議員定数削減、チョムスキー講演、そしてマイケル・ムーア(中)

しかし、この「議員定数削減」政策は、実は二大政党にとっては「赤字削減」を口実にして自分たちの地位を安泰に保つことができるという、全く別の、大きなメリットがあります。というのは「小選挙区制」は「一つの選挙区に当選者は一人だけ」ですから、弱小政党は放逐され、当選できるのは財界から選挙資金が与えられた大政党の公認候補だけだけに限られるからです(しかも大政党には政党助成金も豊富です)。

米国の現状は上記の状態を絵に描いたようなものです。民衆の支持で当選したかのように言われているオバマ氏も、実は彼の最大の資金源が金融界だったことは先に紹介したチョムスキー講演でも明確に述べられているとおりです。

ですから民主党やオバマ大統領に裏切られたと感じた民衆が(米国では二大政党以外に選択肢がないわけですから絶望して)Tea Party Movement に走ったり、ジョー・スタックのように国税庁に自家用飛行機で自爆攻撃をかけるということにもなるわけです。

(オバマ大統領と金融界の結びつきについては、選挙直後の下記チョムスキー講演も参考になるはずです。)
ノーム・チョムスキー「これからどうなる?選挙、経済、世界」
http://www.democracynow.org/2008/11/24/noam_chomsky_what_next_the_elections
http://democracynow.jp/submov/20081124-2(上記講演に日本語の字幕を付けたもの)


ところでマイケル・ムーアは次々と国際的な映画賞を受賞した映画監督として有名ですが(国民皆保険を持たない米国民衆の惨劇を描いた映画『SICKO』も、2007年のカンヌ国際映画祭では特別招待上映された)、その彼も、二大政党しか選択肢を持てない米国の現状を次のように嘆いています。

MICHAEL MOORE: Well, the cynical answer that the Democrats, the Democratic Party and Obama would give you is that they know we have nowhere else to go, and so therefore they don't have to listen to us, and they can play it in the center, or even to the right, and where are we going to go?

これはムーアが、DemocracyNow!という番組で自分の人生を1時間近くにわたって語ったもの(Michael Moore on His Life, His Films and His Activism)の一部ですが、このなかで彼は、司会者ゴンザレスの質問に答えて、「皮肉にも民主党やオバマの現状が民衆にどこにも行き場のない閉塞感を与えている」と嘆いています。(the cynical answer that the Democrats, the Democratic Party and Obama would give you is that they know we have nowhere else to go)

Michael Moore on His Life, His Films and His Activism
DemocracyNow!,July 05, 2010
http://www.democracynow.org/2010/7/5/michael_moore_on_his_life_his

そして聴衆のひとりが「緑の党という選択肢もあるよ」(AUDIENCE MEMBER: Green Party. )と言ったのに答えて、さらに次のように続けています。

MICHAEL MOORE: Yeah, you know, Patti [Smith] and I, you know, were very vocal and worked for Ralph [Nader] back in 2000. You know, the way our system is rigged, it's not like other democracies where you have four, five, six political parties. You know, you watch the Canadian elections. All five political parties are at the debates. They all get an equal amount of air time. You know, it's a fairer system. Britain's going through it right now, and their election season will last four weeks. So, it's rigged against a third party.

かつて2000年の米国大統領選挙に、消費者運動で名声を馳せたラルフ・ネーダーが「緑の党」から出馬したこと、それをマイケル・ムーアやロック歌手パティ・スミスが応援していたことは、日本では全く知られていません。

しかも米国ではメディアが彼らを全く無視しましたから、票はほとんど集まりませんでした(日本の社民党や共産党のようなものです。ドイツでは緑の党が大きな力を持っているのと大違いです)。つまり米国では二大政党以外は無視するようメディア・コントロールが貫徹しているわけです。

それに反して「カナダでは多党制であり、すべての政党がメディアに登場して論争することができ、時間も平等に与えられている」とムーアは上記の番組で嘆いています。と同時に、民主主義という観点から見ると米国の選挙制度が「不正に操作されている」(is rigged)と、ムーアは怒っているわけです。

(ノーム・チョムスキーも先に紹介した下記講演で、先住民の大統領を誕生させたボリビアを典型例として、南米諸国の方が米国よりもはるかに民主的だと述べています。)
ノーム・チョムスキー「これからどうなる?選挙、経済、世界」
http://www.democracynow.org/2008/11/24/noam_chomsky_what_next_the_elections

以上のことからも分かるように、民主党・自民党にとっては米国流の二大政党制が理想でしょうし、赤字削減を口実に「消費税増税(民衆の増税)=大富豪・大企業の減税」を求める財界にとっても大歓迎でしょう。


以下、(下)に続く

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