モントリオールの街中に鳴り響く Casseroles(鍋・釜・フライパン)の合奏曲、ケベック学生スト100日目、世界に影響を与え始めた「メイプルの春」

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鍋・釜・フライパンをたたきながら街に繰り出す市民
http://vimeo.com/42848523
(何はともあれ、まず上の動画を見てください。
映像の背後に流れる音楽も抜群です)


モントリオールを埋め尽くす「メイプルの春」

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前回のブログから既に10日が経とうとしているのに、相変わらずブログに復帰する時間がなかなか取れません。

しかし、Voices of a People's History of the United States(仮題『肉声でつづる民衆のアメリカ史』)の「あとがき」が6月4日で校了する予定です。

これが終われば、この仕事からすべて解放されるので、やっと念願の「晴耕雨読」の生活に入ることができます。長い長い四年間でした。

とはいえ「あとがき」の最終校正が終わっていませんので、今回は主としてカナダのケベックで起きていることを紹介して今回のブログに代えたいと思います。

本当は、ポスターでトトロも猫バスも呼びかけていた「シカゴのG8にたいする巨大な抗議集会」についてもお知らせしたいことは多いのですが、私にそのゆとりがありませんので割愛させていただきます。

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* 一般読者の皆さんへ: 以下では英文をたくさん引用してあります。しかし半分は自分のメモを兼ねています。時間のない方は飛ばして読んでください。
* 英語教師の皆さんへ: 授業における会話ブーム(しかも覚えてもすぐ忘れる)のおかげで、生徒どころか英語教師の「読む力」も大きな落ち込みを見せています。この英文記事が「読む力」の回復に少しでも役立てば幸いです。
* 教育研究者の皆さんへ: 最近わたしは、英語を学ぶ目的の一つは、アメリカの実像を知り日本を「第二のアメリカ」にしないことにある、と考えるようになりました。以下は、今まであまりにも「虚像のアメリカ」を教えてきた私の反省が込められています。
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カナダでは先週、モントリオールの街頭を40万人を超える人々が埋めました。カナダの歴史上でも初めての大規模なデモだと言われています。1000名を越える逮捕者を出していても、この巨大なうねりは収まる気配を見せていません。

もともとは大学の学費が75%以上も上がることに対するストライキが発端だったのですが、3カ月を超える息の長い抗議活動と授業ボイコットは、「メイプルの春」の名で世界に知られるようになりました。

(ちなみにカナダの国旗は「メイプル(かえで)」ですし、メープルシロップの産地としてケベック州が有名です。)

チュニジアやエジプトの「アラブの春」が、"We Are 99%" をスローガンにした「Occupy Wall Street Movement」へと飛び火し、アメリカ全土に燎原の火の如く広がりましたが、それがさらに「メープルの春」としてカナダで花開きました。

これにたいしてケベック州政府が弾圧政策を強化したことによって、学生だけでなく逆に一般市民の怒りまでもかきたててしまいました。この怒りまでをもかきたてることになったのは、州政府が「78号法案」と呼ばれる非常事態法を成立させたことでした。

これは大学の今学期の授業を中断し、50人以上の抗議行動を行う際はデモのルートを警察に事前に知らせることを義務づけ、これに従わない学生団体には12万5000ドル以下の罰金を科すと脅すものでした。

ケベック州の授業料はカナダのなかで最も低いので最初は「甘やかされて育った若者たちのお遊び」と非難するメデイアも多かったのですが、ギリシャ、スペイン、チリなどアメリカ流の経済制度を取り入れたところが、軒並みに金融危機に陥り、公務員の大量首切りだけでなく福祉や教育や年金の大幅削減をうみだしています。これを他人事でないと一般市民が気づき始めたのです。

こうして学生たちの闘いは、対立が拡大するにつれ国際的な注目を集め、緊縮財政や経済不安や学生ローンの重圧の下で不平不満を募らせる世界中の若者たちの共鳴を得ていますが、今度は若者たちだけでなく、この問題を自分たち問題としてとらえた一般市民たちが台所にある鍋や釜を持ち出して、街頭にくりだすようになりました。こうしてモントリオールの街中に「鍋・釜・フライパンの合奏曲」が鳴り響くことになりました。

(一般も主婦・市民が鍋・釜・フライパン(Casseroles)を持って出かけ行く様子は、冒頭の映像で見ることができます。)

さらに5月30日(水)夜8時には、世界中の主要な50都市でケベックへの連帯行動が呼びかけられました。呼びかけ文には下記のように書かれていました。

Solidarity Actions are taking place TONIGHT at 8:00pm local time in over 50 cities - find yours in the list below. If you don't see your home town, then look no further than your kitchen!

Global Casseroles Night in Solidarité with Québec in Over 50 Cities
http://occupywallst.org/article/global-casseroles-night-solidarite-quebec-over-50-/

この情勢がこのまま続くとケベック州に、フランスのような新しい政権が誕生することになるかも知れません。ギリシャでも選挙で最大多数の票を得た政党は、EUやアメリカの金融界から強く要求されている弱者切り捨ての「緊縮財政」政策に、断固反対する若い政党でしたから。
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<註1> 財政赤字を理由に諸費税を増税したり緊縮財政を強いたりすることが、逆に悪のスパイラルを招き経済不況を長引かせることについては、ノーベル経済学賞のクルーグマン教授が下記で明快に反論しています。

"End This Depression Now": Paul Krugman Urges Public Spending, Not Deficit Hysteria, to Save Economy(ポール・クルーグマン「不景気を今すぐ終わらせろ」、赤字ヒステリーではなく経済を救うために公共支出の増額を)
http://www.democracynow.org/2012/5/17/end_this_depression_now_paul_krugman

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<註2>
Maple Spring: Nearly 1,000 Arrested as Mass Quebec Student Strike Passes 100th Day

  More than 400,000 filled the streets of Montreal this week as a protest over a 75 percent increase in tuition has grown into a full-blown political crisis.
  After three months of sustained protests and class boycotts that have come to be known around the world as the "Maple Spring," the dispute exploded when the Quebec government passed an emergency law known as Bill 78, which suspends the current academic term, requires demonstrators to inform police of any protest route involving 50 or more people, and threatens student associations with fines of up to $125,000 if they disobey.
  The strike has received growing international attention as the standoff grows, striking a chord with young people across the globe amid growing discontent over austerity measures, bleak economies and crushing student debt.

もっと詳しい情報は下記をごらんください。
http://www.democracynow.org/2012/5/25/maple_spring_nearly_1_000_arrested

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ブログ冒頭で<本当は「ポスターでトトロも猫バスも呼びかけていた」「シカゴのG8にたいする巨大な抗議集会」についてもお知らせしたいことは多いのですが、私にそのゆとりがありませんので割愛させていただきます>と書きました。

しかし、やはりこれについて全くふれないわけにはいかないという気もしますので、これについて少しだけコメントを書いて終わりにしたいと思います。

この集会で、イラク戦争やアフガン戦争に従軍した兵士たちが、「イラクやアフガニスタンを破壊し、多くの罪もない人々を殺した」ことを謝罪しつつ、自分たちに授与された勲章をNATO首脳会議の会場に向かって次々と投げ返す光景は胸を打つものがありました。

このような集会は、ベトナム戦争いらい2度目の出来事だそうですが、当日は50人近くの退役軍人が従軍メダルをNATO首脳会議の会場の方向に投棄しました。その中の一人が次のように述べていて衝撃を受けました。

「無事にイラクやアフガンから帰国しても、帰還兵の仲間は毎日18人の割合で自殺している」「国外では無実のひとを殺し、国内では自分を殺しているのだ」「アメリカのやっている戦争はどこか間違っている。」

当日は、2007年に米軍に入隊し、イラクでの2度目の従軍から帰還しあた2010年3月に自殺したデリック・カークランドの母親、マリー・カークランドさんも勲章返還の儀式に参加していました。

当初、軍はマリーの息子デリック・カークランドは戦死したと報告していました。息子の遺影を抱えて儀式とデモ行進に参加した後、カークランドさんは当日、次のように話しています。

「息子が自殺をしたと言わなければいけないことを恥ずかしいとは思いません。私は息子のメンタルヘルスの治療を怠った米軍を恥だと思います」

平凡な母親だった自分がこの集会に参加する気になったのは、自殺者が激増しているにもかかわらず、それをひた隠しにして息子が自殺するのを見殺しにした軍と政府に憤りを感じたからだ、と彼女は語っていました。

Mother of Iraq Veteran Who Committed Suicide: "Honor the Dead, Heal the Wounded, Stop the Wars"(自殺したイラク戦争退役軍人の母の訴え:「死者に名誉を、負傷者に治療を、戦争の中止を」)
http://www.democracynow.org/2012/5/28/mother_of_iraq_veteran_who_committed

ところが、アメリカはイラクやアフガンでは飽き足りず、次には(シリアを踏み台にしながら)イランを狙っているようです。それに抗議するのも、このシカゴでの集会の目的のひとつでした。しかし残念なことに日本政府は、またもやアメリカと行動をともにする道を選ぶようです。

シリア問題を平和的に解決する道については下記の記事に詳しく書いてあるので、時間と興味のがある方は御覧ください。

Veteran Mideast Journalist Charles Glass on Syria's Violence & the Prospect of Military Intervention(ベテラン中東ジャーナリストのチャールズ・グラス、シリアに渦巻く暴力と軍事介入の見通しを語る)
http://www.democracynow.org/2012/5/30/veteran_mideast_journalist_charles_glass_on
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