひとりの黒人に対して死刑が執行されました。

トロイ・アンソニー・デイビスは、有罪判決に対するさまざまな疑念があるにもかかわらず、ジョージア州が行った薬物注射による処刑で米国東部時間9月21日午後11時8分に、死亡しました。
http://democracynow.jp/dailynews/2011-09-22
http://www.democracynow.org/2011/9/22/democracy_now_special_report_from_troy

トロイ・デイビスを支援する数百人が終日祈りをこめて集会を行ったジョージア州ジャクソンの刑務所の敷地内から、処刑当夜の実況中継を6時間にもわたって報道し続けたニュース番組は、デモクラシー・ナウ!だけでした。

私は、この日、遅い夕食をしていたのですが、デモクラシー・ナウ!のニュースを見ようと茶の間でインターネットを起ち上げたとき、偶然この死刑執行の抗議集会を映像で見ることになってしまいました。

ジョージア州が恩赦=死刑延期を実施しない限り、この日の夕方7時に死刑が執行されることは以前から分かっていました。

しかし、7時に死刑が執行されず、その後かなりたってから抗議集会に集まった群衆の中からどよめきが起こり、涙にむせぶひとたちの映像も流れたので、てっきり死刑が延期されたのかと思っていたら、結局は11時近くに死刑が執行されることになり、大きな失望が皆の中に広がっていきました。

家族やアムネスティ・インターナショナルが何度も延期・中止を要請したにもかかわらず、そして世界中から抗議や署名が寄せられていたにもかかわらず、最終的に連邦最高裁判所が中止要請を却下した直後に、死刑が執行されたのでした。

最終的には11時8分に死亡が確認されました。薬物注射による処刑とはいえ、処刑される場面が自然とまぶたに浮かんで来て、私は吐き気がするような気分になり、居ても立ってもいられないような気分になりました。

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処刑の立会人となったジャーナリストのジョン・ルイスによれば、
「デイビスは、殺害された警官マーク・マクフェイルの家族にお悔やみの言葉を述べると共に、彼らの息子、父親、兄弟の命を奪ったのは、自分ではないと述べました。
「また、事件をもっと掘り下げて、真実を究明してほしいと語りました。
「次に、刑務所職員に向かい、『私の命を奪うことになる皆さん、神が皆さんの魂に哀れみをかけますように』と言いました。
「彼らに向けての言葉である『皆さんの魂に神の祝福がありますように』が彼の最後の言葉となりました。」

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デイビスは、1989年の非番の白人警官マーク・マクフェイル殺害事件で有罪判決を受けました。それ以来、9人の証人のうち7人が証言を撤回し、デイビスと事件現場を結び付ける物的証拠はありません。

彼の一件は米国や海外の死刑反対活動家たちの関心の的になってきました。数多くの支援者には、現法王のベネディクト16世や南アフリカのデズモンド・ツツ大主教(ノーベル平和賞受賞者)、ジミー・カーター米元大統領(ノーベル平和賞受賞者)などもいます。

国際的な人権団体として著名なアムネスティ・インターナショナルも救援活動に乗り出していました。アムネスティ・インターナショナルUSAの事務局長ラリー・コックスは次のように述べています。

「私は30年以上にわたって死刑問題に取り組んできました 」「(しかし)ジョージア州が死刑に処したいという、この人のケースほど有罪か無実かについて大きな疑いのある事例は見たことがない」

また、15日にはデイビスへの寛大な措置を求める50万人分以上の署名を集めた嘆願書が支援者たちによって州仮釈放委員会に提出されました(9月22日付け『日刊ベリタ』によれば署名は100万人になっていたそうです)。

米ジョージア州のトロイ・デイビス死刑執行停止を求めて50万人以上が署名
http://democracynow.jp/dailynews/20110916
http://www.democracynow.org/images/story/39/20539/troy_web.jpg

また19日には元FBI長官William Sessionsから、21日当日には元ジョージア州の矯正局長官Allen Aultからも、死刑延期の呼びかけがありました。それどころか、9月25日(日)は 元ジョージア州の矯正局長官Allen Aultから、死刑そのものの廃止を求める声がNewsweek誌に寄せられるに至っています。

Former FBI Director Calls for Troy Davis Execution to be Put Off
http://www.democracynow.org/2011/9/19/headlines

the words of Allen Ault, the former commissioner of the Georgia Department of Corrections
http://www.democracynow.org/2011/9/26/martina_correia_on_execution_of_troy

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デイビスは死刑当日、州刑務当局と恩赦委員会に対し、自分をウソ発見器にかけてくれるよう許可してくれと願い出ていました。またデイビスの支持者の何人かは、死刑執行が予定されているジョージア州刑務所に勤務する人々に対し、ゼネストあるいは「病欠スト」を行うよう呼びかけていました。

http://democracynow.jp/dailynews/2011-09-21
http://www.democracynow.org/2011/9/21/fate_of_troy_anthony_davis_hangs

しかし、このような死刑中止を求める声は遂に聞き届けられることはありませんでした。

ただ救いなのは、元ジョージア州の矯正局長官Allen Aultが、Newsweek誌に寄せた論考の最後に、「誰も死刑にされない国、誰も死刑執行にたずさわらなくてもよい国」にするために、「米国も欧米の文明国と同じように死刑を廃止して欲しい」と述べていることです。

"I hope [that], in the future, men and women will not die for their crimes, and other men and women will not have to kill them. The United States should be like every other civilized country in the Western world and abolish the death penalty."

日本では死刑が当然のように思われていますが、死刑を合法化している国は意外と少ないことを日本人はほとんど知りません。EUはその加盟条件を「死刑廃止」においていますから、EUに加盟したいトルコも死刑制度を廃止しました。

それどころか2001年6月、欧州評議会は、死刑を存続している日米両国に対し2003年1月までに死刑廃止に向けた実効的措置の遂行を求め、それが成されない場合、両国の欧州評議会全体におけるオブザーバー資格の剥奪をも検討する決議を採択しています。

つまり、いわゆる「発達した資本主義国」で死刑制度をもっているのは、米国と日本しかないのです。なかでも米国は、ウィキペディアによれば、死刑執行件数で、世界全体で4位、「発達した資本主義国」では段突の1位です(日本は、世界全体で10位、「発達した資本主義国」では2位です)。

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私は、英語を学ぶ目的の一つを「日本を米国のような国にしないために、英語を学び・米国を知ること」としました。

このようなことを私が痛切に思うようになったのは、米国流の経済運営を真似た「小泉流の規制緩和」が日本に導入され、派遣社員と首切り・路上生活者が日本に蔓延するようになってからでした。

今も米国流の経済運営が大手を振って歩いていますし、英語=経済力という理由で小学校から英語が導入され、大学ではTOEICなどの外部試験が英語学習の本道であるかのような主張さえ見かけるようになっています。

鳩山内閣で若干の修正があるかと思っていたのですが、菅内閣を経て、現在の野田内閣は、民主党でありながら小泉内閣と何ら変わらない路線に復帰しつつあるように、私には見えます。大企業と金持ちの減税、福祉と教育の削減、庶民増税と賃金削減などもオバマ政権と同じです。

オバマ政権は、丸腰のビンラディンを(逮捕して裁判にかけるのではなく)暗殺するという道を選びました。オバマ政権が拷問をアラブその他の独裁国家に「下請け」させていることも以前のブログで書いたとおりです。ところが前原誠司政調会長が就任早々、口にしたのは、「集団的自衛権を行使できる日本に」ということでした。

国内では世界中から嘆願運動が起きている人物を死刑にし、国外では裁判ではなく暗殺を選ぶ国=アメリカと一緒になって、「集団的自衛権を行使できる」ようにしたいと野田政権は言っているのです。これは野田政権がアメリカという国がどういう国かを知らないからとしか考えられません。

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経済運営だけでなく死刑という問題でも日本は米国と同じ路線を歩んでいるのです。それは軍事的問題でも全く同じで、日本を「集団的自衛権を行使できるような国」にしたいということばに、それが見事に表れています。

それも対等平等の軍事関係でないことは、米軍基地の費用を日本が肩代わりしていることを見れば一目瞭然です。これを「国際標準」に戻せば、増税などしなくても「復興財源」は容易に生み出すことができます。

その一方で、高濃度の放射能汚染地帯から学童疎開させたくても(双葉町のように[集団]移住したくても)国の援助がなくて被曝しつつけているひとたちが福島には沢山います。

さらに言えば、税金も元の「累進課税」に戻せば、たっぷりと財源が生まれることも下記拙論で詳述しました(ところがオバマ政権がやったことと言えば、金持ち減税とウオール街Wall Streetを救うことだけで、民衆Main Streetを救うことではありませんでした)。

論文「税金制度の変遷ー消費税の増税は必要か」
http://www42.tok2.com/home/ieas/article090205shohizei.pdf

私が、英語を学ぶ目的の一つを「日本を米国のような国にしないために、英語を学び・米国を知ること」とした理由が、これで少しは分かっていただけたのではないかと思うのです(詳しくは。拙著『英語教育が亡びるとき』を御覧ください)。

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<註1> 非常に皮肉なことですが、ニューヨークの国連本部に世界各国から続々と人が集まり、イランに拘留されていた米国青年二人の釈放が報じられた丁度そのときに、デイビスの死刑執行がおこなわれたのでした。

元大統領Carter、元FBI長官William Sessions、元ジョージア州矯正局長官Allen Aultなどがデイビスの死刑中止を求めているのに、不思議なことですが、黒人大統領オバマ氏は、国連の会議中も、それ以前にも、デイビスについて一言も言及していません。

しかも、この国連でオバマ氏が熱弁をふるったのは、デイビスの命を救うためではなくイスラエルを救えという演説でした。オバマ氏にとっては、イスラエルによって毎日のように土地を奪われ、命を脅かされているパレスナ人や、チョムスキーが「生きた監獄」と呼んだガザ地区は、全く気にならないようです。

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<註2> 米国の場合、多くのひと(さらにその多くが黒人)が牢獄に入れられ、無実の罪で終身刑や死刑の判決を受けているひとは珍しくありません。

私がいま翻訳している『Voices of a People's History of the United States』でも、無実で死刑になった「サッコとバンゼッティ」や「ローゼンバーグ夫妻」などの、死刑直前に発せられた数々の悲痛な叫び・訴えが載せられていて、読むものの胸を打ちます。

また同書には、赤人(アメリカ先住民)活動家レオナルド・ペルティエや黒人活動家ムミア・アブ=ジャマールの牢獄からの訴えも載せられていて、「マイノリティ」のひとたちが米国でどのような仕打ちを受けてきたか、を詳しく知ることができます。

とりわけムミア・アブジャマールは、トロイ・デイビスと同じように、何度も死刑執行を延期されているだけに、いつ死刑にされるか分からない状況です。デイビスの件があってから、家人も彼のことを非常に心配しています。

デイビスが無名の黒人だったのに対して、アブ=ジャマールの方はノーベル平和賞に推薦されるくらい黒人活動家として著名であり、いまでも獄中からメッセージを発信し続けているだけに、米国政府としては一刻も早く消したい人物であることは間違いないでしょう。

(チョムスキーの教え子であるマイケル・アルバートが運営しているZNetに、アブ=ジャマールも寄稿していますし、彼のブログのページもあります。)

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<註3> 上記で紹介した情報の出典は次の通りです。時間にゆとりのある方は、読解力養成のために挑戦してみてください。

Former FBI Director Calls for Troy Davis Execution to be Put Off
http://www.democracynow.org/2011/9/19/headlines

In Georgia, supporters of death row prisoner Troy Davis have been holding an around-the-clock vigil outside the Atlanta building where the Georgia Board of Pardons and Paroles will decide today whether to halt this week's planned execution. Under Georgia law, only this board has the authority to grant clemency, not the governor, as is the case in many states. Davis is scheduled to die at 7:00 p.m. on Wednesday by lethal injection. Former FBI Director William Sessions has become the latest high-profile figure to call for the execution to be put off. In a letter to the Atlanta Journal-Constitution, Sessions writes, "[T]he evidence in this case — consisting almost entirely of conflicting stories, testimonies and statements — is inadequate to the task of convincingly establishing either Davis' guilt or innocence. What do we want, Justice, when do we want it, now, thank you.”

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the words of Allen Ault, the former commissioner of the Georgia Department of Corrections
http://www.democracynow.org/2011/9/26/martina_correia_on_execution_of_troy

"Having witnessed executions firsthand, I have no doubts: capital punishment is a very scripted and rehearsed murder. I's the most premeditated murder possible. [...]

"I will always live with these images—with 'nagging doubt,' even though I do not believe that any of the executions carried out under my watch were mistaken. I hope [that], in the future, men and women will not die for their crimes, and other men and women will not have to kill them. The United States should be like every other civilized country in the Western world and abolish the death penalty."

元ジョージア州の矯正局長官Allen AultがNewsweek誌に寄せた論考の全文は下記にあります。死刑を執行する側の苦しみを赤裸々に述べていて本当に感動させられました。これは服装検査など懲罰に明け暮れる最近の学校を考えるうえでも、英語教師の「必読文献」ではないかと思いました。

I Ordered Death in Georgia
http://www.thedailybeast.com/newsweek/2011/09/25/ordering-death-in-georgia-prisons.html

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