議員定数削減、チョムスキー講演、そしてマイケル・ムーア(上)

NHKニュース(8月1日)によれば、国会議員の定数削減をめぐって、菅総理大臣は、民主党の参議院選挙の公約に盛り込んだ「衆議院の比例代表の180の定数を80削減することと、参議院の242の定数を40程度削減する方針」に基づき、ことし12月までに与野党の合意を目指すよう、枝野幹事長らに指示したそうです。

これを聞いてすぐ思い出したのは、チョムスキーの講演と米国アリゾナ州の惨状でした。これについては既にDemocracyNowで下記の報道があったことを前回のブログで紹介しました。

アリゾナ州の惨状とチョムスキー講演、そして日本
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3065751
ソノラのティー・パーティー: アリゾナ州は共和党右翼急進派政策の実験場
http://www.democracynow.org/2010/7/15/tea_party_in_sonora_ken_silverstein

前回のブログでは、上記DemocracyNowのインタビュー記事を引用しつつ、アリゾナ州惨状の紹介したわけですが、今回の話しにつなげるため、それを下記に再録させていただきます。

<アリゾナ州では右翼的民衆運動Tea Party のスローガンが『税金で金融界を救済する政府を拒否し、納税拒否または減税要求をすること』を基本としているため、アリゾナ州が財政難に陥り、公教育や年金など様々な社会保障の削減に乗り出していること、それどころか州議会の建物を初めとして、州庁舎を次々と売り払い、その建物を売却相手から賃借りして議会を開いているなど、信じがたい惨状が展開されています。>

しかしアリゾナ州は(州議会の建物を初めとして)州庁舎を次々と売り払っているどころか、議員を「パートタイム」の職務にまで貶めてしまっています。それは、Democracy Now の司会者 Juan Gonzalezが、上記の記事を書いたKen Silverstein に次のような問いを投げかけていることからも分かります。

JUAN GONZALEZ: And Ken, also, the legislature is a part-time legislature. They only make about $24,000 a year. So they're doing all of this in their spare time, in essence, as they run other businesses or have other occupations. One of the things that struck me was that you said that they sold the capitol building in Arizona and are leasing it back from the person they sold it to?

前回のブログで紹介した英文は、このJuan Gonzalezの問いに対してKen Silversteinが答えた、アリゾナ州惨状の一部でした。しかし実はアリゾナ州では、議員定数を削減するどころか、財政難のため議員を「パートタイム」の職務にまで貶めてしまっていたのです。その年収はなんと、たった240万円( $24,000 )、月収で20万円でした。

議員は、法案一つ提案するにしても、綿密な調査と研究なくしては実効ある政策や法案をつくることはできません。秘書がついたり旅費がついたりするのも、このような理由に依ります。しかし月収で20万円では調査研究どころか妻子さえ養っていくことはできません。

これでは,きちんとした定職を持ち、なおかつ議会活動もできる暇な人しか議員になれないことになります。つまり議員活動は一種のボランティア活動であり、毎日必死に働いていてボランティア活動などをするゆとりのない人は決して議員になることはできません。つまり民衆の利益を代表するひとは、おいそれと議員になることはできないことになります。

 (これは、日本で近ごろ流行の「学校評議員制度」をみればよく分かります。私の知っている限り、「学校評議員」になっているひとは、会社役員や大学教授やPTA会長など、特別な階層以外にほとんどいません。
 つまり「学校評議員制度」は「民衆の視点で教育を民主化する」と言われていますが、これは単なる謳い文句であり、下手をすると町の有力者の視点が貫徹しかねないのが「学校評議員制度」ということになります。)

ところが現実には「小選挙区制」のおかげで、大政党の公認が得られたり財界から選挙資金が与えられれば、無能な人でも議員になることはできます。このようなひとは綿密な調査と研究をしたうえで議会で質問したり法案を作ったり能力がありませんから、議会では政党幹部が指示するとおりに行動するだけで、結局は議会で最終決議をするときの単なる投票マシーンになってしまいます。

そして、このような「無能議員」の存在が国や地方自治体の財政難とも相まって「だから定数削減を!」「だから議員報酬の削減を!」という俗受けする公約に結びついていきます。これが究極の形をとったのが、アリゾナ州の議員パートタイム制でした。

だから、赤字を口実に民主党(および自民党)の「議員定数削減」政策を推し進めている限り、日本もアリゾナ州にならない保障はありません。


<註>
実は、「赤字だから定数削減を!」「赤字だから議員報酬の削減を!」という動きは、アリゾナ州だけでなく米国全土に広まりつつあります。日本でも既に名古屋市や鹿児島県阿久根市の市長に同じ言動が見られます。)


以下、(中)に続く
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