宣戦布告なしのイラン戦争!? 「アメリカ、特殊部隊を送り込み反政府集団に資金援助!」「特殊部隊がテヘランまで出かけて行って、道路標識を放射線探知機に取り替える!」

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動画パティ・スミス「民衆には力がある」(約5分)
[相変わらず、この映像ではイラクとブッシュ氏が登場しますが、これをイランとオバマ氏と読み替えてください。今から思うとブッシュ氏は「言行一致」で本当に可愛いひとでしたね]


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相変わらず『Voices of a People's History of the United States』の翻訳「索引づくり」に追われています。やってみると「役に立つ索引」というものをつくるのが、いかに難しいかを痛感させられています。

ところで、脱原発運動も時間が経つと、どんどん風化していきます。恐ろしいことに放射能汚染が深刻であるにもかかわらず、「故郷に帰ろう」という運動すら起きています。

政府・東電の巻き返しなのでしょうか、そんなときに下記の企画があり、まさに時宜を得たものだと思いました。下記のHPには全国同時の一斉行動についても情報が載せられています。

【開催迫る!】2.11全国一斉!さようなら原発1000万人アクション
http://sayonara-nukes.org/2012/01/0211action_a/

他方、世界情勢を見ると、シリアを初めとして、ここも混乱状態が続いています。イランも「いつ戦争になってもおかしくない」という状況です。「終末時計」の針がまた進みそうです。

そこで以下では、イラン情勢に焦点を合わせて思いつくことを若干、書かせていただきます。私に許されている時間があまりないので、例によってメモ風・走り書きになってしまいますが、お許しください。

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* 一般読者の皆さんへ: 以下では英文をたくさん引用してあります。しかし半分は自分のメモを兼ねています。時間のない方は飛ばして読んでください。
* 英語教師の皆さんへ: 授業における会話ブーム(しかも覚えてもすぐ忘れる)のおかげで、生徒どころか英語教師の「読む力」も大きな落ち込みを見せています。この英文記事が「読む力」の回復に少しでも役立てば幸いです。
* 教育研究者の皆さんへ: 最近わたしは、英語を学ぶ目的の一つは、アメリカの実像を知り日本を「第二のアメリカ」にしないことにある、と考えるようになりました。以下は、今まであまりにも「虚像のアメリカ」を教えてきた私の反省が込められています。
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イランにたいする経済制裁が中東危機を強めていることは以前にも書きました。イランがどこか他国を侵略したり攻撃しそうだというのであれば、制裁する理由は分からないではありません。

しかし、NPT(核拡散防止条約)に加盟していてIAEAの査察も受けています。そして世界的に著名なジャーナリスト=セイモア・ハーシュが言っているように、イランは他国を侵略するどころか核兵器を開発しているという兆候は全く見られません。

その一方で、核兵器をもちNPTにも加盟していないイスラエル、パキスタン、インドは全くの野放し状態なのですから、アラブの一般民衆に怒りが蓄積しているのは、当然のことでしょう。

民生用の原子炉であっても、それを核兵器に転用することは可能だというのが、イスラエルやアメリカの言い分のようですが(IAEAの新しい事務局長・天野氏もそれに同調しています)、その言い方で言えば、日本も同罪ということになります。

それどころか日本政府が脱原発を鮮明に打ち出せないのは、内部に「憲法9条を廃棄し、日本も核兵器を保有すべし」という勢力がいるからだということは、今では誰でも知っている事実になりつつあります(有馬哲夫『日本テレビとCIA』新潮社、2006、有馬哲夫『原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史』新潮新書、2008)。

日本政府・文科省が、莫大なお金を浪費しながら「もんじゅ」を廃炉にするという方針を打ち出せないのも同じ理由によるのでしょう。
(槌田敦2007「臨界事故、四つの“お粗末”=核兵器製造のために原発はつくられた」『これから起こる原発事故、改訂版』別冊宝島1649号:66-75)

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このような情勢の中で、アメリカはさらに経済制裁を強める姿勢を示しました。イランの中央銀行や他の金融機関と取引をする、いかなる個人・企業も、厳しい制裁を覚悟せよというものです。

U.S. Orders Sanctions on Iranian Central Bank
http://www.democracynow.org/2012/2/7/headlines#8
President Obama issued an executive order Monday outlining new sanctions against the Central Bank of Iran. Iran dismissed the move as part of a "psychological war." The sanctions require any U.S. person or corporation to freeze property or interests that belong to the government of Iran, its Central Bank or any other Iranian financial institution.

イランは、これは「一種の心理戦争」だとして撥ねつけましたが、これにたいする反撃としてホルムズ海峡封鎖と行動にイランが踏み切れば、「待ってました!」とばかりにアメリカやイスラエルはイラン攻撃に踏み切るでしょう。

かつて日本が、アメリカによる「南太平洋における石油輸送禁止」という経済制裁を受け、それに耐えかねて「真珠湾攻撃」に踏み切ったとき、「待ってました!」とばかりにアメリカは日本の攻撃に乗り出しました(ハワード・ジン『甦(よみがえ)れ、独立宣言』人文書院、1993:118)。

このような「核兵器開発」を口実にしたイランにたいする経済制裁が、新たな戦争を開始するための口実にすぎないということは、アメリカ国民にも理解されているようです。「イラク戦争と同じことをまた繰り返すのか!?」というわけです。下記のニュース(2012/2/6)では全米で80カ所にわたって反戦デモがおきています。

Protests Against Iran War Held in 80 Cities
http://www.democracynow.org/2012/2/6/headlines#8
Antiwar groups held rallies on Saturday in about 80 cities across the United States protesting a possible strike on Iran. The slogan of the day was "No war, no sanctions, no assassinations, and no intervention."

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上記に見るとおり、この反戦デモのスローガンは "No war, no sanctions, no assassinations, and no intervention." でした。「戦争するな、経済制裁するな、暗殺するな、干渉するな」です。このスローガンに見るとおり、アメリカ人にとってもイラン科学者の暗殺は「アメリカとイスラエルの共謀」と映っているようです。

ロサンゼルスの集会に参加したイラン系アメリカ人のAli Reza氏は、参加した理由を次のように述べています。

「アメリカが中東に干渉する理由は唯一つだ。中東の石油を自分の支配下に置き、それを管理することだ。それは同時に興隆しつつある二つの大国、中国とインドを自分の統制下におくことも視野に入れているのだ。」

Protests Against Iran War Held in 80 Cities
http://www.democracynow.org/2012/2/6/headlines#8
Ali Reza: "In my opinion, America has one and only one goal in that region: to control the, basically, oil of the region, to put—to control—even by extension, to control China and India as two great emerging power. So therefore, I think this particular scenario, political scenario, whether be it sanction and be it war, is exactly for the same reason." (Video courtesy of Global Voices for Justice)

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また同日付の Democracy Now!の記事によれば、ニューヨーク「タイムズスクエア」の反戦集会では、コロンビア大学のHamid Dabashi教授までも参加して、なぜ自分がここに来たかを次のように述べています。

 「今また戦争が起きようとしている。今度はイラクではなくイランだ。いまイランにたいして厳しい経済制裁が加えられようとしている。これはイラン民衆にとっては耐えがたい苦痛だ。」
 「今は2月だ。これは2003年3月20日のイラク戦争開始を思い出させる。あのときも何万人ものひとがニューヨークで反戦集会に参加した。しかしブッシュは戦争に踏み切り、今や10年近くだ。そして、また新たな戦争を起こそうとしている。」

コロンビア大学といえば日本の慶應・早稲田にあたる名門大学ですが、その大学教授がみずから反戦集会に参加して憂慮を表明しているのですから、非常に深刻な事態であることが分かります。

Protests Against Iran War Held in 80 Cities
http://www.democracynow.org/2012/2/6/headlines#8

Columbia University Professor Hamid Dabashi took part in the New York rally at Times Square.
Hamid Dabashi: "We are here today to protest against the possibility of war, yet another war in the Middle East, this time against Iran.
  When I say 'possibility,' there are many reasons to believe the war has already started. There are severe, crippling economic sanctions imposed on Iran, for which ordinary Iranians are suffering.
  It is now February, reminiscent of February 2003, when hundreds of thousands of New Yorkers were out demonstrating against the war in Iraq, and yet again, we are, almost 10 years later, fearful for a war in Iran.
  We are here asking for peace—namely, no war; justice, namely, in Iran; and democracy for Iran."

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ところが、アメリカの大手メディアも日本の大手メディアも、このようなアメリカ全土に広がっている反戦集会を、全く報道しません。

共和党の候補者がオバマ氏の医療政策を「オバマ・ケア」として一斉に攻撃していることは報道されても、実は「オバマ・ケア」なるものは、共和党の候補者として先頭を走っているロムニー氏がマサチューセッツ州知事だったときに採用した医療政策を、ほとんどそのまま借用していることも、全く報道されていません。

いまアメリカは深刻な経済危機で、医療費や払えなかったり、住宅ローンを払えないため住宅を差し押さえられて、アメリカ全土にホームレスが溢れていいます。アメリカ全土で、いわゆる「占拠」運動が広がったのも、このためでした。ホームレスのひとたちは住む家がないから抗議の意味を込めて、あちこちを占拠してテント生活を始めたのです。

ところがオバマ政権は、この全土に広がる「占拠」運動を根こそぎ排除することを、いま始めています。これでは、シリア政府が民衆を弾圧しているとして、それを口汚く非難しているクリントン国務長官の言は、そのまま自分に跳ね返ってくるのではないでしょうか。まさに「天に唾するもの」です。

しかし、ある国が戦争を始めるときは何か国内に大きな問題を抱えているときが通例です。ブッシュ氏がアフガン戦争を開始したときは、氏の人気が最底辺にあるときでした。それが9・11事件とそれを契機にしたアフガン戦争で人気は急上昇しました。

いまオバマ氏が戦争をしたい理由は、この不況と全土に渦巻く不満であるではないかと疑われても仕方がないでしょう。

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オバマ氏がイランと戦争をしたがっていることを疑わせる根拠は、もう一つあります。それはアメリカ全土でシーア派イスラム教徒にたいする包囲網が急速に強まっていることです。

最近、Democracy Now!(2012/2/3)によって暴露された「ニューヨークにおけるシーア派モスク監視計画」はその典型例と言えるでしょう。

NYPD Muslim Spy Scandal Grows with Newly Revealed Plan to Target Shiite Mosques
http://www.democracynow.org/2012/2/3/nypd_muslim_spy_scandal_grows_with
  New revelations have emerged about the New York City Police Department's secret program to spy on Muslim communities.
  The Associated Press has just uncovered a confidential NYPD plan from 2006 to engage in targeted surveillance of Shiite mosques following increased tensions between the U.S. and Iran, the latest revelation on its secret intelligence operations focused on Muslim neighborhoods.

ご存知のとおり、イランという国は世界のイスラム教徒のなかでもシーア派が圧倒的多数を占める国です。ブッシュ氏がアフガン戦争を始めたときからアメリカ国内のイスラム教とが監視下に措かれていたことは事実ですが、特にシーア派に焦点が当たるようになったことは最近のことです。

上記の、AP通信の記者が語っているものを読むと、驚くべきことが書いてあります。ニューヨークのシーア派居住区では(シーア派の住民の中にスパイを養成して)シーア派の住民すべてについて監視がつき、住民のすべての情報がニューヨーク市警を通じてCIAに流れているというのです。

名前をイスラム風に変えたものは「イスラム信仰が強まったのだから危険だ」とされ、逆にイスラム風だったのをアメリカ流の名前に変えると、「何か危険なことを企てるために目立たない名前したのではないか」というわけで、どちらにしてもよいことは一つもないわけです。

AP通信によると、CIAは国内で秘密活動をすることは法律で厳しく禁じられているはずなのに、いまニューヨークではCIAとNY市警の秘密協同活動が深く静かに進行しているといいます。ムスリム組織と公民権運動組織が合同で2月2日、合同でNY市警本部長レイ・ケリーの即時辞任を再度要求しました。

興味深いことに、FBIが自分の領分を侵されたとして、CIAやNY市警と内紛状態にあることも、上記で報道されています。漫画のような話ですが、同時に聞き捨てならない話です。「何人も裁判所の令状なしには身辺調査をされてはならない」というのが、憲法で保障された人権規定だからです。

かつて日本が真珠湾を攻撃したとき、太平洋岸の日系人はアメリカ国籍をもっていたにも関わらず、根こそぎ逮捕されて強制収容所に送られました。しかも、この強制収容の動きは真珠湾攻撃の翌日から一斉にスタートしましたから、事前に準備されていたとしか考えられません。

このことを考えると、現在のCIAとNY市警の秘密協同活動は、やはりイランとの戦争準備だと考えるのが自然だと思うのです。

アメリカの経済制裁や軍事攻撃に正当な理由がなければ、イラン国内だけでなく、アメリカ国内にいるイラン人やイラン系アメリカ人のなかに怒りが蓄積するのは当然だからです。
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<註> いまアメリカのイスラム教徒にたいする動きは、かつて真珠湾直後に日本人にたいしておこなわれた「住民全員の強制収容」にまでは至っていません。しかしこれは、戦後、これにたいして「ドイツ系やイタリア系ではなく日系人だけが収容所送りになった。あれは人種差別だ」という厳しい批判がおこり、アメリカ政府が謝罪と補償に追い込まれたからです。

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アメリカがイスラエルと一緒になって「核兵器開発」を口実に、イラン攻撃の機会をうかがっていることは、先のブログでも紹介したとセイモア・ハーシュ氏への下記インタビュー記事からもうかがい知ることができます。

Seymour Hersh: Despite Intelligence Rejecting Iran as Nuclear Threat, U.S. Could Be Headed for Iraq Redux
http://www.democracynow.org/2011/6/3/seymour_hersh_despite_intelligence_rejecting_iran

これについては、前回のブログでもURLだけを紹介したのですが、この内容はきちんと本文で紹介すべきだとの意見をいただきましたので、以下でもう少し詳しく紹介します。

ベトナムの「ミライ村虐殺事件」を暴露して世界を揺るがせたセイモア・ハーシュ氏は、今回も驚くべき事実を暴露しています。氏によれば、アメリカはイランで次のような挑発活動をおこなっています。

「イランに特殊部隊を送り込み、クルド人やアゼリー人などの反政府集団に多額の資金を渡していただけでなく、国外の亡命者にも多額の資金を渡していた。」

「空からは、砂漠や乾燥地域に、核兵器を隠してある秘密の標識や排気口がないかを、偵察衛星で見張っている。しかし懸命に探しても何も見つからない。」

「それどころか特殊部隊がテヘランまで出かけて行って、道路標識を放射線探知機に取り替えたり、建物のブロックを積み替えたりしていた。」

しかし、こんなに懸命な努力をしても、アメリカはイランが核開発をしている証拠を何一つ見つけることができなかったのです。

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Seymour Hersh: Despite Intelligence Rejecting Iran as Nuclear Threat, U.S. Could Be Headed for Iraq Redux
http://www.democracynow.org/2011/6/3/seymour_hersh_despite_intelligence_rejecting_iran

SEYMOUR HERSH: ..., And we had special forces units in there since '04, really, perhaps as late as — early as '05, maybe, looking. We've been paying off people — the Kurds, the Azeris, the opposition groups.
We've been giving a lot of money to various defectors. We've been looking with satellites for telltale signs, air holes, air vents, somewhere in the desert or somewhere in an arid area. And we've found nothing, not for lack of trying. We looked very hard. And there's just no evidence on the inside.

JUAN GONZALEZ: Sy Hersh, your article details some extraordinary efforts by the United States. You talk about the special forces operations actually replacing street signs in Tehran with radiation detectors and replacing bricks in buildings. Could you talk about some of that? I mean, because that's enormous risk that they're taking actually going into the country and doing that.

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<註> ハーシュ氏が雑誌『ニューヨーカー』に発表した詳細記事は下記を御覧ください。
"Iran and the Bomb: How Real is the Nuclear Threat?" By Seymour Hersh (New Yorker, June 6, 2011)
http://www.newyorker.com/reporting/2011/06/06/110606fa_fact_hersh
字幕つき動画「イランの核兵器開発疑惑は米国の諜報機関によって否定されている」
http://democracynow.jp/video/20110603-1(13分)

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私には、「特殊部隊を送り込み、クルド人やアゼリー人などの反政府集団に多額の資金援助をする」という行為は、すでにアメリカは「宣戦布告なし」でイランと戦争状態に入っているとしか思えません。

イランが同じことをアメリカでおこなっていることが暴露されたら、世界中が大騒ぎになるでしょう。それどころか、それを口実にアメリカは、とっくの昔に、イランを爆撃していたかも知れません。

ところが日本は、中国や北朝鮮の言動には、どんなに小さいことでも大騒ぎするのに、上記のような事実をどこのメディアも報道していません。

憲法9条をもつ国の政府が、いつまでも大国アメリカの言動に振り回されずに、平和憲法に則った行動をすれば、人殺しに荷担することもなくなりますし、自衛隊を海外に派遣する費用も節約できます。

また、アメリカはどんな小国にも基地借用代は必ず払っているのですから、日本だけが大国の軍隊を血税で養う必要はないはずです。つまり、相手にきちんと正当な要求をすれば、消費税を引き上げなくても財源はあるのです。
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