貧困大国アメリカ(2) 路上生活の子ども160万人、23歳になるまでに若者の3人にひとりが刑務所へ! Schools-to-prison Pipeline 「学校から刑務所までの直通パイプライン」

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動画:OWS Thanks Our Supporters! (約6分)
[英語の意味が分からなくても Occupy Wall Street Movement の雰囲気がよく伝わってくるビデオだと思います。時間があれば見てください。]


http://occupywallst.org/
[2011 was a revolutionary year for a new movement that is changing the world. From NYC to Cairo, we are just getting started. We are still busy building this amazing movement, and we couldn't do it without you -- our supporters! Let's make next year even better!]

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<註> 
* 一般読者の皆さんへ: 以下では英文をたくさん引用してあります。しかし半分は自分のメモを兼ねています。時間のない方は飛ばして読んでください。
* 英語教師の皆さんへ: 授業における会話ブーム(しかも覚えてもすぐ忘れる)のおかげで、生徒どころか英語教師の「読む力」も大きな落ち込みを見せています。この英文記事が「読む力」の回復に少しでも役立てば幸いです。
* 教育研究者の皆さんへ: 最近わたしは、英語を学ぶ目的の一つは、アメリカの実像を知り日本を「第二のアメリカ」にしないことにある、と考えるようになりました。以下は、今まであまりにも「虚像のアメリカ」を教えてきた私の反省が込められています。
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前回のブログでは、「貧困大国アメリカ(1)」と題して、“ニューヨーク「路上生活者」が4万人に!” “アメリカの約半数(1億4千640万人)が「貧困層」に転落!!”というDemocracy Now!の記事を紹介しました。

タイム誌の表紙「今年のひと」が『抗議者』になったのも、このような状況に対する民衆の怒りを反映しています。

共和党はもちろんのこと、貧困層が多い黒人の期待を担って大統領に当選したはずのオバマ大統領=民主党すら、何もしてくれないことに対する民衆の怒りです(オバマ氏の巨額選挙資金の大半がウォール街から来ているのですから、当然といえば当然ですが)。

いまアメリカ全土で Occupy Movement が広がっていて、テントを張って「占拠」し抗議する民衆を、警官が唐辛子スプレーなどを使って排除し、テントを破り捨てるなど、警察の弾圧も一層の激しさを増しています。

このままいくと、アメリカもギリシャ、イタリアどころかエジプトやイエメン、バーレーン、シリアのような悲惨な状況になっていくかもしれません。というのは、前回の記事を紹介した直後に、Democracy Now!では次のような記事が出ているからです。

Study Finds 1.6 Million Children Homeless in 2010
http://www.democracynow.org/2011/12/20/headlines

この記事によると、昨年の統計でアメリカでは160万人の子どもたちがホームレスになり路上生活を強いられています。これは45人に1人の割合になるそうです。これは2007年の統計からすると33%も増加したことになります。

路上生活家族全国センター(The National Center on Family Homelessness)は、「このような状態を放置して何も対処しなければ、アメリカ社会を担う次の世代を失ってしまうことになる」として行動に乗り出すことを強く呼びかけています。

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Study Finds 1.6 Million Children Homeless in 2010
http://www.democracynow.org/2011/12/20/headlines

In other economic news, a study has found 1.6 million children in the United States, or one in 45 kids, were homeless last year. The National Center on Family Homelessness said its study is a "call to action for all of us to address child homelessness before we lose another generation." The group said the child homelessness rate has jumped 33 percent since 2007.
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だとすれば、Occupy Movementこそが、その一つの行動であるはずなのですが、ニューヨーク市長もオバマ大統領も、この運動を支援するどころか、密かに鎮圧策を練っているフシさえ見られます。

それどころか、ニューヨーク市長ブルームバーグ氏は、チョムスキーのいるマサチューセッツ工科大学(MIT)で講演したとき、ニューヨーク市警NYPDを「自分の軍隊だ」と私物化し、しかも「世界で7番目に大きい軍隊だ」と豪語しています。

Bloomberg: NYPD is "My Own Army"
http://www.democracynow.org/2011/12/1/headlines#11

ブルームバーグ氏は、この巨大な軍隊を使って、ズコッティ・パーク(またの名を「Liberty Plaza」という)その他で野営していた若者たちを、大量の逮捕者を出しながら徹底的に排除しました。同じようなことが北京や上海でおこなわれたら、日本やアメリカのメディアは、どのように騒ぎ立てるでしょうか。
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Bloomberg: NYPD is "My Own Army"
http://www.democracynow.org/2011/12/1/headlines#11

New York City Mayor Michael Bloomberg boasted to an audience at MIT Tuesday night that the New York City Police Department is his own personal army. Bloomberg said, "I have my own army in the NYPD, which is the seventh biggest army in the world."
  The mayor has been accused of using New York City’s massive police department as his own private force to clear out Occupy Wall Street protesters from their home base in Lower Manhattan and execute scores of arrests throughout the city.
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つまり、ニューヨーク市長ブルームバーグ氏は、ウォール街の悪行を取り締まって貧困を撲滅する政策をすすめるよりも、「4万人にも達したニューヨークの路上生活者」を何とかしろと抗議する若者たちを鎮圧する方を選んだのでした。

ところで、アメリカで「路上生活の子ども160万人」に達したという記事が載った同じ日のDemocracy Now!(12月20日)に、もう一つ次のような記事が載っていました。

Study: One-Third of Young People Will Be Arrested Before Age 23
http://www.democracynow.org/2011/12/20/headlines

この記事によると、アメリカでは「23歳になるまでに若者の3人に1人が刑務所行きになるだろう」と述べています。

この研究では、交通違反などの軽微な犯罪を除いて、逮捕されたものを調査した結果、逮捕者の「30.2%から41.4%が」「8歳から23歳まで」の若者だったというのです。

いまアメリカでは刑務所が民営化され、しかも囚人労働が「労働組合が作られる心配もなく、ストライキもあり得ないので、安い労働力の源泉として重宝されている」(堤未果『貧困大国アメリカ』Ⅱ、岩波新書)といいます。

ですから、「23歳になるまでに若者の3人に1人が刑務所行きになるだろう」という見通しは、大企業にとってこれほど美味しい話はないでしょう。

マイケル・ムーア監督の映画Capitalism: A Love Story (2009)『キャピタリズム:マネーは踊る』の中でも、裁判官が民営化された刑務所からお金をもらって、微罪の若者を刑務所に送り込む実話が出てきて驚かされました。

が、アメリカでは裁判官が株の売買をしていても当然という雰囲気がありますから、驚く方がおかしいのかも知れません。
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Study: One-Third of Young People Will Be Arrested Before Age 23
http://www.democracynow.org/2011/12/20/headlines

Another study found about one-third of young people will be arrested before they turn 23. The study examined arrests, not including minor traffic violations, for kids ages eight to 23. Researchers said they found between 30.2 percent and 41.4 percent had been arrested.
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ところで、「23歳になるまでに若者の3人に1人が牢獄行きになるだろう」という記事を読んですぐに思い浮かんだのは、カンザスシティ・スター紙の記者ルイス・デューグィッド氏による「学校から刑務所までの直通パイプライン」(the schools-to-prison pipeline)ということばでした。

Amidst Soaring Poverty, New MLK Monument Should Be Seen as "Testament to [His] Unfinished Work"
http://www.democracynow.org/2011/10/19/amidst_soaring_poverty_new_mlk_monument

デューグィッド氏は上記インタビューの中で、「学校から刑務所までの直通パイプライン」について次のように語っています(これは、貧困に喘ぐ黒人清掃労働者のストライキを支援中に暗殺されたキング牧師の、銅像除幕式に併せて報道されたものです)。

「アメリカでは刑務所の経営者は、小学校3年生で刑務所にどれだけのベッドが必要かを算出できる。というのは、3年生で脱落した生徒は、ほぼそのまま刑務所行きになるからだ。」

「ジェファーソン市の刑務所内にアメリカ黒人地位向上協会支部(NAACP branch)があり、そこの黒人たちと話してみると、とても頭が良くて明るい。しかし、彼らは学校から見捨てられている。」

「このような現状を何とかしなければならない。いまアメリカでは230万人の囚人がいるが、その大多数は黒人かラテン系アメリカ人だ。この状況はおさまる気配がなく放置できない状態だ。」

チョムスキーの本“FAILED STATE”『破綻するアメリカ、壊れゆく世界』(集英社, 2008年)には、「国民の人口比からして、アメリカほど囚人数が多い国は、他の発達した資本主義国には見当たらない」ということばがあります。

しかし、「刑務所ビジネス」を求めるひとにとっては、これは「改善してはならない」「維持しなければならない」状況ことになりそうです。

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Amidst Soaring Poverty, New MLK Monument Should Be Seen as "Testament to [His] Unfinished Work"
http://www.democracynow.org/2011/10/19/amidst_soaring_poverty_new_mlk_monument

Unfortunately, they say that by third grade the prison system knows how many beds that they'll need, because of the number of kids who are failing at that point.
  I'm going to go to Jefferson City today to speak to the men in an NAACP branch of the prison in Jefferson City. And these are individuals who are extremely intelligent, very bright, but unfortunately, the schools let them down when they were trying to get through the system as students.
  And we need to fix that. I mean, we're talking about 2.3 million Americans who are in prison. And the majority of those individuals are African Americans and Latinos. This is an unsustainable situation that we have and a trend that isn't going to abate.
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<註> 
カンザスシティ・スター紙の記者ルイス・デューグィッドLewis Diuguid氏には次のような著書があります。『Discovering the Real America: Toward a More Perfect Union 』『A Teacher's Cry: Expose the Truth about Education Today』
 また、ブッシュⅡ大統領のNo Child Left Behind Act「落ちこぼれゼロ法」の結果、競争とテストが激しくなり逆に学力低下が起きていること、それをオバマ氏がチャータースクール・スクール政策でさらに悪化させていることなどについては、機会を改めて詳述したいと思います。ここでは、大阪の橋下知事(新大阪市長)が似たような政策の唱道者であったことを指摘するにとどめます。
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以上はアメリカの話でしたが、これは他人事ではなく、すぐ明日の日本の姿ではないでしょうか。というのは、民主党野田政権は、自民党小泉政権のときと同じ政策、あるいはそれ以上の「市場原理主義」政策で、日本の経済運営をする方向を見せているからです。

アメリカ主導のTPP(Trans-Pacific Partnership)いう政策そのものが、ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』(岩波書店、2011)の言う「惨事便乗型資本主義」を地で行くものですが、これがどんなに悲惨な様相を見せたかは、既にチリやアルゼンチンで実験済みです。

ギリシャの経済破綻も、前政権がウォール街から経営指南を受けた結果でし。それの尻ぬぐいをパパンドレウ首相が背負わされ、結局は退陣ということになりましたが、日本のマスコミは「ギリシャは公務員天国だから財政破綻した。日本もこのままでは第2のギリシャになる」と言わんばかりです。

しかしギリシャ国民にとっては、前政権が「市場原理主義」政策をとり、アメリカ金融資本ゴールドマンサックスなどに食いものにされたことは、明白な事実でした。だからこそ、「富裕層が支配して政権の失敗をなぜ国民が支払わなければならないのか」と怒って、ストライキや「占拠」運動が続いているのです。

「ギリシャの民衆は欧州全体のために闘っている」タリク・アリ
http://democracynow.jp/video/20100511-2 (日本語字幕つき、14分)
ギリシャ危機の渦中から~続:財政危機はなぜ起こったのか? 有馬めぐむ
http://markethack.net/archives/51562214.html

同じようなことは、年金資金をめぐって日本でも起きていました。その証拠に、東京新聞の次の記事を見てください。

年金運用3.7兆円赤字 欧州危機で外国株下落
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011120302000028.html#print
東京新聞2011年12月3日 朝刊

にもかかわず「日本もこのままでは第2のギリシャになる」と公務員たたきに狂奔しているのは、福島原発事故で嘘をつき「御用機関」になってしまっている大手マスコミが、またもや同じ嘘をついているとしか私には思えません。

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上記の東京新聞記事を要約すると次のようになります。

「厚生年金と国民年金の積立金を市場運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」は2日、今年7-9月期の運用結果について、3兆7326億円の赤字になったと発表した。」

「財投債(財政融資資金特別会計が資金調達のために発行する国債)を除く市場運用分の収益額の内訳は下記のとおり。
赤字→外国株式が2兆7350億円、国内株式が1兆2698億円、外国債券が4061億円
黒字→国内債券は6184億円のみ」

年金資金などの国家財政を株で運用すれば破産する危険があることは、「金融立国」をめざしたアイスランドが2009年に国家破産した例をみれば明らかです。また、最近でも東京の魚河岸(うおがし)で働くひとたちの積み立てた年金が株の売買の失敗で消し飛んでしまった例があります。

ところが驚いたことに、上記の東京新聞記事を読むと、「年金積立金管理運用独立行政法人」が巨額の赤字を出したのは今回だけではなかったのです。それを東京新聞は次のように述べています。

「四半期ごとの運用結果では、リーマン・ショックの影響で08年度10-12月期に5兆6601億円の赤字となったケースが最悪。今回は、01年度に年金積立金の市場運用を開始して以降、四半期別では四番目に大きなマイナスとなった。」

これだけ何度も経営に失敗していれば、ふつう経営者はすぐ首になるはずです。それどころか庶民の税金を使い込んだのと同じですから刑務所に行っても当然だと思われるのですが、東京新聞によれば、「年金積立金管理運用独立行政法人」は平然と次のように嘯(うそぶ)いているだけなのです。

「リーマン・ショックと比べ、欧州危機の積立金運用に与えるリスクは低い。直ちに年金給付に影響することはない。」

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しかし、このような大事件をNHKや民間の大手メディアは、ほとんど問題にしていません。

その一方で大手メディアは声高に「国家財政が赤字だから年金資金も枯渇する」「社会保障費を確保するためにも消費税増税を!」の大合唱です。

私たちは大手メディアに騙されない眼をもたなければいけませんし、タイム誌の言うPROTESTOR『抗議者』となり、もっと怒らなければいけない―これが師走も押し迫った私の思いです。

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<註> 商品先物及び金融派生商品を専門とする証券会社だったMFグローバル社がこの2011年10月に倒産しました。これは、2008年のリーマン・ブラザーズ倒産以降で最大の規模の倒産だそうです。
 このMFグローバル社の経営トップの座に就いていたジョン・コーザイン氏が12月13日の連邦議会で「本来は分離・隔離されていなければならない顧客資金のうち12億ドルをマネーゲームに投じて倒産した」ことについて長時間の追及を受けました。

Corzine Grilled over MF Global Collapse After Witness Suggests Knowledge of Misused Funds
http://www.democracynow.org/2011/12/14/corzine_grilled_over_mf_global_collapse

上記のインタビューで、投資銀行員からジャーナリストに転じたノミ・プリンズ女史は次のように述べています。
 「いま聴いているのは自分の責任と説明義務をすり抜けて逃げ切ろうとしている者の話です。それはサブプライム危機や過去の他の危機の際にCEOたちがおこなったこととほとんどまったく同じ話です」
 「Occupy Movementで、このアメリカで5500人もの逮捕者が出ていますが、Wall StreetからはCEOからも上級役員からも1人も逮捕者が出ていないのです。私たちの経済やヨーロッパの経済から数兆ドルものカネをせしめた連中ですよ。
 「そして彼らが今度はまた世界をぐるっと回ってアジアに対して同じことをしようとしている。それってとんでもなくひどいことじゃありませんか」

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