世界平和のために何ができるか、元首相鳩山氏のイラン訪問をめぐって考えたこと、アメリカはネバダの砂漠で訓練した「テロ集団」をイランに送り込んでいる!?

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動画「メルボルンからの脱原発メッセージ」(10分弱)
<解説> 先住民を被曝させながら大量のウランを産出・輸出しているオーストラリアの地から、脱原発をめざして闘っている日本の民衆への熱いメッセージが、若者やお年寄りによって次々に語られていき、感動的です。字幕付きですが、最後の「ゲンパツ・ハンタイ!」の一斉唱和だけが日本語になって、一瞬ここはどこだ!?と思わせる趣向も抜群でした。

 
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やっと『Voices of a People's History of the United States』(仮題『肉声でつづる民衆のアメリカ史』)の「索引づくり」が終わって、その原稿を出版社に送り届けたところです。

しかし、今までの疲れが蓄積していたためか、たいして重いものをもたないのに腰痛(ぎっくり腰)になり、一日の大半をベッドで寝起きする生活をすることになってしまいました。今日は少し体調もよくなり、いまパソコンに向かっているところです。。

まだ翻訳『肉声でつづる民衆のアメリカ史』の「あとがき」を書く仕事が残っているのですが、元首相の鳩山氏が与野党のみならずNHKや朝日テレビなど大手メディアからも袋だたきに会っているのを見ていると、このままでは放ってはおけないと思うようになりました。

私が病躯に鞭打ってでも今のうちにどうしても書いておきたいと思ったのは、4月10日(火)のDemocracyNow!に、ジャーナリストのセイモア・ハーシュのイランをめぐる非常に重大なニュースが載っているにもかかわらず、どこの大手メディアも、この記事を紹介していないからです。

このニュースが古くなってしまわないうちに一刻も早く紹介したいと思ったのは、日本の政府だけでなく日本の大手メディアも、原発事故で真実を伝えてこなかったことを反省するのではなく、いまだに同じ姿勢を続けていることを、非常に深刻な事態だと考えるからです。

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* 一般読者の皆さんへ: 以下では英文をたくさん引用してあります。しかし半分は自分のメモを兼ねています。時間のない方は飛ばして読んでください。
* 英語教師の皆さんへ: 授業における会話ブーム(しかも覚えてもすぐ忘れる)のおかげで、生徒どころか英語教師の「読む力」も大きな落ち込みを見せています。この英文記事が「読む力」の回復に少しでも役立てば幸いです。
* 教育研究者の皆さんへ: 最近わたしは、英語を学ぶ目的の一つは、アメリカの実像を知り日本を「第二のアメリカ」にしないことにある、と考えるようになりました。以下は、今まであまりにも「虚像のアメリカ」を教えてきた私の反省が込められています。
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ジャーナリストのセイモア・ハーシュは、既に過去のブログでも書きましたが、ベトナム戦争の時に米軍によるミライ村の大虐殺を暴露して有名になったベテラン記者です。

これまでにもピューリッツァー賞など数々の賞を受賞してきましたが、その彼がニューヨーカー誌のブログへの新しい記事 "Our Men in Iran?"(「米がイランに送り込んだ戦力?」)で、ブッシュ政権が、米国務省の外国人テロリストのリストにあるイランの反体制組織の訓練を秘密裏におこなっていたことを明らかにしました。

以下は、その記事を元にしてAmy Goodman(Democracy Now!)がセイモア・ハーシュにインタビューをしたものです。

Training Terrorists in Nevada: Seymour Hersh on U.S. Aid to Iranian Group Tied to Scientist Killings
http://www.democracynow.org/2012/4/10/training_terrorists_in_nevada_seymour_hersh

このインタビューで、ハーシュは、米統合特殊作戦コマンド (the U.S. Joint Special Operations Command /JSOC)が、2005年からネバダ州の極秘施設で、イスラム人民戦士機構(ムジャヒディン・ハルク/MEK)の工作員らを訓練していたことを暴露しています。

ハーシュによると、MEKのメンバーはオバマが就任する直前まで、通信傍受、暗号文、兵器、小戦術部隊の訓練をネバダ州で受けていました。

しかし、ハーシュによると、MEKは1997年以来、アメリカ政府によって外国人テロリスト組織としてリストされており、1970年代の6人の米国市民の殺害から最近の一連のイラン人核科学者暗殺まで、多くの攻撃に関わっています。

しかも、この暗殺に自分も大きく貢献したのだ(つまりMEKの訓練に自分も関わった)と言わんばかりに、この暗殺についてイスラエルが自慢げに語っていることも、ハーシュは紹介しています。

下記の英文記事で "the Brits" とあるのは、「イギリス(人)」のことで、これを読むと、イランのなかで撹乱工作をしているのは、アメリカやイスラエルだけではなく、イギリスも
長年にわたってイラン国内で反体制分子に情報その他の援助を与えて撹乱工作をしてきたことが分かります。

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  So Israel has had a tremendous role in supporting the MEK. I wouldn't be surprised if Israel was also deeply involved in helping us or abetting with the training inside—in Nevada. That would make a lot of sense.
  And Israel certainly is a key player right now in the MEK activities, along with us, and for many years along with the Brits, who were also involved in providing signals intelligence inside Iran or collecting intelligence.
  The good thing about having Britain around is they're actually more hated than we are in the Middle East because of their long history of exploitation. That's always a plus.
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さらにハーシュは、イスラエルの諜報機関の役割についても考察し、オバマ政権はこの訓練のことを知っていたと指摘します。

「なぜなら、オバマ政権はMEKに関して、そしてイラン国内での作戦に関して、この分野でブッシュ前政権が何をしてたかという情報にアクセスできるからです」。

This administration knows an awful lot about it, because they have access to what was going on in the previous administration in this area in terms of the MEK, in terms of operations inside Iran, and they're still going on.

もっと驚いたことは、民主党であろうが共和党であろうが、自らがテロ集団と指定してしていたはずのMEKから金をもらって、MEKの活動を擁護する発言をしている大物政治家が、大勢いるということです。以下は、そのリストの一部です。

two former CIA directors(元CIA長官),James Woolsey and Porter Goss
former Homeland Security Secretary(元国土安全保障庁長官)Tom Ridge
former New York City Mayor (元ニューヨーク市長)Rudolph Giuliani
former Vermont Governor (元バーモント州知事)Howard Dean
former Attorney General (元司法長官)Michael Mukasey
former FBI Director (元FBI長官)Louis Freeh
former U.N. Ambassador (元国連大使)John Bolton
former Pennsylvania Governor (元ペンシルバニア州知事)Ed Rendell

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Although the revelation that the U.S. government directly trained the MEK comes as a surprise, it's no secret the group has prominent backers across the political spectrum. Despite it's designation as a "terrorist" organization by the State Department for 15 years, a number of prominent former U.S. officials have been paid to speak in support of the MEK.

The bipartisan list includes two former CIA directors, James Woolsey and Porter Goss; former Homeland Security Secretary Tom Ridge; New York City Mayor Rudolph Giuliani; former Vermont Governor Howard Dean; former Attorney General Michael Mukasey; former FBI Director Louis Freeh; former U.N. Ambassador John Bolton; and former Pennsylvania Governor Ed Rendell.
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しかしオバマ氏は、これらのことに全く口をつぐんだまま何も言わないし、大手メディアも何も質問しないことが、驚きでもあるし大問題でもあると、ハーシュは指摘しています。

このインタビューでは他にも驚くべき事実がたくさん紹介されているのですが、それは当該サイトをのぞいていただくことにして、ここでは以上の事実が何を意味しているのかを考えてみたいと思います。

まず第1に指摘しておかなければならないのは、アメリカやイスラエルは「宣戦布告なき戦争」をイランにたいしておこなっていることになりはしないかということです。それは、アメリカやイスラエルがおこなっているのと同種のことを、イランがアメリカにたいしておこなったらどうかと考えてみればすぐ分かることです。

たとえば、アメリカによって包囲網を確実に強化されている中国が、不満をもっている在米イスラム教徒を中国で訓練してアメリカに送り返し、暗殺事件を起こしたり爆発事件を起こしたことが発覚した場合、どんなことが起きるでしょうか。

911事件のとき、アメリカはビンラディンが犯人である確証がないにもかかわらず、単にビンラディンを匿ったという理由だけでアフガニスタンを爆撃しました。

このときのタリバン政府は、「ビンラディンが911事件の犯人である証拠を見せてくれれば、ビンラディンをアメリカに引き渡しても良い」と言っていたにもかかわらず、アメリカはアフガンを爆撃したのです。911事件の犯人のほとんどがサウジアラビア人であったにもかかわらず、サウジは爆撃の対象になりませんでした。

(アフガン人の誰一人として911事件に関わっていなかったにもかかわらず、アフガンが爆撃の対象になったのです。)

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では、今度のイランの場合はどうでしょうか。ハーシュ記者によれば、アメリカは、イラン内部で様々なテロ行為をはたらき、政情を不安定化させる行動を取っているグループを支援し、しかもそれはMEKだけでなく、クルド人やアゼリ人など、イラン国内の様々なグループを使っておこなっているのです。

And so, we have a lot of reason to rely on them, as we rely on other dissident groups inside Iran—the Kurds, the Azeris and others—to cause—basically, to try and keep some sort of internal chaos and mayhem going inside the country.

これは、イランにとっては明らかな内政干渉であり、「秘密の戦争」を仕掛けていると受け取られても仕方がないのではないでしょうか。

おまけに宇宙衛星を使って空から監視しているだけでなく、(ワシントンポストによれば)無人偵察機Droneを使って領空侵犯を繰り返しながら、3年にもわたってスパイ行為をおこなってきたのですから、よくぞイランはここまで我慢してきたものだと、私などは逆に感心してしまいます。

The point is that—there was a story in the Washington Post just the other day here describing how America has been using drones to overfly Iran for at least three years. I would argue that, long before that, we've been using American satellites flying high that can't be detected.

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いまイランは「原子力の平和利用を隠れ蓑にして核兵器をつくろうとしている」として経済制裁を受けているわけですが、既にこのブログで何度も指摘してきたように、イランはIAEAに加盟し核査察を受けていますし、NPT(核拡散防止条約)にも加盟しています。

他方で核兵器を持っていることが明らかであるにもかかわらず、イスラエルはIAEAからの核査察を拒否したままですし、NPTにも加盟していません。

ですから、イランが「原子力の平和利用を隠れ蓑にして核兵器をつくろうとしている」として経済制裁を強化していることは、かつてイラクを「大量破壊兵器をもっているから」という理由で攻撃したのと同じことを、いま繰り返そうとしている―これがハーシュ記者の主張でした。

日本はかつて真珠湾を攻撃したとき「宣戦布告をしないで夜襲をしかけた」ことがアメリカ人の大きな怒りを買いました。

今でも真珠湾を訪れると湾の一角に爆撃で沈没させられた船を使って博物館をつくり、大画面で当時の様子を、これみよがしに再現していますが、自分たちが戦争をするときは、宣戦布告なき戦いをしても一向に平気なようです。

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ベトナム戦争も「宣戦布告なき戦争」の典型でした。あの戦争も南ベトナムに軍事顧問団を送るだけだったはずなのに、いつのまにか15年にもわたる戦争になり、何百万人もの死者を出す戦争になっていきました。

イラク戦争も国連決議を得られないまま、「大量破壊兵器の所持」という嘘を口実に開始され、それがもたらした惨状と死者の大きさは、いまさら私が説明するまでもないことでしょう。

そして、いま同じことが繰り返されようとしているとき、日本の政府も野党の多くも、そして大手メディアも、「アメリカが経済制裁を強化しようとしているときにイランを訪問するとは何ごとか」と鳩山氏を罵倒しているのですから、信じがたい光景です。

このままイランにたいする経済制裁が続けば、たまりかねたイランが暴発することも考えられます。それは、かつて日本がアメリカによって経済封鎖されて真珠湾攻撃へと暴発していったのと同じです。しかし、それこそアメリカの思う壺でした。

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ブッシュ氏がアフガンとイラクに仕掛けた戦争を、オバマ氏はさらにパキスタンやイエメンまで拡大しましたが、今度はそれをイランにまで広げようというのでしょうか。

それをくい止めるために、誰かが積極的に行動しなければなりませんが、憲法9条をもつ日本がその先頭にたって悪いはずはありません。むしろそうすべきでしょう。

ところが「鳩山たたき」を見れば分かるように、今の日本の政治家も大手メディアも、イラク戦争の時と同じように、相変わらず大国の「プードル犬」と成り下がっています。

福島原発事故の後始末すらできないのに(放射能を浴びたままになっている福島の子どもを救おうともせず)ひたすら外国に原発を輸出しようとしている国、そんな国に「国家の品格」を感じられないのと同じように、どこかの国の「プードル犬」と成り下がっている国にも「国家の品格」を感じることはできないのは、私だけでしょうか。

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<註1> もし「原子力の平和利用を隠れ蓑にして核兵器をつくろうとしている」として経済制裁を受けるのであれば、日本こそが真っ先にその対象ならねばならないでしょう。というのは、そもそも日本が原発に乗り出した理由、そしていま脱原発に踏み切れない裏の理由が、「核兵器をもちたいから」であることは、既に様々な人たちが指摘していることでもあるからです。

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<註2> IAEAの事務局長になった天野之弥氏が、大国の「プードル犬」になった事情についても、ハッーシュ記者は次のように暴露しています。ずいぶん長くなってきたので、英文を紹介するだけにとどめます。お許しください

  And what we now have is—he left a few years back—we have a new director general, a Japanese sort of center-right politician named Amano, who is different. He's much closer to us. There's been WikiLeak cables released by Julian Assange that show very clearly that we helped him get elected as director general.
  There was a—it's a U.N. agency, the International Atomic Energy Agency in Vienna, that ElBaradei headed for so many years. It's U.N.
  And the new leader was voted—I think there were seven ballots, and it was our ability to swing some votes that got Amano the job, and he immediately told us how he would be different about Iran, etc.
  There's a whole series of WikiLeaks cables about this that Julian's group released that are pretty devastating, that aren't enough in the American currency. They're there. They were published widely in the British press, but not here.


(ハーシュ氏は、上記の事実はイギリスでは広く報じられているのにアメリカでは全く知られていないと嘆いていますが、日本でも事情は同じです。)

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