チョムスキー論文 「ヒロシマの影のなかで」 ― 原爆投下の日に原発と核兵器が世界に投げかける "暗影" について再考する

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8月6日(月)広島の平和祈念式典のあいさつで野田首相は「・・・脱原発依存の基本方針の下、中長期的に国民が安心できるエネルギーの構成の確立を目指します・・・」と述べました。

一見すると脱原発をめざしているかのように錯覚させるような言辞ですが、「中長期的に」という、時間条件句を挿入したことによって、「即時ないしは短期的には、原発エネルギーを含む」こととなります。

「中長期的」は、この場合は、30年から50年と解されるので、30年から50年は「原発を稼働させる」意味となりますし、さらに「基本方針」なので、場合によっては50年を超えても原発エネルギーの存続もありえるとの意味になります。

要するに野田総理は広島で、「脱」原発ではなく、原発「継続」を宣言したのだと私には思えます。

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私は7月18日(水)のブログ「脱原発の前に立ちはだかる三つの壁」と題して、次のように書きました。

<私の予測では、7月16日の「さようなら原発10万人集会」が目標の10万人をはるかに超える巨大な盛り上がり見せたとしても、この動きが今後も持続し加速しないかぎり、野田政権は脱原発の方向へ動き出すことは、当面ないでしょう。

というのは私の推測=仮説では、原発を裏で推進している勢力は次の三つであり、野田首相はこの裏勢力が担ぎ出した単なる御神輿(おみこし)に過ぎないからです。

第1勢力:平和憲法を改悪し(仮想敵国として中国・北朝鮮の脅威を煽り立てながら)日本を核大国=軍事大国にしたいと思っている政治家その他
第2勢力:原発を輸出することによって巨大な利益を得ようとしている巨大企業(これは同時に日本を兵器輸出ができる国にしたいと思っている勢力です)
第3勢力:「原子力ルネサンス」というスローガンを掲げながら、ブッシュ氏ですらやらなかった原子力産業に乗り出したアメリカ=オバマ政権>

野田氏の平和祈念式典での挨拶は、私の上記仮説(特に「第1勢力」)をあらためて裏付けてくれたように思います。

日本は北朝鮮をさして「原発の平和利用などと言っているが実は核兵器を生産したいのだ」
と攻撃していますが、「亀は自分の甲羅に似せて穴を掘る」という諺どおり、実は自分のことを言っていたのです。

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ところで、いま世界の大手メディアはシリアの内戦に集中しています。ところがシリアの反乱軍がアメリカやイスラエル、さらにはイギリスによって支援され、裏で武器支援する役割をサウジアラビア、カタール、トルコなどが担っていることを、日本の大手メディアは全く報道していません。

ところがここにもっと伝えられていないニュースがあります。それはシリアの体制転覆の真の狙いが「イランの体制転覆」であり、シリアへの内政干渉は、その一里塚にすぎないことです。いわばイラン攻撃のために「外堀を埋める」作業がシリアの内戦であり、「アラブの春」がシリアにまで飛び火したのではないということです(『アジア記者クラブ通信』7月号&8月号)。

しかし、もっと知られていないことは、イランにたいする戦争は既に進行していること、それは「宣戦布告なき戦争」の段階にまで至っていることなどです。私が敬愛する言語学者チョムスキーは、8月6日(月)の平和記念式典を前にして発表した論文で、そのことを次のように述べています。

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以下はその一部に過ぎません。全文は下記を御覧ください。
「ヒロシマの影のなかで」 翻訳公開120806
http://www42.tok2.com/home/ieas/Chomsky120806Hisoshima.html

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<8月6日、ヒロシマに原爆が投下された日は、深刻な反省を迫る日である。1945年の、その恐ろしい事件についてだけでなく、それが明らかにしたことについて――人間が破壊力をどこまで拡大できるかの探求に全精力を費やし、ついに極限にまでいたる手段を見つけたことについて、真剣に考え直す日である。>

<今年の原爆記念日は特別に重要な意味をもっている。というのは、・・・>

<イランにたいする戦争は既に進行していると言ってもよいくらいだ。イランの核科学者にたいする暗殺や経済制裁をみればそれは明らかだ。イラン問題の専門家シック(Gary Sick)の判断によれば、それは「宣戦布告なき戦争」の段階にまで至っている。>

<アメリカはイランにたいする高度のサイバー攻撃を誇ってさえいる。ペンタゴンはサイバー攻撃を「戦争行為」だと見なし、The Wall Street Journal誌によれば、このような攻撃にたいしては「通常の軍事力で応戦してよい」と認めてさえいるが、ひとつだけ例外がある。それはアメリカやその同盟国がその実行者である場合だ。>

<中略>

<イランにたいする「布告なき戦争」をさらに激化させることは、偶発的な大規模戦争にいたる危険性を増大させる。その危険は先月の事件で明らかになった。アメリカ軍艦(それはペルシャ湾に派遣された巨大な艦隊の一部に過ぎない)が小さな漁船に発砲し、インド人の乗組員をひとり殺し、少なくとも他の3人を負傷させた。それが大戦争の口火となるにはたいして時間はかからない。>

<そのような破局を避ける賢明な方法のひとつは「中東に大量破壊兵器や全てのミサイルの搬送・発射禁止区域を設けるという目標、化学兵器を包括的に禁止するという基本方針」を追求することである。これは1991年4月の安全保障理事会で成立した決議687の文言であるが、アメリカやイギリスは、その12年後に、この文言を隠れ蓑にしてイラク侵略に乗り出したのだった。>

<後略>

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上記チョムスキー論文にあるとおり、アメリカは既にシリアの反乱分子を秘かに支援しているだけでなく、イランの核科学者の暗殺やサイバー攻撃にすら乗り出しているのです。

ハッカーといわれる人たちが、アメリカによる「ウィキリークス支援の献金阻止」に協力した金融大企業に抗議して、彼らにサイバー攻撃をしかけたとき、これを口汚く非難したのはオバマ政権でしたが、自分がおこなうサイバー攻撃は、どういうわけか免罪されるらしいのです。

チョムスキーはイラン攻撃が次の世界大戦や核戦争になり世界を破滅させる危険を避ける方策として「国連決議687に従って中東を非核地帯に」という提案をしているのですが、アメリカもイスラエルも、頑としてこれに応じようとしていません(イランは早くからこの提案を歓迎しています)。

ところがもっと困ったことは、日本もアメリカの政策に従ってイランにたいする経済制裁に加担して、ますます世界を破局に追い込むことに貢献していることです。

むしろいま日本がなすべきことは、憲法9条をもつ国として、「中東を非核地帯にする運動」の先頭にたつだけでなく、日本が中心となって、韓国。北朝鮮、台湾、フィリピンなどの極東地域も非核地帯にする運動の先頭にたつことでしょう。

そうすれば、イランから輸入していた石油が枯渇して日本がエネルギー不足になる危険を避けることができるだけでなく、(北朝鮮は経済援助ほしさに「核カード」を使っているだけですから)北朝鮮からの脅威も消えます。

しかし、そうなると一番困るのはブログ冒頭に述べた「第1勢力」かも知れません。なぜなら、火力で電力がまかなえるのであれば原子力はいらなくなるし、北朝鮮の脅威を理由に核兵器をもつという口実も消えてしまうからです。

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いずれにしても、下記のチョムスキー論文は、ぜひ全文を読んでいただきたいと思います。アメリカだけでなく日本でも高く評価されているケネディ大統領が、実はどんな人物であったかも分かっていただけるはずです。

「ヒロシマの影のなかで」 翻訳公開120806
http://www42.tok2.com/home/ieas/Chomsky120806Hisoshima.html

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