ウォール街を占拠せよ(上)―民主主義の新しい展開 「“水平”民主主義」


音楽と動画1:

Occupy Everything from socially_awkwrd on Vimeo.

音楽と動画2:
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1243

音楽と動画3:
http://www.occupytogether.org/
前回のブログ<註1>で私は次のように書きました。

<非常に皮肉なことですが、ニューヨークの国連本部に世界各国から続々と人が集まり、イランに拘留されていた米国青年二人の釈放が報じられた丁度そのときに、黒人死刑囚トロイ・デイビスの死刑執行がおこなわれたのでした。
 元大統領Carter、元FBI長官William Sessions、元ジョージア州矯正局長官Allen Aultなどが、デイビスの死刑中止を求めているのに、不思議なことですが、黒人大統領オバマ氏は、国連の会議中も、それ以前にも、デイビスについて一言も言及していません。
 しかも、この国連でオバマ氏が熱弁をふるったのは、デイビスの命を救うためではなくイスラエルを救えという演説でした。オバマ氏にとっては、イスラエルによって毎日のように土地を奪われ、命を脅かされているパレスナ人や、チョムスキーが「生きた監獄」と呼んだガザ地区は、全く気にならないようです。>

しかし、もう一つ皮肉だったのは、ニューヨークの国連本部に世界各国から続々と人が集まり、イランに拘留されていた米国青年二人の釈放が報じられた丁度そのときに、ウォール街の近くのズコティ公園“LibertyPlaza”では「ウォール街を占拠せよ」"Occupy Wall Street" という集会が連日のように開かれ、若者たちがそこで寝泊まりするようになっていました。

本当は前回のブログでそのことも書きたかったのですが、どんどん長くなっていきますし、いま翻訳している『Voices of a People's History of the United States』の初校締め切りも迫ったいたので、やむなく断念しました。一昨日、初稿原稿を出版社に送りましたので、やっと "Occupy Wall Street" について書くことができるようになりました。

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ところで私は前回のブログで次のようにも書きました。

<私は、英語を学ぶ目的の一つを「日本を米国のような国にしないために、英語を学び・米国を知ること」としました。
 このようなことを私が痛切に思うようになったのは、米国流の経済運営を真似た「小泉流の規制緩和」が日本に導入され、派遣社員と首切り・路上生活者が日本に蔓延するようになってからでした。
 今も米国流の経済運営が大手を振って歩いていますし、英語=経済力という理由で小学校から英語が導入され、大学でもTOEICなどの外部試験が英語学習の本道であるかのような主張さえ見かけるようになっています。
 鳩山内閣で若干の修正があるかと思っていたのですが、菅内閣を経て、現在の野田内閣は、民主党でありながら小泉内閣と何ら変わらない路線に復帰しつつあるように、私には見えます。大企業と金持ちの減税、福祉と教育の削減、庶民増税と賃金削減などもオバマ政権と同じです。>

ブログで上記のように書いたところ、「アメリカは世界一の経済大国なのに、そこで路上生活者が蔓延しているなんて信じられない」という便りをいただきました。

数々の賞を受けたマイケル・ムーアの映画『Roger and Me』や『Sicko』などで、米国の貧困ぶりは詳しく描かれていますし、堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』I, II(岩波新書)もベストセラーになりましたから、このことは多くの日本人にとって周知の事実だと思っていたのですが、どうもそうではないようです。

しかし今回のブログでは、最新の「アメリカ貧困事情」ではなく、いま進行しつつある "Occupy Wall Street" について書きたいと思います。(最新の「アメリカ貧困事情」については、近いうちに紹介するつもりです。小出裕章氏の「原発責任論」「大人は福島を食べろ」という論についても書きたいので、心が千々に乱れてしまいます。)

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昨日(10月3日)のDemocracyNow!は、3週目を迎えた"Occupy Wall Street" について次のように報道しています。

ブルックリン橋で700人逮捕:
3週目の「ウォール街を占拠しよう」は全米に拡大
700 Arrested on Brooklyn Bridge
as Occupy Wall Street Enters Third Week, Protests Grows Nationwide
http://www.democracynow.org/2011/10/3/700_arrested_on_brooklyn_bridge_as

これを読むと、史上最大の逮捕者を出しているにもかかわらず、「占拠」キャンペーンはシカゴ、ボストン、ロサンゼルスといった他都市にも拡がっており、ロサンゼルスでは数百人が市庁舎前で抗議のキャンプをしていることが分かります。

以下はその記事の要約です。

 ニューヨーク金融街で行われている「占拠」運動は、ブルックリン橋を行進しようとしたとき劇的な展開を迎えた。
 警察官が700人のデモ参加者を逮捕したことで、運動は近年で最も多くの逮捕者を出した非暴力運動の一つとなった。
 「警察官に車道におびき寄せられた」と語る人や、「歩道を歩け」との警察官の指示は聞いていないと述べる人もいた。
 一方、同様の「占拠」運動は、シカゴ、ボストン、ロサンゼルスといった他都市にも拡がっており、ロスでは数百人が市庁舎前で抗議のキャンプをしている。

  The "Occupy Wall Street" protests in the financial district took a dramatic turn on Saturday when protesters tried to march across the Brooklyn Bridge.
  When police arrested 700 of the demonstrators, the event quickly turned into one of the largest arrests of non-violent protesters in recent history.
  Some protesters claim police lured them onto oncoming traffic on the bridge’s roadway; others said they did not hear instructions from police telling them to use the pedestrian walkway.   Meanwhile, similar "Occupation" protests have spread to other cities, including Chicago, Boston and Los Angeles, where hundreds of protesters are now camped out in front of City Hall.
http://www.democracynow.org/2011/10/3/700_arrested_on_brooklyn_bridge_as

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今日(10月4日)のDemocracyNow!の下記報道によれば、事態はさらに発展してきています。
http://www.democracynow.org/2011/10/4/headlines

米国では大きな勢力をほこっている労働組合SEIU(Service Employees International Union)の医療部門が「占拠」運動を支持する声明を発表し、泊まり込んでいる若者たちの食料援助をおこない、警官によって暴行された若者の救急医療の仕方を教えるため組合員=看護婦を派遣するとまで言うようになってきています。

また米国では大きな勢力をほこっている、もう一つの労働組合TWU(Transport Workers Union of America)のNW支部もこの運動を支持し、前日に警官が700人も逮捕して市営バスで留置場に運んだような行為の「一時差し止め」を求めて、組合所属の弁護士たちが動き出したことを伝えています。

というのは、NYPD(ニューヨーク市警)は、少なくとも市営バス3台を使って、逮捕した若者を留置場に運んだからです。

  In New York City, the ongoing protest against corporate greed and economic inequality known as "Occupy Wall Street" is entering its nineteenth day with increasing union support.
  On Monday, the SEIU 1199 healthcare workers union issued a statement of support for the demonstration promising to help feed protesters and send nurses to train those providing first aid.   The healthcare workers union joins the Transport Workers Union members in New York City in supporting the growing movement.
  On Monday, attorneys for the TWU attempted to obtain a temporary federal restraining order to prevent the police from commandeering buses operated by its members to ferry protesters who had been arrested.
  Over the weekend, the NYPD used at least three city buses to transport some of of the more than 700 protesters arrested attempting to cross the Brooklyn Bridge.
http://www.democracynow.org/2011/10/4/headlines

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この「占拠」運動に参加している若者Tony Murphyは、the Bail Out the People Movementというグループの一員ですが、DemocracyNow!のインタビューに答えて次のように述べています。
http://www.democracynow.org/2011/10/4/headlines

「ニューヨーク市警や市長のBloombergに言いたいのは、「占拠」運動に干渉するな、若者に対する脅迫や逮捕をやめろ、ということだ」
「この占拠運動の中心になっているLiberty Plazaは、有名な金融会社Goldman Sachsの目と鼻の距離にある。誰かを逮捕したいんだったら、ウオール街の金融取引場へ行って、そこにいる連中を逮捕しろ。奴らこそ、老人たちの家を奪い路上に放り出したり、彼らの年金を奪った張本人ではないか」
「彼らこそ米国の金融危機をつくりだし民衆を苦しめている張本人なんだから、逮捕するだったら俺たちではなく奴らだろ」

  "We’re here to say that the NYPD and Mayor Bloomberg has to keep their hands off "Occupy Wall Street," stop harassing them, stop with the mass arrests.
  Liberty Plaza, which is the center of "Occupy Wall Street," is a stone’s throw away from Goldman Sachs.
  If they want to arrest somebody, they should go down to Wall Street, down to the Stock Exchange and arrest the people who are busy clearing out elderly people from their homes, hurting people’s pensions.
  These are the people who are really hurting people and should be arrested."

同報道によれば、明日の水曜日は労働組合も大きな行進を企画しているだけでなく、それを支援するために、City University of New York、New York Universityなど、ニューヨーク市内の主要大学もストライキに出るということですから、情勢はますます緊迫しつつあります。

The unions and protesters are gearing up for a large march on Wednesday that will be bolstered by walkouts at major universities in New York City, including City University of New York and New York University.
http://www.democracynow.org/2011/10/4/headlines

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日本でも福島原発事故から6ヶ月をむかえた9月11日(日)および9月19日(月)は全国で大きな集会が開かれ、9月19日(月)の東京集会では6万人という、かつてない大集会となりました。しかし他方では9月11日(日)の集会・行進で、「素人の乱」などの若者ら12人が逮捕されるという事件も起きています。

しかし逮捕するのであれば、福島原発事故という大災害を引き起こし、東日本を中心として農業・漁業を壊滅状態にしただけでなく、多くの被爆者をいまだに生み出し続けている東電や政府の役人こそ、逮捕すべきでしょう。

ところが、広瀬隆さんたちが刑事告発したにもかかわらず、それを放置したまま、逆に俳優・山本太郎の刑事告発を受理するという珍事までも起きています。

(広瀬隆さんたちは東電や政府の役人たちを告訴していますが、裁判所の裁判官は告訴していません。しかし地元住民が訴訟を起こしても「原発は安全だ」としてそれを許可した裁判官も、私には全く同罪に思えます。)

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これに関連して、今日(10月4日)のDemocracyNow![Headlines] は、もう一つ面白い報道をしています。

それは、この「ウォール街を占拠しろ」運動が、アメリカ全土どころか世界中に大きな反響を呼びつつあるというニュースです。

下記の英文報道にあるとおり、この運動は「Austin, Texas」「 Knoxville, Tennessee」「Chicago, Illinois」「Denver, Colorado」「some two dozen other locations in Florida and California」など全米で多くの都市で新たな民衆蜂起を促しつつあります。

ボストンでは先週の金曜日からDewey Squareに1000名もの民衆が集まり、そこにテントを張って無期限に抗議活動をする許可さえ勝ち取ったというのだから驚きです。

そして同報道によれば、更に、この運動は米国を越えて、Canada, Australia, Japan, Mexicoなど他国にも広がりつつあるというのです。ここに日本も入っていることに小さな驚きと大きな喜びを感じました。

Occupy Wall Street-Inspired Protests Spring Up Around the Country, World
http://www.democracynow.org/2011/10/4/headlines

  Similar occupation demonstrations are springing up in cities around the country from Austin, Texas; Knoxville, Tennessee; Chicago, Illinois; Denver, Colorado; some two dozen other locations in Florida and California, and more.
  In Boston, as many 1,000 demonstrators gathered in Dewey Square last Friday, where they have been permitted to set up tents, many planning to stay indefinitely.
  Protests have also been organized internationally in Canada, Australia, Japan, Mexico and others.

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しかし、元々この「占拠」運動は、チュニジアの若者による抗議自殺で民衆蜂起が起き、それに刺激を受けたエジプトで若者たちが「タハリール広場」を占拠してムバラク独裁政権を倒したことに触発されたものでした。

それが米国に飛び火し、現在に至ったわけですが、ここで興味深いのは、この「占拠」運動が上下のない、ゆるい連帯を目指しており、リーダーのいない「水平民主主義」を目指しているという点です。

敢えて統制をとることをしないため、全体ミーティングの最中にも、公園の別の場所では、即興ジャズ演奏が行われ、それに合わせて踊る人々もいるといった具合です。このようすは次のHP動画で見ることができます。

「アラブの春」NY版〜ウォールストリートを若者が占拠
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1243

この動画を見ていたら、いま翻訳している『Voices of a People's History of the United States』の中に収録されている「Battle in Seatle」を思い出してしまいました。

これは、世界中の農業を破壊し貧富の格差を押しつけるWTO政策と、その開催を阻止するために、米国全土だけでなく世界中からSeattleに結集した民衆の声を記録したもので同名の映画にもなっています。

この運動は、結局はWTOの開催を阻止し、新しい運動のあり方を世界に示すものとして非常に注目されました(しかし、そのあとすぐに911事件が起き、せっかくの運動は、発展の芽を潰されてしまったのでした)。その運動形態がいまニューヨークで展開されているものと全く同じだという気がしたのです。

というのは、この動画には、3000平方メートルほどの広さのLiberty Plaza(正式名称Zuccotti Park)には、メディア・ステーション、キャンプ・ステーション、フード・ステーション、プラカード置き場/見せ場、インフォメーション・ブースなどが設置されており、各自が自分の持ち場で思い思いに過ごしていると様子が出てくるからです。

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この「水平民主主義」の運動形態は、かつて2001年にアルゼンチンがWTOやIMFの勧める「規制緩和」政策の結果、財政破綻をしたとき、「銀行の打ち壊し」「工場占拠」「労働者による工場経営」などの民衆蜂起が起こり、それが原型になったと言われています。その結果、今ではアルゼンチン経済は立ち直っています。

私たちが、上記の「水平民主主義」から学ぶ点は極めて大きいのではないでしょうか。「無知蒙昧な民衆にものごとを任すと混乱が起こるだけだ」と、よく言われますが、アルゼンチンでも、タハリール広場でも、Seattleでも、NewYorkでも、全く別のことが起きています。自由の中に秩序が、秩序の中に自由が生まれているのです。

(上記の事実は、制服検査に明け暮れ、生徒との関係を悪化させ、授業崩壊の原因をつくり出している高校で、考え直す視点を与えてくれているのではないでしょうか。)

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それはともかく、映画監督のMichael Mooreや、アインシュタインがいたことで有名なプリンストン大学の名物教授Cornel Westも、この「占拠」の拠点Liberty Plazaに駆けつけて応援のスピーチをし、若者の喝采を浴びていました。日本では考えられないことです。

"Something Has Started": Michael Moore on the Occupy Wall St. Protests That Could Spark a Movement
http://www.democracynow.org/2011/9/28/something_has_started_michael_moore_on

Cornel West on Occupy Wall Street: It’s the Makings of a U.S. Autumn Responding to the Arab Spring
http://www.democracynow.org/blog/2011/9/29/cornel_west_on_occupy_wall_street_its_the_makings_of_a_us_autumn_responding_to_the_arab_spring

これらについても書きたいことが多くあるのですが、もう長すぎますので、ここでいったん筆をおくことにします。
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<註1> この「Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)」というHPには、様々な情報が詰め込まれていて、興味が尽きません。時間のあるひとは下記を御覧ください。
http://www.occupytogether.org/


<註2> 暴力は絶対に使わない平和的な運動を掲げており、催涙ガスをかけられても絶対に非暴力を貫こうと呼びかけているところも、Seattleの運動と全く同じでした。(Seattleでは一部の集団が店の窓ガラスを割る場面もあり、それをメディアは大きく報道しましたが、警察が内部に潜り込ませた連中のしわざではないかと言われています。) 
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出典:http://tanakaryusaku.jp/2011/05/0002365

<追記> DemocracyNow!によれば、この運動が既に東京にも飛び火しているそうですが、東京のLiberty Plazaはどこに出現するのか、興味のあるところです。

ただし日本では、既に5月23日、児童の被曝許容量を20mSvとした通達の撤回を求めて福島の父母たちがバス2台を連ねて上京し、関東一円から駆け付けた親たちも一緒になって文科省を包囲し、交渉を後押ししたという実績があります。
http://tanakaryusaku.jp/2011/05/0002365

福島からバス2台を連ねて上京した父母たちが通されたのは文科省の中庭でした。「会議室はどこも塞がっている」というのが文科省の口実で、しかも高木文科相は本会議、政務三役は不在を理由に交渉出席を拒否しました。

被曝許容量「20mSv」撤回求める福島の父母を、雨の中、コンクリートに座らせた文科省でしたが、福島の父母らの鬼気迫る追及に、うなだれるばかりの渡辺・原子力安全監でした。

このような交渉の結果、「年間1mSvを目指す」という回答が後日だされることになったわけですが、いまだに福島のひとたちは「除染、除染」の大合唱のなか、高濃度の汚染地区から脱出できないまま放置されています。

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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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